【特集】肥満のリスク・デメリット 太る原因と関連する病気(糖尿病・がんなど)

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【特集】肥満のリスク・デメリット 太る原因と関連する病気(糖尿病・がんなど)

決して他人事ではない?肥満の原因や肥満が要因となる病気を特集。肥満の原因には食べ過ぎ飲み過ぎ以外にも、基礎代謝の低下やストレス、不規則な生活、睡眠不足なども関与しています。また、肥満によって高血圧や糖尿病、がんなどのリスクが高まることがわかっています。

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肥満の原因とリスクについて

肥満とは

肥満の基準
日本人は軽度肥満でもメタボになりやすい

肥満の指標となるBMI(体格指数)は、〔BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕で計算します。世界的には30以上の場合を肥満としていますが、日本人の場合、BMIが25以上を肥満と判定します。これは、日本人を含め東アジア人は、食べ物から摂取したエネルギーを皮下脂肪よりも、内臓脂肪としてためやすく、軽度の肥満でも、内臓脂肪のたまりすぎによって起こる病気のリスクが高くなるため、日本では肥満の基準が厳しくなっています。

肥満の原因

基礎代謝量

食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が肥満の原因として一般的ですが、食べ過ぎているという意識がなくても、太っていくことは少なくありません。実は、中年期以降で、運動する習慣が特にない人では、若い頃と同じ量の食事をとっていると、どうしても太りやすくなります。その理由は、基礎代謝量の低下です。

基礎代謝量とは、呼吸や消化など、生命維持のために消費されるエネルギー量のことで、何もせずにじっとしていても消費されています。若い頃は基礎代謝量が高く食事でとったエネルギーが消費されやすいため、適正なエネルギー量の食事であれば通常は太りません。ところが、基礎代謝量は年齢とともに徐々に低下していくため、若い頃と同程度のエネルギー量の食事のままでは「食べ過ぎ」になります。

そのほか原因となる生活習慣

そのほか、日常生活でストレスや心配事が多い、不規則な生活を続けている、寝不足あるいは寝すぎているなどの生活習慣も、肥満の一因となります。

肥満を放置すると痩せられなくなる?

「少し太ってきたかな」という状態をそのままにしておくと、さらに太ってなかなかやせられなくなることがあります。

レプチンが効きにくくなる

食事から摂取したエネルギーの一部は脂肪に形を変え、貯蔵用のエネルギーとして脂肪細胞の中に蓄えられます。脂肪細胞は、体の機能を整えるさまざまなホルモンなどを放出していますが、その1つであるレプチンは、体内の脂肪の量を一定に保つ働きをしています。レプチンが脳に働きかけて食欲を抑え、体内の脂肪をエネルギーとして消費しやすくしているのです。

しかし、脂肪細胞の中に脂肪がたまりすぎると、レプチンが効きにくくなってしまうことがあります。すると、食欲を抑えられずに食べ過ぎてしまい、脂肪の消費も滞るため、ますます太ってしまうのです。また、もともとレプチンが効きにくい体質の人がいることもわかっています。

また、肥満の人は痩せている人と比べて、短鎖脂肪酸をつくる腸内細菌の割合が少ないという結果が報告されています。

肥満の人と腸内細菌との関係について知りたい方はこちら



病気を引き起こす「3つの脂肪」

肥満には、主に皮下脂肪型肥満内臓脂肪型肥満の2つのタイプがあります。

皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満のMRI画像

皮膚のすぐ下、腹筋の外側につく「皮下脂肪」が多くたまっているのが、皮下脂肪型肥満です。皮下脂肪型肥満の場合、下腹部やおしり、太ももにつきやすいため、下半身太りの体型になります。

一方、腹筋の内側、腸などの周りにつく「内臓脂肪」が多くたまっているのが、内臓脂肪型肥満です。内臓脂肪型肥満の場合、へそ周りがぽっこりと出た体型になります。

一般的には、女性が皮下脂肪がつきやすく、男性は内臓脂肪がつきやすいという特徴があります。ただし、閉経後の女性は、次第に内臓脂肪がたまりやすくなります。また、極端な肥満の人の場合、皮下脂肪型と内臓脂肪型の両方とも当てはまる場合があります。

異所性脂肪

また、体内の脂肪が増えすぎると、本来は脂肪がたまらない場所に蓄積されます。これを「異所性脂肪」といい、肝臓や筋肉、すい臓などにたまることがあります。
「皮下脂肪」「内臓脂肪」「異所性脂肪」の3つは、いずれも、たまりすぎることでさまざまな病気を起こします。

肥満で起こるさまざまな病気

内臓脂肪
肥満が起こす病気

日本では2000万人近くが「メタボ」あるいは「メタボ予備群」とされています。メタボとは、へそ周りが太くなる内臓脂肪型肥満であることに加えて、糖尿病、高血圧、脂質異常症のうちの2つ以上に当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。

しかし、肥満が引き起こす病気はこれだけではありません。高尿酸血症とそれが進行して起こる痛風、狭心症・心筋梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、脳梗塞、月経異常・不妊、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、ひざ・股関節・背骨・手指などの関節の障害も、肥満との関連が強いことがわかっています。肥満の指標となるBMI(体格指数)が25以上であることに加えて、これらの病気が1つでもある場合、肥満症として治療の対象となります。

肥満が大きな要因?糖尿病とその合併症について

肥満のなかでも、皮下脂肪ではなく内臓の周囲に脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満は、特に糖尿病を発症しやすくなります。

糖尿病の大きな原因、肥満

糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、その血糖値を下げて正常に保つのがインスリンというホルモンです。肥満があると、インスリンが効きにくくなって血糖値が上がってしまうのです。

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また、糖尿病はさまざまな合併症が起こると考えられています。
糖尿病と診断されても多くの場合は、自覚症状がありません。ところが、血糖値が高い状態を長く放置していると、目や腎臓の細い血管など全身のあちこちの血管が傷つき、さまざまな病気を招いてしまいます。
目が悪くなる糖尿病網膜症、腎臓が悪くなる糖尿病腎症、神経が悪くなる糖尿病神経障害の3つが代表的で「三大合併症」と呼ばれます。最悪の場合、それぞれ失明、血液透析、足の指などの切断にまで至ります。

そして最近では、がんと認知症も糖尿病の合併症と考えられるようになってきました。

「糖尿病の新たな合併症 神経障害と「がん・認知症」」について詳しくしりたい方はこちら

肥満で血圧はなぜ上がる?

血圧は自律神経やホルモンによって適切に調節されている
肥満があると、お腹にたまった脂肪細胞から様々な物質が分泌され自律神経やホルモンの働きを乱す

血圧は自律神経やホルモンによって適切に調節されています。ところが肥満があると、お腹にたまった脂肪細胞から様々な物質が分泌され、それが自律神経やホルモンの働きを乱してしまいます。その結果、血管が必要以上に収縮したり、塩分が必要以上に体内にたまったりして、血圧が上がってしまうのです。
また、肥満の人は食べ過ぎることが多く、それが食塩のとり過ぎにつながって、いっそう血圧が上がりやすいと考えられます。

血圧が高くても自覚症状はありません。そのため、ある日突然、脳卒中などの命に関わる重大な病気を引き起こす場合があります。

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肥満と『がん』その関係について

肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の大きな要因であるだけでなく、がんのリスクを高めることもわかっています。食べ過ぎや運動不足によって、体内に余った糖を処理するために、大量のインスリンが分泌されます。このインスリンの過剰分泌が、がん細胞を増殖しやすくするといわれています。

肥満で起こりやすいがん(日本人)

日本人の場合、肥満が関係するがんの種類について、国立がん研究センターの大規模な調査の結果では、閉経後に起こる乳がんは、肥満との関連が「確実」とされました。大腸がんと肝がんでは、肥満との関連が「ほぼ確実」とされています。また、子宮内膜がんと閉経前の乳がんでは、「肥満と関連している可能性がある」とされています。

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「異所性脂肪」により起こる病気

体内の脂肪が増えすぎると、本来は脂肪がたまらない場所に蓄積されます。これを異所性脂肪といい、肝臓や筋肉、すい臓などにたまることがあります。
たまった場所によってさまざまな病気を起こします。肝臓に脂肪がたまり進行していくと、肝硬変や肝がんを起こすことがあります。筋肉やすい臓に脂肪がたまった結果、糖尿病になりやすくなります。

「異所性脂肪により起こる病気について詳しく知りたい方はこちら

お酒を飲まなくてもリスクあり?脂肪肝に要注意

脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態のことをいいます。肝臓の細胞の約3割以上に脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。
脂肪肝になる原因は急激なダイエットやアルコールのとりすぎがありますが、最大の原因は、肥満です。食べすぎなどによって、摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪になります。その一部は肝臓に運ばれて処理されるものの、処理されなかった中性脂肪はどんどん肝臓にたまっていきます。

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「皮下脂肪」のたまりすぎで起こる病気

皮下脂肪のたまりすぎは、放置していると、体重による負担が原因で、ひざや股関節、背骨などに障害を起こしやすくなります。また、のどの周りに皮下脂肪がつきすぎると、気道が狭くなり、眠っている間に一時的に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群を起こすことがあります。

「高血圧、脳卒中のリスクも!?睡眠時無呼吸症とは」について詳しく知りたい方はこちら



その他、肥満が要因となる病気について

肥満は糖尿病や高血圧などの病気の他、さまざまな病気の要因となります。

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