詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年3月号に詳しく掲載されています。

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ひじには「尺骨神経」という太い神経があり、ひじの内側にある、筋肉や骨に囲まれたじん帯の中の「肘部管」という空間を通っています。尺骨神経は、小指と薬指の指先まで伸びていて、小指と、薬指の小指側の感覚をつかさどっています。
肘部管症候群では、何らかの影響でひじが変形するなどして、肘部管の内部で尺骨神経が圧迫されることで、小指と薬指がしびれたり、感覚が鈍くなったりします。そのままにしていると、指の感覚がほとんどなくなり、指先に力が入らなくなっていきます。
肘部管症候群は、長年、ひじを酷使してきた人に起こりやすいと言われています。ひじを酷使し続けると、やがてひじの骨にとげや出っ張りができたり、ひじ周辺の筋肉が発達したりすることで、肘部管の中の尺骨神経が圧迫されます。
具体的には、手や腕を酷使する職業の人、子どものころなどにひじを骨折したり、けがをしたことがある人に起こりやすくなります。テニスや野球、柔道など、スポーツ選手にも多くみられます。また、骨や関節は加齢によって変形しやすくなるため、加齢に伴い発症しやすくなります。特に、中高年に多くみられます。
肘部管症候群がある人は、ひじを曲げた姿勢を続けると、しびれが強くなります。ひじを曲げると、尺骨神経が伸ばされ、尺骨神経への圧迫が強くなるためです。
例えば、本を手で持って読んだり、ほおづえをつく姿勢などで、症状が出やすくなります。このほか、箸を使いにくくなったり、指を広げたり閉じたりしにくくなるなどの症状も現れるようになります。
尺骨神経は、小指と、薬指の小指側の感覚のほか、手指の根元の筋肉の運動をつかさどる神経にも関係しています。そのため、尺骨神経が圧迫されると、手指をうまく動かせなくなっていくのです。
それに伴い、手指の根元の筋肉がやせ、さらには手が全体的にやせていきます。肘部管症候群は、そのままにしていると神経の傷みが進行するため、やがて小指と、薬指の小指側の感覚がほとんどなくなります。また、手指を使う細かい作業が難しくなり、日常生活にかなりの支障をきたすようになります。一般的に神経の回復は1日1mmとされています。神経の障害が始まったひじから指先まではかなり距離があるので、回復には数年かかります。重度の場合は完全に治すことが困難になります。
症状を進行させないためにも、しびれなどの症状に早く気づくことが大切です。小指と、薬指の小指側がしびれるという場合は、すぐに整形外科を受診してください。
小指と薬指がしびれたことがある気がするという人は、自分で行えるチェック方法があります。
ひじの内側にある2か所の骨の出っ張りの間を軽くたたいてみてください。小指と薬指にしびれが現れた場合は、肘部管症候群の疑いがあります。
もう1つは、「フローマン・テスト」といって、実際に診断に使われているチェック方法です。
薄い紙の両端を、両手の親指と人さし指で、指を伸ばした状態でつまみます。
紙を両側に引っ張ったときに、どちらか一方でも無意識に親指を曲げてしまう場合は、肘部管症候群の疑いがあります。紙がどうしても抜けてしまう場合も、肘部管症候群の疑いがあります。
医療機関を受診して肘部管症候群と診断されたら、まずは薬による治療が行われます。消炎鎮痛薬ののみ薬などで、神経の炎症を抑え、しびれを軽減します。
また、神経を回復させる可能性があるビタミンB12ののみ薬も使われます。症状が改善しない場合や重度の場合は、早めの手術が勧められます。
肘部管症候群のある人は、ひじが変形していることが多く、そのまま圧迫が続くと、神経の傷みが進行してしまいます。そのため、手術で圧迫を取り除く必要があります。
最も多く行われている手術は、尺骨神経の圧迫を取り除いたあとに、尺骨神経を移動させる手術です。まず、肘部管を囲むじん帯を部分的に切開し、尺骨神経への圧迫を取り除きます。それから尺骨神経を少し前方へ移動させ、ゆとりをもたせることで、ひじを曲げても圧迫されないようにします。手術時間は1~2時間ほどです。
筋肉のやせ方がまだ軽度の場合は、手術によって、やせた筋肉や、小指と薬指の小指側の感覚を治すことが可能です。筋肉がひどくやせた重度の場合は、手術でも傷んだ神経を完全に回復させることはできませんが、神経の傷みの進行や症状の悪化をくいとめることはできます。
肘部管症候群のある人は、神経の傷みを進行させないために、ひじを使う動作や、ひじを深く曲げ続けるような動作は、できるだけ減らす工夫をするようにしてください。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年3月号に詳しく掲載されています。