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痛風とは?
痛風の患者数は約100万人いるとされており、痛風予備群といわれる人は約1,000万人にのぼると推計されています。
痛風の原因は高い「尿酸値」にあります。
尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を「高尿酸血症」といいます。尿酸値が高ければ高いほど、また高尿酸血症の期間が長ければ長いほど、痛風を起こすリスクは高くなってきます。
痛みや腫れなど痛風が起きる仕組み
血液中に増えすぎてあふれ出た尿酸は、関節の軟骨や関節を守る滑膜(かつまく)にくっついて結晶となり、どんどん溜まっていってしまいます。溜まりすぎた尿酸がはがれると、免疫細胞である白血球はこれを異物と認識し、攻撃します。このとき白血球が出す炎症物質が激しい痛みや腫れを引き起こすのです。
血液中に尿酸が増える原因
尿酸は体内でプリン体が分解・合成されることで作られます。通常、役割の終わったプリン体は血液にのって肝臓で分解され尿酸となり、腎臓でろ過され、尿と一緒に排せつされます。
体内でプリン体が増え過ぎてしまうのには主に3つの原因があります。ひとつは古くなった細胞が新陳代謝で分解されるとともに細胞の老廃物として増えてしまう。また、激しい運動など、大量のエネルギーが使われるときエネルギーの燃えかすとして増えてしまう。最後に食品に含まれるプリン体として体内へ入ってくることです。食品から摂るプリン体の量というのは全体の20%、体内で作られる細胞の老廃物やエネルギーの燃えかすが80%です。
痛風の症状と経過
高尿酸血症の状態のままでいると、ある日突然、痛風発作に襲われます。痛風発作は夜中から明け方に起きることが多く、痛みのピークは発症後2~3日間続きます。その後、2週間以内に痛みはなくなります。しかし、適切な治療を受けて生活改善しないと、痛風発作を繰り返すようになります。(間欠期)そして、だんだん発作の間隔が短くなり、やがて常に痛みや腫れがある「慢性期」になります。
発作が起こりやすい場所
最初の痛風発作の7割は足の親指の付け根に起きます。
痛風予備群を心配する人のための高尿酸血症の検査についてはこちら
痛風発作が起きたら・・・
痛風発作が起きた時には、できるだけ早く薬を使って痛みを抑えることが大切です。基本的には非ステロイド系抗炎症薬を服用します。腎機能障害や胃潰瘍などがあって、非ステロイド系抗炎症薬が使用できない場合や非ステロイド系抗炎症薬でも十分に効果が得られない場合は、ステロイド薬を服用します。
痛風発作が起こる前の「足の指がピリピリする」「ムズムズする」などの前触れに気付いたらコルヒチンの服用が有効です。コルヒチンには、痛風発作を起こす白血球の働きを阻害して、痛風発作の本格化を防ぐことができます。
痛風が進行すると?
痛みが治まったからといって治療せずにいると、半年から1年後に再び痛風発作を起こします。徐々に痛風発作が起こる間隔が短くなって頻度も増え、痛みや腫れも長引くようになります。そして、痛風結節や腎障害・尿路結石などの合併症を起こすリスクも高くなるのです。
痛風結節とは関節周辺や皮膚の下に尿酸の結晶が沈着して、こぶのように盛り上がってくることをいいます。この痛風結節は徐々に大きくなり、関節が変形したり、骨が破壊されることもあります。また、尿酸は尿として排出されるため、腎臓や膀胱(ぼうこう)、尿管などに集まります。そのため腎障害や尿路結石につながります。
また、高尿酸血症・痛風がある人はメタボリックシンドロームに陥りやすく、高血圧や糖尿病、脂質異常症を併発している人が多くいます。これらの生活習慣病によって動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの命にかかわる病気を発症する危険が高くなります。
痛風の治療 尿酸値を下げよう
主に足の親指の付け根に激痛をきたす「痛風発作」を起こした人や、尿酸値が8.0mg/dLを超える人は薬による治療を行います。治療は、尿酸値6.0mg/dL以下を目標に行います。薬を飲めば、すぐに尿酸値は下がりますが、やめてしまえばすぐに上がってしまいます。
尿酸値を下げる薬には、体内で尿酸が作られにくくなる(尿酸生成抑制薬)、アロプリノール・フェブキソスタッドなどがあります。また、尿酸を体外に出しやすくなる(尿酸排せつ促進薬)、ベンズブロマロン・プロベネシドなどがあります。2020年からは新たに尿酸再吸収阻害薬のドチヌラドも使われるようになりました。
尿酸をコントロールする治療は長期間にわたります。処方された薬を適切に使用するとともに根気よく生活改善を続けることが大事です。
セルフチェック 痛風の予防
10項目中5つ以上当てはまると痛風のリスクが高い!「セルフチェック」や、痛風を防ぐために注意したほうがよいことを紹介します。
痛風セルフチェック
痛風のなりやすさを見るセルフチェックです。10項目の中で5つ以上当てはまると痛風を発症する危険が高いといえます。
肥満だと痛風になりやすい
食べすぎ、運動不足、ストレスといった肥満の原因が尿酸を増やしてしまいます。実際、身長からみた体重の割合を示す「BMI」では肥満になるほど、痛風になる危険度は高くなります。また肥満になると、インスリンというホルモンが増加して、腎臓での尿酸の排せつを低下させて尿酸値を上げます。
〔BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕
アルコールに注意
ビール・紹興酒などにはプリン体が多く含まれており、飲み過ぎは尿酸値を上げる原因になります。一方でプリン体が少ない日本酒・ワイン、プリン体をほとんど含まない焼酎やウイスキーなどにも注意が必要です。それはアルコール自体に尿酸を増やしてしまう働きがあるからです。アルコールには、肝臓での尿酸の生産を促進し、腎臓から尿酸の排出を抑制する作用があります。アルコールの利尿作用によっても水分が減るため体内の尿酸が凝縮してしまいます。
また、アルコールを飲むことで食欲増進し、エネルギーの高い食べ物をたくさん摂取してしまうことも痛風の発作に関係すると考えられています。
注意する食べものとおすすめの調理方法
プリン体がきわめて多いもの(100g中に300mg以上)は、鶏レバー、まいわし干物、いさき白子、あんこうの肝酒蒸しなどです。プリン体が多いもの(100g中に200mg~300mg)は、豚レバー・牛レバー、かつお、まいわし、大正えび、まあじ干物・さんま干物などです。
注意が必要な方はプリン体の摂取量を1日400mg以内に収めるようにしましょう。
プリン体は水に溶ける性質があるため、ゆでる・蒸す・煮るなどの調理法でプリン体を少なくすることもできます。ただし、ゆで汁・煮汁にはプリン体が溶け込んでいるので飲まないようにしましょう。