2016年10月05日(水)放送

腰痛 徹底解説「椎間板ヘルニアの新常識」

椎間板ヘルニアとは

横から見た腰椎
椎間板ヘルニア

 背骨の腰の部分は5つの椎骨で構成され、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板があります。その椎間板にひびが入り、椎間板の内部にある髄核というゼリー状の組織が一部飛び出して、神経を圧迫するのが椎間板ヘルニアです。10~40歳代の若い世代に多く発症し、発症理由として、1つは遺伝との関係が考えられています。また、喫煙も関係することが報告されています。スポーツは、直接的には関係しないと考えられています。一般に、椎間板ヘルニアの症状は腰痛から始まり、その後、お尻や脚にしびれや痛みが起きます。おじぎをしたり、いすに座るなど、前かがみの姿勢になると、症状が強まるのが特徴です。

椎間板ヘルニアの新常識①多くの人は自然にヘルニアが消える

椎間板ヘルニアと診断
その後腰が正常に

 椎間板ヘルニアの多くは、何もしなくても、発症してから6か月前後に自然に消失します。これは整形外科医の間ではかなり以前から常識になっていることですが、一般には、まだあまり知られていないかもしれません。ただ、すべての椎間板ヘルニアが自然に消えるわけではありません。消えやすいのは、髄核が椎間板と神経の間にある後縦[こうじゅう]じん帯を突き破っている場合です。その場合は、免疫細胞が反応して、飛び出した髄核を食べるため、ヘルニアが自然に消えるのですが、髄核が後縦じん帯を突き破っていない場合は、免疫細胞が反応しにくいため、椎間板ヘルニアは自然に消失しにくいと考えられています。

椎間板ヘルニア 馬尾症状チェック

チェック1~6

 椎間板ヘルニアにも、腰部脊柱管狭さくと同様に馬尾型と神経根型があります。腰痛に伴ってお尻や脚にしびれや痛みがある場合、チェックの①~⑥のうち当てはまる項目が1つでもあれば、馬尾型という進行しやすいタイプである可能性が高くなります。1つも当てはまらない場合は、神経根型という進行しにくいタイプであることが考えられます。馬尾型の場合は、放置していると尿漏れや頻尿などの排尿障害が起こります。進行すると歩行困難になって、将来寝たきりになることもあります。どちらのタイプか調べるため、脚のしびれや痛みが1週間以上続く場合は、整形外科を受診することがすすめられます。

椎間板ヘルニアの治療法

薬物治療
後方椎間板摘出術

 椎間板ヘルニアの治療の基本は薬です。非ステロイド性消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、オピオイド鎮痛薬、プレガバリンなどが使われます。多くの椎間板ヘルニアは、これらを使って痛みを抑えている間に、自然に消えてよくなっていきます。痛みが強い場合は、注射による神経ブロックが行われることもあります。馬尾型の症状があり、薬で2~3か月治療をしてもよくならない場合は、手術が検討されます。排尿障害がある場合は、後遺症を残さないためにも手術が行われます。馬尾型の症状がない場合でも、薬で改善しなければ手術が検討されます。椎間板ヘルニアで消えやすいタイプの場合は、薬で2~3か月様子を見て判断されます。消えやすいタイプでも、仕事の内容やスポーツ選手であるなどの事情で、急いで症状を取りたい場合は手術が検討されます。手術は、腰の後ろ側から器具を入れて、飛び出した髄核を切り取る後方椎間板摘出術がよく行われます。手術時間は約1時間で、1週間ほど入院します。手術を決める際にぜひ注意してほしいのが、MRIなどの画像を見ただけで手術を決めないことです。たとえ大きな椎間板ヘルニアがあっても、そこからの症状が現れない場合があるからです。

椎間板ヘルニアの新常識②ヘルニアがあるだけでは症状は起こらない

症状を起こす要因

 最近の研究では、成人では椎間板ヘルニアを持っている人の方が、持っていない人より多いと考えられています。ところが、椎間板ヘルニアで腰痛を起こしている人はごく一部です。つまり、椎間板ヘルニアがあるだけでは症状は起こらないのです。症状が現れるのは、椎間板ヘルニアにほかの要因が加わった場合です。研究の結果わかった要因は、神経への圧迫の強さ、仕事上の満足度の低さ、そして、うつ・不安・ストレスです。このうち、うつ・不安・ストレスなどの精神的要因は、症状を長引かせ、慢性腰痛の要因にもなります。

※2016年10月現在の情報です。

詳しい内容については、きょうの健康テキスト10月号に掲載されています。
きょうの健康テキスト10月号