ラクナ梗塞などの「隠れ脳卒中」を伴うアルツハイマー型認知症とは

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血管性認知症 脳卒中 アルツハイマー病 認知症 麻痺(まひ)がある 言葉が出ない 意欲の低下 脳・神経

脳の血管の詰まり・出血による「血管性認知症」

血管性認知症は、脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破けて出血する脳出血により発症します。障害が起こった場所によって症状は異なりますが、たとえば、以前はスムーズにできていたことが段取りよくできなくなる、動作が全般的にゆっくりになる、活気がなくなり言葉数が少なくなるなどの症状が現れます。

「血管性認知症」についてこちら

脳卒中後に起こる認知症

脳卒中後に起こる認知症

脳梗塞や脳出血などの脳卒中を起こすと、多くの場合、半身のまひ・ろれつが回らない・フラフラするといった明確な症状が現れます。その場合、ただちに医療機関を受診し、「脳卒中」と診断を受け、治療を始めます。脳卒中の発症から、およそ3か月以内に、後遺症によって認知症の症状が現れる人が一定の割合でいます。

また、最初の「脳卒中」では「認知症」が目立たなくても、脳卒中を何度か繰り返すうちに、認知機能が段階的に低下し、気づいたら認知症になっていたというケースも多くあります。

脳梗塞、脳出血

脳卒中の症状が明確に現れるのは、脳の太い血管に脳梗塞脳出血が起こった場合です。実際に脳の画像の例をみると、脳梗塞では、右側の広い範囲が黒くなっています。これは、血管の詰まりにより血流が滞ったため、壊死(えし)してしまった部分です。脳出血の画像でみえる白い箇所は、出血した血液のかたまりです。

「隠れ脳卒中」による認知症

「隠れ脳卒中」による認知症

太い血管で脳梗塞や脳出血が起こっても、起こった場所によっては、明らかな脳卒中の症状が現れないことがあります。いわば「隠れ脳卒中」です。

脳の細い血管が詰まるラクナ梗塞や、出血の範囲が小さい「小さい脳出血」も、隠れ脳卒中です。実際の脳画像の例をみると、ラクナ梗塞では中央に小さな白い点が2か所あります。これが、壊死した部分です。

小さい脳出血では、中央に小さな黒い点が複数あります。これが出血のあとです。ラクナ梗塞や小さい脳出血は、脳卒中の症状が現れにくいことが多く、気づかないうちに病変の数が増えていることもあります。こうした隠れ脳卒中であっても、脳はダメージを受けているため、認知症の原因となります。

実は多い「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」

認知症の原因としてもっとも多いのが、「アルツハイマー病」という脳が萎縮する病気です。アルツハイマー病がある人に隠れ脳卒中が起こることで、認知症を発症することもあります。これは「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」と呼ばれます。アルツハイマー病も隠れ脳卒中も、加齢に伴って、発症や進行のリスクが高くなります。

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脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症

アルツハイマー病があるものの認知症の症状はまだ現れていない人に、ラクナ梗塞や小さい脳出血といった血管性の病変ができたり、増えていったりすると、認知症を発症する時期が早まりやすくなります。たとえば、アルツハイマー病のみであれば90歳で認知症を発症する人が、血管性の病変も伴うことで70歳で発症するといったケースも考えられます。

脳卒中歴のないアルツハイマー型認知症でも...

ある調査では、脳卒中を起こしたことがないアルツハイマー型認知症の患者120人・平均75.6歳を調べたところ、50.8%にラクナ梗塞がみられました。こうした結果から、最近では、ラクナ梗塞など小さい病変の「隠れ脳卒中」でも、アルツハイマー型認知症を悪化させる重要な危険因子と認識されるようになっています。

生活習慣病対策で「隠れ脳卒中」も「アルツハイマー型認知症」も防ぐ

脳卒中は血管の動脈硬化が大きな原因となるため、動脈硬化の危険因子である、高血圧糖尿病脂質異常症など生活習慣病の予防や管理が治療の柱の1つとなります。隠れ脳卒中も同じです。また、生活習慣病はアルツハイマー型認知症を発症するリスクを高めることがわかっています。食事や運動など生活習慣の改善や薬による治療により、生活習慣病の予防や管理をしっかりすることが、血管性認知症、アルツハイマー型認知症、両方の予防につながります。

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年4月 号に掲載されています。

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