ロボット支援手術の保険適用、費用、内視鏡手術との比較

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前立腺がん肺がん胃がん腹痛せきがでる不正性器出血がある胃・腸・食道胸・心臓子宮・卵巣

ロボット支援手術の保険適用が広がった

手術支援ロボット

ロボット支援手術は、医師がロボットを操作して手術を行います。正式名は「ロボット支援下内視鏡手術」といい、内視鏡手術の1つです。以前は、ロボット支援手術が健康保険の適用となるのは、前立腺がんと腎臓がんに限られていましたが、2018年4月から新たに10の病気にも保険が適用されることになり、2022年4月にも保険適用が広がりました。

ロボット支援手術が保険適用となる病気

ロボット支援手術が健康保険の適用となるのは、前立腺がん腎臓がんに加えて、2018年4月から新たに胃がん食道がん、直腸がん、膀胱がん(ぼうこうがん)肺がん子宮体がん、縦隔悪性腫瘍の7つのがんと、子宮筋腫、心臓弁膜症、縦隔良性腫瘍に広がりました。(縦隔とは、左右の肺の間の空間で心臓や気管などがあるところで、特殊な腫瘍ができることがあります。)
さらに2020年4月からはすい臓がん、食道がんなどに、2022年4月からは結腸がんなどにも広がっています。

ロボット支援手術を保険適用で受けられる病気は、腹くう鏡や胸くう鏡を用いる内視鏡手術の適応であることが前提となります。保険適用となる病気でも、内視鏡手術の適応でない場合はロボット支援手術を受けることはできません。

ロボット支援手術の費用

ロボット支援手術の費用

ロボット支援手術は、保険適用されていなかった病気の場合、これまでは患者さん、または医療機関が医療費を全額負担する自由診療で行われてきました。その治療実績をもとに、厚生労働省に正式に安全性を認められたため、保険適用となりました。
保険適用でロボット支援手術を受ける場合、患者さんが負担する費用は大幅に下がり、通常の内視鏡手術と同額になります。

たとえば胃がんに対するロボット支援手術の場合、自由診療のときの患者さんが負担する費用は200万円ほどでしたが、保険適用による3割負担なら50~60万円程度まで減ります。また、収入などにもよりますが、高額療養費制度を利用すれば、患者さんが負担する費用はさらに10万円前後まで下がります。

ロボット支援手術を希望する場合

ロボット支援手術を希望する場合

ロボット支援手術を希望する場合、まず担当医などに相談して、自分のケースがロボット支援手術の対象となるかを確認してください。ロボット支援手術を行っている医療機関については、各施設のホームページや問い合わせで確認することができますが、健康保険で受けられることを必ず確認してください。

ロボット支援手術を保険適用で行える医療機関は、厚生労働省が定める施設基準を満たしていなければなりません。その医療機関で、ロボット支援手術だけでなく、通常の内視鏡手術、また開腹手術や開胸手術も十分行っていることも条件となっています。

安全のためには、ロボット支援手術を含めたさまざまな手術から適切な方法を選択できる医療機関で手術を受けることが重要です。患者さんは、主治医に、自分が受けられる手術と、それぞれの手術の長所や短所など特徴について詳しく説明を受けたうえで選択することが大切です。

ロボット支援手術と従来の内視鏡手術の比較

内視鏡手術

内視鏡手術は、おなかや胸にあけた小さな孔(あな)から内視鏡カメラや手術器具を入れて行う手術で、開腹・開胸手術に比べて傷口が小さくてすみます。このため、手術後の痛みが少なく、また、手術後すぐに歩けるので、血液の塊である血栓ができにくく、感染症を起こすリスクが低いという長所があります。

ただし、従来の内視鏡手術は、手術器具を直線的にしか動かせないため細かい作業がしにくく、また、内視鏡カメラの映像が平面的で立体感がないため、非常に高い技術力が必要になります。こうした弱点を改善したのがロボット支援手術です。

ロボット支援手術

ロボット支援手術
サージョンコンソールでロボットを操作する医師

ロボット支援手術が通常の内視鏡手術と異なるのは、内視鏡カメラや手術器具を持つのが、人の手ではなくロボットのアームであることです。このアームは、数メートル離れた操縦席(サージョンコンソール)で医師がコントローラーを操作して動かします。

ロボットのアームや内視鏡カメラには医師の操作を助けるさまざまな機能があり、人の手で行うよりも精密で安全性の高い手術が行いやすくなります。その分、難しい手術が行いやすく、合併症の危険性も減ると考えられます。開腹手術や開胸手術、通常の内視鏡手術に比べて、医師が早く習熟できるという利点もあります。

手術器具
ロボット支援手術の映像 ロボットアームにつけられた手術器具

アームの高度な関節機能

ロボットアームには高度な関節機能があり、医師の手元の動きがそのままアームの先端に伝わります。アームの先端を曲げたり伸ばしたり回転させたりと、自由に動かすことができるため、狭いおなかや胸の中で細かい作業を行いやすくなります。

手ぶれ防止機能

デジタルカメラと同じような手ぶれ防止機能も備えています。手術では非常に細かい作業を行うため、器具を持つ医師の手が震えてしまうことがあるのですが、ロボット支援手術の場合はコントローラーを動かす医師の手元が震えても、手ぶれ防止機能が働きロボットアームにつけた器具は震えません。

手の動きを縮小する機能

医師の手元の動きを縮小してアームに伝える機能もあります。たとえば、縮小比率を5対1に設定した場合、医師が1cm動かすと、アームの先端が動くのは2mmになります。そのため、繊細な作業も行いやすくなります。

三次元立体映像の内視鏡カメラ

ロボット支援手術の内視鏡カメラは、フルハイビジョンの高画質で三次元立体画像を映し出します。おなかや胸の中を立体的に見ることができるため、臓器や血管の入り組んだ様子がよくわかり、手術を行いやすくなります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年7月 号に掲載されています。

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