【患者体験談】食中毒から「ギラン・バレー症候群」に

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ギラン・バレー症候群になったとき -私のチョイス-

20代なのに筋力は80代の高齢者

ある日、Aさん(女性・当時20代後半)は、昼食をとろうと箸を持ったとき、手に力が入らず、うまく箸を持てないことに気づきました。原因がわからないまま翌朝目を覚ますと、症状はさらに進行していました。起き上がることもできず、転がり落ちるようにベッドから出て、はって部屋を出たといいます。

体がどんどんいうことをきかなくなる感覚に恐怖を覚えたというAさんは、家族に支えられて神経内科を受診。検査の結果、ギラン・バレー症候群と診断され、そのまま1か月半ほど入院しました。

しかし、退院後も手足の脱力感は続き、財布の中の小銭を取り出す、家の鍵を回すといった指先の細かい動作がうまくできないことに悩みました。さらに、何もないところで転んでなかなか起き上がれないなど、日常生活のさまざまな場面に支障が及びました。Aさんは当時を「20代の体でありながら、筋力は80代の高齢者だった」と振り返ります。

ギラン・バレー症候群とは?

ギラン・バレー症候群は、全身の神経に炎症が起きる急性の病気で、難病に指定されています。まず、手足の末しょう神経に炎症が起き、脱力感やしびれなどの症状があらわれます。進行すると、中枢神経にまで炎症がおよび、呼吸困難などの症状が出ることもあります。

では、なぜ神経に炎症が起こってしまうのでしょうか?ギラン・バレー症候群を発症する主なきっかけは、細菌やウイルスの感染です。本来は細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫(抗体)が、まれに自分の神経を誤って攻撃してしまい、そのために炎症が起きるのがギラン・バレー症候群なのです。

原因は食中毒?

Aさんがギラン・バレー症候群になってしまった原因は、カンピロバクターという食中毒菌だったと考えられます。カンピロバクターは、主に家畜に潜んでいます。とくに、ニワトリにいることが多く、厚生労働省によると、市場に出回る鶏肉の6割以上でカンピロバクターが検出されたという報告もあります。感染すると、2~3日後に下痢やおう吐、発熱などの食中毒症状を引き起こします。そして、まれですが、感染から1~3週間後にギラン・バレー症候群を引き起こすこともあります。

しかしこのカンピロバクターは、十分に加熱さえすれば死滅するはずです。Aさんは、ギラン・バレー症候群を発症する2週間前に居酒屋で、内部が生の鶏肉料理「とりわさ」を食べ、その後軽い下痢を起こしていました。火が十分通っていなかったため、鶏肉の中にカンピロバクターが生き残っており、それによる食中毒がギラン・バレー症候群につながったと考えられます。

カンピロバクター
カンピロバクター(写真提供 東京都健康安全研究センター)

治療・リハビリで回復

ギラン・バレー症候群の治療としては、過剰な免疫の働きを抑える免疫グロブリン大量点滴、もしくは人工透析の装置を使って血液中の有害物質を取り除く血しょう浄化療法が選択される場合もあります。多くの場合、リハビリを含めて、3か月から1年ほどで回復します。

Aさんも1年ほどで回復し、現在は支障なく日常生活を送っています。その後、鶏肉を料理するときには念入りに加熱調理し、家族と自分の健康を守っているということです。