前立腺がんとは
前立腺は、男性特有の生殖器官です。

膀胱(ぼうこう)のすぐ下にあって、膀胱から続く尿道の周りを囲み、精液の成分をつくるなどの働きをしています。 前立腺がんは50歳代から増え、高齢になるほど多くなります。ただ、前立腺がんは進行が比較的ゆっくりなので、死亡率はほかのがんに比べると高くはありません。
前立腺がんは、男性であれば誰でも発症する可能性がありますが、その他にも発症のリスクを高める要因には
- 食生活
- 遺伝
- 加齢
などがあります。
前立腺がんの進行と症状
前立腺がんの多くは、前立腺の外側の「辺縁域」と呼ばれる部分に発生します。その進行は大きく3段階に分けられます。
初期 限局がん

がんが前立腺の中にとどまっている初期状態。自覚症状が現れることはほとんどありません。
局所進行がん

がんが前立腺を覆っている膜を付き破り、外に出ている状態。頻尿や、尿が出にくい、血尿などの症状が現れます。
転移がん

がんが体のリンパ節などほかの部位に転移している状態。 リンパ節に転移すると脚のむくみ、骨に転移すると背中や腰の痛みが現れます。がんが脊髄を圧迫すると、下半身のまひが現れることもあります。
前立腺がんの検査
前立腺がんの初期には、自覚症状がほとんどありません。早期発見のためには、採血して行う前立腺の細胞でつくられるたんぱく質の「PSA検査」が重要です。
PSA検査の結果、がんが疑われた場合は、直腸診やMRI検査などの精密検査が行われます。
前立腺がんは血液検査で早期発見できる 進行と症状、検査についてについて詳しく知りたい方はこちら
前立腺がんの治療

前立腺がんの治療の柱は、「前立腺全摘除術」という手術、「放射線治療」、「ホルモン療法」の3つです。がんの進行度に応じて、これらの治療法を使い分けたり、併用したりします。
限局がんの治療
定期的な検査により経過観察を続ける「監視療法」、「前立腺全摘除術」、「放射線治療と一定期間のホルモン療法の併用」の3つが主な選択肢となります。
前立腺全摘除術は、前立腺全摘除術は、前立腺と精のうを摘出し、膀胱の出口と尿道をつなぎます。

多く行われているのが、「腹腔(くう)鏡手術」で、最近は、医師が遠隔でロボットを操作して手術を行い「ロボット支援手術」で行われています。
放射線治療は、高線量のエックス線を照射して、がんを死滅させるのが放射線治療です。また、ホルモン療法は、男性ホルモンの働きを抑える治療法です。
局所進行がんの治療
局所進行がんは、検査ではわからない小さな転移がんが発生していることがあり、前立腺全摘除術に加え、必要に応じて放射線治療やホルモン療法が行われます。また、手術は行わずに、放射線治療と一定期間のホルモン療法を併用する方法もあります。
転移がんの治療
転移がんは、主にホルモン療法が行われ、状況に応じて抗がん剤が使われます。ホルモン療法は、男性ホルモンの分泌を抑える薬の注射や、精巣を摘出する手術が行われます。
膀胱がんとは
膀胱は、腎臓でつくられた尿を一時的にためておく袋状の器官です。膀胱がんの90%以上は尿路の内側にある尿路上皮という粘膜から発生する「尿路上皮がん」というタイプです。

膀胱がんを発症する人は、日本では年間2万人以上。男性に多く、喫煙や加齢が膀胱がん発症の要因とされています。
膀胱がんの進行
膀胱がんの進行度は、がんが膀胱の壁のどこまでくい込んでいるかで判断します。
早期がん
がんが最も内側の粘膜や粘膜下層にとどまっている状態が「早期がん」です。患者さんの約3/4は早期がんの段階で診断されており、その場合は治療により根治できる可能性が高くなります。

局所進行がん
がんが粘膜下層よりも深い筋層に達していたり、筋層を越えて広がったりしているのが「局所進行がん」です。

転移がん
がんが体のほかの部位に転移しているのが「転移がん」です。膀胱がんでは、リンパ節や肺、骨、肝臓への転移が多く起こります。

膀胱がんを早期発見する重要なサインとなるのが、目で見える血尿です。 すぐに受診すれば、多くの場合、早期がんの段階で発見できます。血尿が現れない場合もありますので、特に50歳以上で喫煙歴がある人は、年に1回は尿検査を受けることがすすめられます。
膀胱がんの検査
泌尿器科では、まず主に尿検査と超音波検査が行われます。
その結果、がんが疑われた場合や、高齢者などリスクが高い人は精密検査が行われます。

【膀胱がんを調べる精密検査】
- 膀胱鏡検査
- MRI検査
- CT検査
膀胱がんの治療
膀胱がんの治療は、進行度に応じて治療法が異なります。
早期がんの治療
尿道から膀胱に内視鏡を入れて、がんを切除する「経尿道的切除術(TURBT)」という手術が治療の中心です。全身麻酔または脊椎麻酔をしたうえで、筒状の内視鏡を尿道から膀胱に挿入し、電気メスで組織を切除します。手術時間は約1時間で、4~6日間ほど入院が必要です。

膀胱がんは再発しやすく、約5割は2年以内に膀胱にがんが再発するといわれています。再発を繰り返すと、局所進行がんに進行しやすくなります。再発予防のため、TURBTを行ってから24時間以内に膀胱に抗がん剤を注入します。
最近では、PDD(光力学診断)という診断方法を使ったTURBTが行われるようになってきています。
局所進行がんの治療
局所進行がんの多くは、膀胱と前立腺をすべて切除する「膀胱全摘除術」という手術が行われ、必要に応じて尿道も切除します。

点滴による抗がん剤治療を一定期間続けることで、がんが縮小することがあり、その場合、より切除しやすくなります。手術方法には、おなかを大きく開いて行う「開腹手術」と「腹腔鏡手術」があります。
膀胱全摘除術を行った場合、同時に膀胱の代わりをつくる手術も行われます。大きく分けて2つの方法があります。


ストーマ(人工膀胱)は、体の外に尿をためる方法です。自排尿型新膀胱増設術は、体の中に膀胱の代わりをつくる方法です。
転移がんの治療
膀胱がんが進行すると、リンパ節や肺、骨、肝臓などを中心に、全身のさまざまな場所へ転移します。そのため、手術ではなく、抗がん剤など薬による治療で全身でのがん細胞の増殖を抑えます。
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