変形性肩関節症の手術と術後のケア(関節鏡下手術と人工関節手術)

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変形性肩関節症肩・首が痛い首・肩

手術には2つの方法がある

薬物療法や運動療法といった保存療法でも痛みが治まらない場合や、夜間に痛くて眠れないような場合には、手術を検討します。ただ、症状が進行し過ぎたり、骨の量が減ってしまったりすると手術も非常に困難になるため、我慢せず早めに医師に相談することが大切です。
手術には、関節鏡下手術と人工関節を用いる手術の2つの方法があります。

変形が軽い場合に行う関節鏡下手術

関節鏡下手術は、肩の関節内に内視鏡と手術器具を挿入して、関節内の炎症を起こしている組織や骨・軟骨のかけらを取り除きます。この方法は、骨や軟骨の変形を治す手術ではないため、痛みを軽減するための手術として、変形が軽い患者さんに対して行われます。

変形した関節を置き換える「人工関節手術」

人工関節手術は変形した関節を人工関節に置き換える手術で、大きく分けて人工骨頭置換術人工肩関節全置換術の2種類があります。人工骨頭置換術は、上腕骨の変形は進んでいて、肩甲骨の変形がほとんどない人に行われます。上腕部の骨頭だけを人工の骨頭に置き換えます。
人工肩関節全置換術は、肩甲骨もかなり変形している人に行われ、上腕骨の骨頭と肩甲骨の受け皿を人工肩関節に交換する手術です。
手術によって、どれくらい改善するかは、ひとりひとりの症状が異なるため、個人差があります。人工骨頭も人工肩関節全置換術でも、痛みは比較的よく取れますが、手術後の動きについては、手術前の状態、特に腱板の状態によって左右されます。

新しい人工肩関節全置換術「リバース型人工肩関節」

最近、人工肩関節全置換術で注目を集めているのが、新しい人工肩関節「リバース型人工肩関節」です。
リバース型人工肩関節は、フランスでは1980年代後半から使われていましたが、日本では2014年4月に認可を受けました。従来の人工肩関節では対応できなかった症例に使うことができます。
リバース型人工肩関節の"リバース"は、"逆転"とか"反対"という意味ですが、これは、従来の人工肩関節と比べて骨頭と受け皿が逆さまになっているためにこう呼ばれます。
位置が逆になるだけでなく、従来の人工関節に比べ、上腕骨が下の位置になって三角筋が伸ばされ、さらに骨頭の中心が内側にくることで、より三角筋が効果的に働きますので、腱板がなくても三角筋だけで腕を上げられます。そのため、修復できない腱板断裂を伴うような変形性肩関節症でも、人工関節を使うことができるようになりました。

リバース型人工肩関節置換術 こんな人は注意

リバース型人工肩関節置換術の適応

リバース型人工肩関節置換術は、65歳以上で腱板断裂がある変形性肩関節症の人が受けられる手術です。ただ、多くの高齢の人は、腱板が傷んでいたり変性が起こっており、腱板が少しでも傷んでいると腱板断裂が進行する可能性が高いため、リバース型で手術をすることが多くなります。
リバース型人工肩関節は、三角筋などを利用することで、腕を上げやすくする仕組みになっています。そのため、三角筋がまひしている人、三角筋の筋力がかなり低下している人、けい椎や首の病気がある人などは、リバース型人工肩関節置換術を行っても、肩が思うようには上がりません。また、骨粗しょう症の人で骨がとても弱くなっている人は、医師と相談して慎重に検討してください。

手術後のケア

手術後は、手で体重を支えたり、後ろにまわしたりなど、肩に負担がかかる動きは医師の許可が下りるまでは行ってはいけません
病院や患者さんにもよりますが、1週間から2週間ほど入院します。手術後の運動療法の開始時期も病院や患者さんによりますが、2日から1か月後くらいで始めます。手術後に行うリハビリは、従来の人工関節に比べると、リバース型人工肩関節のほうが簡単で楽に行うことができます。手術後経過もよく、すっかり痛みも取れて手が上げられるようになっても、人工関節が入っていますので、定期的に医療機関を受診して経過を観察してもらうことをおすすめします。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年8月 号に掲載されています。

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