詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年4月 号に掲載されています。

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腟(ちつ)から臓器が出てくる「骨盤臓器脱」は、昔からある女性特有の病気です。女性の骨盤には、膀胱(ぼうこう)、子宮、腸などの臓器がおさまっています。これらを支える骨盤底(骨盤の底の組織)が出産や加齢でゆるんで、臓器が腟口から外に下がってくることで起こります。
腟の前側の壁がゆるんで、膀胱と一緒に下がるのが、「膀胱瘤(ぼうこうりゅう)」。子宮を支える組織がゆるみ、子宮が腟の中に落ち込んでくる「子宮脱」。そして腟の後ろ側の壁がゆるんで、直腸と一緒に下がる「直腸瘤」です。
膀胱が下がるタイプが一番多いのですが、膀胱と子宮、両方が下がることもよくあります。臓器が下がってくると出口を邪魔して、排尿困難が起こるのも特徴です。
初期は、まだ臓器が腟の入り口から完全に出てしまう前、腟口ぎりぎりの段階です。この時、患者さんは、何か腟の入り口に下がってくるような「下垂感(かすいかん)」があると言います。
骨盤臓器脱は、次のような状況で気づくことがあります。
などです。
お風呂に入ってかけ湯をしたり体を洗うときに、股の間でピンポン玉みたいなものに触れて驚く。トイレで排便のために力んだ後、紙でふくときに気づく。また、重いものを持ったときや介護や孫のお守りなどでおなかに力が入ったときに違和感のあるという方もいます。
骨盤臓器脱は、夕方疲れてきたときや、長く歩いたり立ち仕事をしたりした後に気になるという段階から、さらに症状が進行して悪化すると、朝起きた時から日中、いつも腟から臓器が出てしまう状態になります。
"下がった臓器を指で押しても戻りにくい"、"常に股の間に何かはさんだような感じで歩きにくい"、"臓器が一日中下がって下着にすれて出血する"、このような症状になると、手術などの治療の必要性が高くなります。
骨盤臓器脱では、排尿障害や排便障害もおこります。
股の間にふたをしたようで尿がでにくい排尿困難、トイレに行ったばかりなのにすぐにまた行きたくなる頻尿、トイレに間に合わずに尿をもらしてしまう切迫性尿失禁や、せきや運動でおなかに力がかかると尿がもれる腹圧性尿失禁。便を出そうとすると何か下がって出しにくい排便困難などの症状です。
基本的に命に関わる病気ではないので、お風呂やトイレに入ったときに、腟口で"ピンポン玉のようなものに触る"、"腟の中でふくらんでいる状態"程度の場合は、あわてることはありません。しかし、かなり気になるなら受診してください。子宮がん検診の機会を利用するのもよいでしょう。
その際に重要なのは、医師に「何か下がる」としっかり伝えることです。医師は、患者さんが寝た姿勢で診察すると、初期の軽い場合や午前中などは臓器が腟の中に引っ込んでいて骨盤臓器脱の所見がわからないことがあります。
患者さんが、「何か下がる」症状があるとしっかりと伝えれば、医師は、「咳払いをしてください」とか「便秘のときのように思い切り力んでください」と言って患者さんに誘発動作をしてもらいます。そうすることで、臓器が下がる状態を再現して骨盤臓器脱の所見を確認することができます。
骨盤臓器脱は、産婦人科や泌尿器科で診てもらえます。女性泌尿器科、また、ウロギネ外来といって、女性特有の骨盤臓器脱や尿もれなどを専門的に扱うところもあります。地域の医療機関へ問い合わせてください。
日本では、少し臓器に触れるくらいの軽い症状でびっくりしてあわてたり、逆にこぶしくらい出てきて重症なのに「恥ずかしい」とか「どこにかかっていいかわからない」と我慢している方が多くいます。
女性ではよくある病気なので、股の間に違和感を感じてもびっくりせず、症状や治療法を知って改善につなげていきましょう。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年4月 号に掲載されています。