【あの人の健康法】内田春菊 大腸がんから人工肛門での生活に。リアルで前向きな体験談

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大腸がん胃・腸・食道肛門

各界を代表する方々の健康の秘訣や闘病記を紹介する「あの人の健康法」。今回は、漫画家や作家として活躍する内田春菊さんです。

内田さんは、大腸がんの治療により人工肛門での生活がスタートしました。最初はショックを受けたものの、やがて自身の体の変化や、それに伴い生活の変化にも慣れていきます。そこにはユーモアすら感じられる人工肛門との向き合い方がありました。リアルな体験談を伺いました。

大腸がんの手術と人工肛門

56歳のときに大腸がんと診断された内田さん。医師から「手術で治療できるが、人工肛門になるかもしれない」と告げられました。

大腸がん
人工肛門

がんが肛門に近い直腸にあったためです。この場合、がんと一緒に肛門を切除しなければならないことがあります。そして失った肛門の代わりに、大腸の一部をおなかの壁を通して外に出し、便やガスの出口として使います。これが人工肛門で、ストーマとも呼ばれています。

人工肛門と言われたショック

Q:「人工肛門になるかもしれない」と言われたときには、かなりショック?

内田:はいとても。今はね、ほんとにたくさんの同じような人がいるのを知ってますけど。あまりみんな その話しないじゃないですか。だから想像ができないというか。「そうきたか」と、すごいびっくりしました。

Q:そのときは人工肛門については どの程度ご存知だったんですか?

内田:ぜんぜん知りません。だから、硬いものを、人工のものを何か装着するのだと思っていて。座れるのかなとか。このへん(お尻)に硬いものが足されるみたいなイメージがあって。

まずは抗がん剤

人工肛門になる可能性を減らすため、内田さんは、手術の前に抗がん剤の治療を繰り返しました。抗がん剤はよく効いて、がんは小さくなりました。それでもなお、がんが肛門にかなり近かったため、人工肛門は避けられませんでした。

人工肛門になっちゃったー

最終的に人工肛門になるかどうかの判断は、手術中に行われることになっていました。手術後、麻酔から覚めて、内田さんは自分がやはり人工肛門になったことを知ります。

内田:「傷、はい大丈夫ですね」って言ってて。「ん?こっちか、なっちゃった」みたいな感じ。「なっちゃったかー」という感じです。

Q:ずっと人工肛門とつきあっていくのか、というような感じですか?

内田:まあ、そりゃ、なっちゃったものはしかたないですよね。

Q:その「なっちゃったか」という感じは?

内田:うちに帰ってもしばらくありました。朝起きたとき「あ、そうだったな」みたいな感じですね。手ごたえじゃなくて腹ごたえですけど、違うものがあるじゃないですか。しばらく「そうだったー」みたいなことがありましたけど。今はもう、昔からこんなだったような気になるくらいになれました。

ちょっとおもしろくなって

人工肛門という突然の変化。内田さんはそれを漫画にも描きながら独自の視点で見つめています。

内田:手術終わってから、最初ここ(腹部)に中が見えるもの(透明な袋)がついているんですけど、そこから、ころころって排せつが始まったとき、ちょっとおもしろくなってきちゃって。だってそんなの見れないじゃないですか、普通。

内田:ここに腸が出ているわけだから。よく見るとね、動いたり色が変わったり。おなかをこわすと赤い点々が出るんですよ。おもしろいんです。腸ですから。

身につけている装具

人工肛門の場合、出てきたものがたまる袋などを身につけて生活します。装具と呼ばれています。

内田:まず、これを人工肛門が顔を出すところに貼るんですね。これがプレートです。独特の、傷とか皮膚を保護する良い素材になっていて、貼りっぱなしで暮らしても皮膚はぜんぜん大丈夫なんです。で、こうやって貼ります。そこに、これ(パウチと呼ばれる袋)をピタッと付けます。ふだんこういう状態。で、中にたまってきますので、たまってきたら、ここからぺりっと剥いで、ぽいっと捨てちゃうんです。

内田:これ(ミニサイズのパウチ)かわいいでしょ。CDみたいで。温泉とかまだ行ったことないですけど、温泉とかプールとか、取材のときに写真撮影するときは、こっちがかわいいので、こっちにするんです。

Q:いろんなものをお試しになっていったわけですね?

内田:はい。とても楽しい。あと、これ剥ぐときに、剥がし剤というものがあって、スプレータイプとウェットティッシュタイプがあって、それがミントの香りがするとか。いろいろね、楽しい。

Q:楽しいですか?

内田:ふつうに楽しいです。

不安になったことも

Q:お話を伺うにつけ、ほんとに前向きに向き合っていらっしゃる。

内田:すごい後ろ向いてるときもあるんです。後ろを向いてるといっても、わたしの場合そんなに重い症状じゃなかったので、そんなに。「もしうっかり死んだらどうしよう」とか不安になるときもありましたけど。あと、痛いのがね。関係ないところまで(がんが)行ってるんじゃないかと不安になったこともありましたけど。そのたびにお医者様に相談して。自分じゃわかんないですもんね。

内田:でも「これってもしや」となるときは、言葉にするのも怖かったりするんですよね。だから、しょんぼりして言葉が出てこないみたいな人もいるんだろうなと思います。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    あの人の健康法「内田春菊」