【特集】脱水症状とは 熱中症などの関連する病気や症状、予防法

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【特集】脱水症状とは 熱中症などの関連する病気や症状、予防法

脱水症状になると、めまいや食欲不振といった症状が現れ、悪化すると熱中症などの危険な病気につながります。また、病気の治療中も脱水症状には気をつけなければいけません。脱水症状と関係のある病気について、症状や予防法をまとめました。

脱水症状と熱中症

熱中症どうして起こる?

私たちの体は、常に熱を生み出しています。それと同時に、周りの温度が高くて体温が上がれば、熱を体の外に逃がし、周りの温度が低くて体温が下がれば、熱をため込むなど、常に適切な体温になるよう調整をしています。この働きに異常が起こり、体の中に熱がため込まれてしまうために熱中症になるのです。

さらに、私たちの体は体温が上がった時に汗を出すことで、体温を下げようとしますが、大量の汗が出た時に何もしないと、体に必要な水分や塩分が足りなくなって、脱水状態になってしまいます。この脱水も、熱中症の原因です。

熱中症の重症度

熱中症の重症度

熱中症の重症度は大きく三段階に分かれます。まずめまい、立ちくらみ、足の筋肉がつる、お腹の筋肉のけいれんなどが起こります。症状が進むと、頭痛、おう吐、ぐったりした感じになります。さらに重症化すると、意識障害、全身のけいれん、全身が熱くなる高体温などが起こり、ときに死につながることもあるので注意が必要です。

また、高齢になると老化により暑さを感じにくくなるため、熱中症になったことに気がつかず、気づいたときには症状がかなり進行して重症化してしまっているケースがあります。さらに、高齢者は若い頃に比べ、体内の水分量が減少しているうえ、のどの渇きを感じにくいので、水分補給が十分にできないことがあり、脱水症状を起こしやすいのです。

熱中症の予防

熱中症対策の基本は、脱水と体温の上昇を抑えることです。

脱水を防ぐために、まずはしっかりと水分補給をすることが重要です。年齢によって異なりますが人は体重の約50~80%が水分です。
人は体重の約2%の水分が失われると、のどの渇きを感じます。
体重の約3%の水分が失われると、食欲不振、いらいら、皮膚が赤くなる、ひどい疲れなどの症状が起こります。
体重の約5%以上の水分が失われると、言葉がはっきりしなくなる、呼吸困難、ふらつき、けいれんが起こります。

人は普通に生活しているだけでも、尿や汗、息などから絶えず水分を失っているので、こまめに水分補給を行って脱水を防ぐ必要があります。例えば、起床後・入浴前・入浴後などの自分の日常生活の行動のついでに、コップ1杯の水分補給することを習慣づけるとよいでしょう。

また、特に暑い時期には、水分と塩分が適量に配合された経口補水液をとることで、汗をかくことで失われがちな塩分も併せて摂取することが薦められます。梅干、塩昆布、味噌汁などからも塩分を補給することができます。

体温の上昇を抑える方法についてはこちら

熱中症になってしまったら

めまい、立ちくらみ、足の筋肉がつる、お腹の筋肉のけいれんが起こった場合は、涼しいところで休むようにし、水分、塩分を補給するようにしてください。良くならなければ、病院へ行きましょう。頭痛、おう吐、ぐったりした感じがする場合は、水分、塩分補給に加え、衣服をゆるめてください。

熱中症の対処

そして脇の下や両側の首筋、足の付け根にある太い血管を冷やし、その後必ず病院を受診しましょう。さらに重症化して、意識障害、全身のけいれん、全身が熱くなる高体温などが起こった場合は、ためらわず、すぐに救急車を呼んでください。

熱中症の対処

熱中症に関する質問はこちら



脱水症状に注意したいその他の病気

危険な合併症も!おたふく風邪の原因や感染経路、症状、治療法

おたふくかぜとは

熱が出て、片側または両側の頬や、あごの下の辺りが腫れるなどの症状が出るおたふくかぜは、正式には流行性耳下腺炎(じかせんえん)といいます。感染力が強く、4歳の幼児ぐらいから、小学校低学年ぐらいまでに多くかかる病気です。

おたふくかぜはムンプスウイルスの感染で起こります。
主な感染経路は、飛まつ感染と接触感染です。飛まつ感染は、感染している人のせきやくしゃみ、会話などでウイルスを含んだ飛まつが飛び散り、周囲にいる人が鼻や口から吸い込んで感染します。飛び散ったウイルスが目の粘膜から体内に侵入して感染することもあります。

接触感染は、感染している人とキスをしたり、ムンプスウイルスが付着した手やドアノブ、手すりなどにふれた手で、口や鼻を触ったりすることなどで感染します。ただし、ウイルスが体の中に侵入した時に感染がしますので、体の表面にウイルスがついただけでは感染しません。

ムンプスウイルスの感染経路

おたふくかぜの治療

現時点では、ムンプスウイルスそのものに対する効果的な治療法が無いので、治療は対症療法になります。解熱薬や痛み止め(鎮痛薬)などを使い、症状を和らげます。医療機関では点滴で脱水症状を防いだりすることもあります。

口を開けたり、咀嚼(そしゃく)したりすると頬やあごなどが痛むので、食事は、刺激が少なくのどごしが良いものをとりましょう。また、唾液の分泌を促す酸っぱい食べ物などは避けましょう。水分補給をこまめにして、脱水を予防することも大切です。

「おたふく風邪の原因や感染経路、症状、治療法」を詳しく知りたい方はこちら

脱水と薬に注意!危険な「急性腎障害」

急性腎障害とは

急性腎障害はAKIとも呼ばれ、「数時間から数日の間に腎機能が急激に低下した状態」のことで、重症の場合は「多臓器不全」に陥り、1か月以内に命を落とすことも少なくありません。

軽い急性腎障害も、繰り返すことで、どんどん腎臓が悪くなり、やがて慢性腎臓病に陥り、場合によっては人工透析が必要になることもあります。
また、急性腎障害は、入院している人に起こりやすいことがわかってきましたが、そればかりでなく、自宅で生活している人にも起こることがわかってきました。

急性腎障害の原因

①腎臓への血流の低下

腎臓の主な働きは、血液をろ過して尿を作ることですが、もしも腎臓に流れてくる血流が低下すると、排出すべき老廃物がうまく排出できなくなったり、必要な塩分や糖分などの再吸収に異常が起こったりします。

腎臓への血流低下の主な原因

入院患者の場合、出血・下痢・おう吐などで、体内の血液量が少なくなると、腎臓に流れてくる血液量も低下してしまいます。また、心臓病などで心不全になり、心臓のポンプ機能が落ちると、全身の血液循環が悪くなり、やはり腎臓の血流低下が起こります。敗血症という重い感染症になった場合も、全身の血圧低下が起こり腎臓への血流が低下してしまいます。

一方、自宅で生活している場合に、最も気をつけなくてはならないのが「脱水」です。脱水状態になって体内の水分の量が減ると、血液の量も減ってしまい、腎臓への血流が低下します。また、自宅での生活では、薬の服用によって、腎臓への血流不足が起こることがあります。特に高血圧の人が脱水気味のときに、血圧を下げる薬の「ACE阻害薬」「ARB」「利尿薬」をのんでいる場合、腎臓の血流不足が起こることがあります。そのため、汗をかいて脱水を起こしやすい夏場には、医師が高血圧の薬を減らす場合もあります。

②腎臓の細胞の障害

腎臓自体も血液を必要としているため、腎臓への血流が低下した状態がずっと続くと、やがて尿細管の細胞が酸欠状態に陥り、やがて細胞が死んでしまい、急性腎障害が起こります。

③尿路の閉塞

腎臓でつくられた尿は、ぼうこうに流れていきますが、尿路に石ができたり、がんができて詰まってしまったり、前立腺肥大があったりすると、尿が正常に排出されないため、腎臓に尿が溜まってしまう「水腎症」が起こることがあります。その結果、尿が排出されず、腎臓にたまってしまうことで、急性腎障害が起こることがあります。

日常生活の注意点

日常生活の注意点

日常生活の注意点として重要なのは、「脱水を防ぐ」ために水分補給に気をつけること、「痛み止め(鎮痛薬)をのみ過ぎない」ことの2つです。
また、急性腎障害は、腎臓の機能が悪い人ほど起こりやすいといわれているので、健診結果などで、自分の腎機能の数値(クレアチニンとeGFR)をチェックしておいてください。

「危険な「急性腎障害」 の症状と対策とは」について詳しく知りたい方はこちら



脱水がひどくなる前に受診!ノロウイルス

ノロウイルスの感染経路

ノロウイルス感染経路は主に2つです。
1つは食べ物を介した感染で、ノロウイルスに汚染された食品を、生や不十分な加熱のまま食べることで感染します。特に、ノロウイルスをためやすいかきによる感染が多くなっています。もう1つは人から人への感染です。感染者が吐いたものや便に触れた手を介して、ノロウイルスが口から体内に入ることで感染します。

ノロウイルス感染症の症状と受診の目安

ノロウイルス感染症の症状と受診の目安

ノロウイルスに感染すると、増殖したノロウイルスを体外に排出しようとして強い吐き気やおう吐、下痢が起こります。多くの場合、1~2日で症状は治まり、自然に回復します。ただし、乳幼児や高齢者などの抵抗力が弱い人は、症状が長引くことがあります。

ノロウイルス感染症の症状と受診の目安

その結果、おう吐を繰り返して水分をとることができなくなったり、下痢が続くことで体内の水分が失われ、脱水を起こしやすくなります。おう吐が半日から1日以上続き、特に吐き続けている場合には一切水分をとることができないため、半日ほどで脱水に陥ることがあります。こうした状態になると、乳児はぐったりして元気がなくなります。

また、尿が半日以上出ない、尿の色が濃い、唇がカラカラに乾いている場合は、すでに脱水を起こしている疑いがあります。こうした場合には、すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼んで下さい。

症状が軽度な場合など家庭で対処するときは、下痢止めの薬を使わないでください。下痢止めの薬を使うと腸の動きが抑えられて、ウイルスが排出されにくくなって治りが遅くなります。おう吐が治まり水分をとれるようになったら、脱水を防ぐために経口補水液やスポーツドリンクで水分や電解質を少量ずつこまめにとります。

「ノロウイルス徹底対策ガイド 症状や感染経路、予防、感染時の対処法」について詳しく知りたい方はこちら