詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年8月 号に掲載されています。

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ALSを診断するためには、問診・視診・触診・筋電図検査・脊髄のMRI検査などを行います。問診では症状を細かく聞き取ります。視診では、目や顔、手の動き、立ったり座ったり歩いてもらうなどして、筋肉がやせてきていないかなどを確認します。触診では「バビンスキー反射」や「膝蓋腱反射」などを確認します。
バビンスキー反射は、足の裏を軽くこすって、足の指がどんな動きをするか確認するものです。正常であれば、親指は内側に曲がりますが、異常がある場合は、反るような感じになります。膝蓋腱反射は、ハンマーでひざを叩いて確認するものです。脳から脊髄に伸びている上位運動ニューロンに異常がある場合は、反射が強くなって足が持ち上がります。筋電図検査では、筋肉の電気的な活動を調べます。ALSの場合は、症状が出ていない筋肉にも異常を認めるため、症状が出ていない早期の段階でも異常を見つけることができます。MRI検査は、他の病気との鑑別に行われることがあります。
ALSでは、病気の進行を抑えるための薬と、さまざまな症状を和らげる薬を使って治療を行います。
「リルゾール」と「エダラボン」の2種類が進行を抑える薬として使われています。最初はリルゾールから使われることが多いですが、多くの場合、両方の薬が併用されます。
リルゾールは、飲み薬で1日2回服用します。神経細胞を保護する作用があると考えられています。
エダラボンは、2015年に世界に先駆けて日本で開発承認された新しい薬です。点滴薬で、基本的には10日点滴したら2週間休み、また10日間点滴したら2週間休む、というサイクルを繰り返します。ALSに影響しているとされる酸化ストレスから神経細胞を保護する薬です。
副作用は、リルゾールでは肝機能障害や食欲不振、エダラボンでは肝機能障害や発疹、かゆみなどが起こることがありますが、いずれも多くは一過性で改善します。治療開始後は特に注意が必要です。
進行に伴い現れるさまざまな症状で困っている場合は、症状を和らげる薬を使います。例えば、筋肉がつって困っている場合は、漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が良く効きます。筋肉のつっぱりなどで激しい痛みが起こっている場合は、痛み止め(鎮痛薬)、場合によってはモルヒネなどを使います。
ALSでは、栄養状態が良いと生命予後が良くなる(より長く生きられる)ことが分かっているため、食べることも大事な治療の一環です。
のどの筋肉が弱まり、食べ物が飲み込みにくい場合は、細かくしたりとろみをつけたりして、飲み込みやすくする工夫をします。それでも飲み込みが困難になった場合には、胃に直接栄養剤などを注入する「胃ろう」を作ることが大切な治療となっています。胃ろうを用いている患者さんを対象に行われた調査では、通常の栄養をとっているグループよりも、「高脂肪・高カロリー」または「高炭水化物・高カロリー」の栄養をとっている患者グループのほうが生存率が高いという結果が得られました。また、呼吸が苦しくなった場合は、マスク型の簡易な人工呼吸器(鼻マスク)で呼吸補助をする治療を行います。
ALSでは、40歳以上であれば介護保険を利用できます。ただし、病気の進行に伴い、生活機能の低下やさまざまな症状への対応など、多くの課題が生じてきます。そのため、医療機関や福祉サービスなどの多くの専門家・機関が連携して対応することが望まれます。
海外では、連携したサポート体制が整うことで、合併症が減り、生活の質も向上したという報告があります。しかし、日本ではまだ患者さんと家族が安心して療養生活できる環境が十分整っているとはいえない環境です。そのため、多様な専門家・機関による医療連携の体制づくりが進められています。
ALSはできるだけ早く診断をつけて介入することで、生活の質を保ちながら長く生きることができるようになっています。早く見つけて適切な治療を行うことで、発症から10年以上経過しても進行が抑えられている人もいます。しかし、初期症状が手足や言葉・のどの違和感からはじまるため、多くの患者さんは、整形外科や耳鼻咽喉科を受診しています。
手足の異常の場合は、頚椎症と症状が良く似ているため間違われることもあり、ALSの治療開始が遅れてしまうこともあります。いち早く治療を開始できるように、手足や言葉・のどに違和感があったら、まずは神経内科(脳神経内科)を受診してください。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年8月 号に掲載されています。