生活習慣によって「遺伝子の働き」を変え、健康効果をゲット!?

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人体(NHKスペシャル)運動の健康効果食で健康づくり

「健康のためには、食事や運動などの生活習慣が大切」ということは言うまでもありません。しかし意外なことに、「生活習慣が一体どのようにして私たちの体に作用するのか?」その詳しいメカニズムはよく分かっていませんでした。

今、最先端のDNA研究の進展から、実は「遺伝子の働き」が生活習慣によって変わり、結果、体にさまざまな変化をもたらす仕組みの詳細な様子が分かってきました。その「遺伝子の働き」を変える仕組みこそが、"DNAのスイッチ"なのです。驚きのメカニズムを知れば、生活習慣というものの考え方はがらりと変わります。

生活習慣によって「遺伝子の働き」が変わる!?
生活習慣によって「遺伝子の働き」が変わる!?

"DNAスイッチ"によって「遺伝子の働き」は大きく変化する

DNAスイッチの仕組みを少し専門的に表現すると、「DNAにメチル基などの『化学的修飾』が付加して、遺伝子の発現(働き)が変化する」ということになります。(より詳しく知りたい方は、「エピジェネティクス」という言葉で検索してみてください。)

この発見がなぜ驚きかというと、「生まれ持ったDNAは基本的に一生変化しない」という今までの常識に対して、実は「DNAには生まれた後にも自在に変化する仕組みがあり、遺伝子の働き方が変わる」ということが分かってきたからです。「遺伝子=運命を決める存在」という見方は過去のものになりつつあります。そして、その最も身近な方法として盛んに研究されているのが、食事や運動などの生活習慣によるDNAスイッチの変化なのです。

CG:DNAのスイッチが切り替わり、遺伝子の働きを変える。
CG:DNAのスイッチが切り替わり、遺伝子の働きを変える。

食事によって遺伝子の働きが変わり、健康効果!

例えば、食事。スペインのナヴァラ大学で研究されているのは、地中海料理に欠かせない「オリーブオイル」と「ナッツ」です。被験者にオリーブオイルとナッツを毎日食べてもらい、DNAのスイッチに起きる変化を、長期間にわたって詳しく調べる実験が行われています。これまでの分析によると、肥満や高血圧など、メタボの予防に関わるDNAのスイッチが変化して、健康に良い効果をもたらすことが分かってきました。

ほかにも、世界中でさまざまな食品が調べられており、「緑茶に含まれるカテキンの一種には、『がんを抑える遺伝子』のスイッチをオンにする効果がある」ことなどが明らかになってきています。食事によってDNAのスイッチを改善するという方法が、病気の予防や治療の一環として重要になってくると考えられているのです。

DNAのスイッチを切り替える食品があることが分かってきた。
DNAのスイッチを切り替える食品があることが分かってきた。

運動によっても遺伝子の働きが劇的に変わる!

さらに、スウェーデンのカロリンスカ研究所では、運動によるDNAスイッチの変化が詳しく調べられています。実験の参加者に、軽い負荷をかけた持久運動を週に4回行ってもらいます。すると、3か月後。運動能力アップに関わるDNAのスイッチに加えて、糖尿病や心筋梗塞などのさまざまな病気の予防に関わるスイッチも変化していることが明らかになりました。変化していたDNAスイッチの数は、4000以上にもなります。

従来の研究で、運動には糖尿病や心筋梗塞、さらにがんなどの多くの病気を予防したり、症状を改善したりする効果があることが分かっています。その裏には、「DNAのスイッチが変化して遺伝子の働きを変える」という、神秘的なメカニズムがあることが確かめられつつあるのです。

逆に、喫煙やアルコールなどの習慣もDNAのスイッチを変化させ、健康に良くない影響を与えることも分かり始めています。私たちの体は、生活習慣という"環境"に日々さらされ、その環境に応じて遺伝子の働きをダイナミックに変化させる「環境応答」という機能を持っているのです。そう考えると、生活習慣への意識も変わってくるのではないでしょうか?

運動すると遺伝子の働きが変わり、健康効果をもたらす。
運動すると遺伝子の働きが変わり、健康効果をもたらす。

この記事は以下の番組から作成しています

  • NHKスペシャル 放送
    “DNAスイッチ”が 運命を変える