結婚式2週間前にわかった乳がん 闘病支えた周囲の言葉

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(※この記事は2018年9月に掲載したものです)

「クローズアップ現代+」鎌倉千秋です。
女性の11人に1人がり患する乳がん―。私にとっても他人事ではありません。患者やご家族はどんな不安や悩みと向き合っているのか、ある女性を訪ねました。

結婚式2週間前にわかった乳がん・手術・闘病
そして出産へ

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御舩(みふね)美絵さん、39歳。お腹には来月出産予定の赤ちゃんがいます。御舩さんは31歳で乳がんが判明。結婚式の2週間前でした。その1か月半後、左胸全摘手術を受けました。がんとわかった時、あらゆる課題が怒涛のように押し寄せてきました。まず生きること。胸は温存できるのか、将来赤ちゃんは産めるのか。女性にとって人生を大きく左右する"選択"を次々と迫られる中、必死に情報を集め、とにかく自分が納得できるように、究極の"選択"を続けました。そして、「どうしても子どもを産みたい」と、抗がん剤を省ける可能性を求めて、遺伝子検査を受けるという決断―。いずれの選択にも「模範解答」はなく、選んだ自分の中にも"完璧"で"確信"できる答えはなかった。しかし、前へ進むしかない。長期にわたる闘病を経て、新たな命を授かったのです。

闘病支えた夫・家族・友人の言葉

「周囲の支えはとても大きかった」と御舩さんは振り返ります。

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一緒に歩んできた夫― 乳がんがわかったのは結婚直前だったのですが、病気になったことで見えた夫の一面がたくさんあったそうです。それまでもいろいろ話はしてきたつもりだったけれど、今後どう二人で生きていくか、治療のこと、命のこと、いろんな話をして、「こんな風に一緒に歩いてくれる人なんだ」とよくわかり、心強かったそうです。そして「特別視せずに普通に接してくれたことが一番ありがたかった」と。夫は、御舩さんの性格をよく理解していて、「最後は自分で納得して決めるんだよね」と、いつも見守ってくれました。来月には初めての出産を控える中、ある時夫が「こんな日が来るとは思わなかったね」と話したそうです。"平穏"な日を大事に生きる、かけがえのない信頼で結ばれたご夫婦だと感じました。

全摘手術で失った左胸は自分自身なかなか見ることができませんでした。でも退院直前に初めて鏡と向き合った時、隣にいてくれたのは妹でした。

お母さんからは、「この若さで他人がめったにできない経験をしているんだから、強みに変えてみたら」と励まされました。がんになった時、元気な同年代がバリバリ仕事をしている中、「なぜ自分が・・・」と置いてかれた気持ちになっていた自分の考え方を変えてくれたそうです。

そして、友人や、同じ病で闘う人たち、主治医や看護師との出会いも大事な支えだったといいます。自分は目の前の病を治すことに必死で気がつかなかったが、もしかしたら自分よりも家族の方が苦しかったのかもしれない―御舩さんはそう語りました。

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~「幸せの形は、自分自身にある」~

御舩さんに、「同じ病と闘っている方、支える家族・周囲の方にどんな言葉をかけたいですか」と尋ねると、「誰かと比べるのではなく、自分の中にある幸せを見つけそれを大事に生きていくこと。それがあれば、また歩き出せるし、病気とともに生きていく道があると思います」と言われました。御舩さんと私は偶然にも同い年、誕生日もほとんど一緒でした。病気を宣告されてから、考え抜き、全力を尽くし、自分自身が納得しようといくつも究極の選択を重ねてきた御舩さん、「自分の中の幸せを見つけ大事に生きる」という言葉の重さをかみしめました。