詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年4月 号に掲載されています。

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本来、生理はそれほど痛みを伴うものではないため、生理のたびに強い痛みなどの症状が現れている場合、月経困難症と考えられます。月経困難症は子宮やその周辺の組織の異常で起こるものなので、月経困難症を治療せず、我慢していると、日常生活に支障を来すだけではなく、背景に潜んでいる別の病気を見逃してしまったり、不妊につながってしまったりする可能性があります。
生理痛は体の異常を知らせるサインでもあります。厚生労働省の調査によると、月経困難症の患者数は、推定800万人以上とされています。しかし、治療を受けている人はその10%程度にすぎません。
市販の鎮痛薬を使用して済ませている人も多いでしょう。鎮痛薬が効くことでその時の痛みを緩和することができたとしても、根本的な症状の緩和にはつながっていません。毎月症状があるということは、背景に何らかの病気が潜んでいる可能性があります。長いこと生理のたびに強い痛みなどの症状がある場合は、できるだけ早く病院に受診するようにしましょう。
月経困難症の主な症状は、生理期間中に起こるさまざまな症状です。主な症状は、下腹部の強い痛みや腰痛です。そのほか、おなかの張り、吐き気、頭痛、食欲不振、下痢、イライラ、抑うつなどの症状が起こることもあります。
月経困難症には、機能性月経困難症と、器質性月経困難症の2つのタイプがあります。
機能性月経困難症は、病気が原因ではなく、子宮の入り口が狭いことや、子宮内膜で作られるプロスタグランジンという物質の分泌が増えて、子宮や血管、腸管が過剰に収縮することによって、痛みなどの症状が引き起こされるタイプです。生理痛が起きるのは主に生理期間の1日目から2日目で、多くの場合、けいれん性の痛みで周期性があります。また10代後半から20代前半に多く、一般的に身体の成熟とともに症状は治まるとされていますが、生活に支障があれば治療が必要です。
器質性月経困難症は、子宮や卵巣の病気が原因で起こり、20代後半以降に多く、加齢とともに増加します。生理痛が持続性で、月経期間中に痛みがずっとあることも多くみられます。
器質性月経困難症の原因で多いとされている病気は、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫です。自然治癒することはなく、治療しないで我慢していると、原因となっている病気が進行してしまうため、原因に合った治療が必要になります。
子宮の内膜が月経周期に伴って、妊娠の準備のためにだんだんと厚くなっていきます。妊娠をしないとこの厚くなった子宮内膜が剥がれて、月経血として外に排出されていきます。
しかし、子宮内膜を含む月経血が外に排出されずに、逆流してしまうことがあります。逆流するとお腹の中や腹膜、臓器にくっついて増殖し、子宮内膜に似た組織ができあがり、そこで炎症起きて痛みが起こります。これが子宮内膜症です。
子宮内膜症が発症する場所は様々で、卵巣に子宮内膜症ができた場合は、将来的に卵巣がんの発症に繋がったり、不妊症になってしまったりする可能性があります。
「子宮内膜症」について詳しくみる子宮腺筋症は子宮内膜症と同じように、子宮の内膜に似た組織が子宮の壁の中に入り込んでしまう病気です。お産や流産をきっかにしてなることが多いです。
子宮筋腫は子宮の壁の中にできる良性の腫瘍のことです。良性の病気ですので命に関わることはありませんが、場所や大きさによって月経の量が飢える過多月経や不妊の原因になったりする病気です。
「子宮筋腫」について詳しくみる10代後半から20代後半に多い機能性月経困難症は、身体の成熟とともに自然治癒することが多いのですが、日常生活に支障を来していれば治療を行うことが必要です。痛みが強い場合は、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬を用いてやわらげます。必要に応じて、漢方薬や子宮収縮抑制薬、精神安定薬を使用する場合があります。
これらの治療で症状が治らない場合は、低用量経口避妊薬というホルモン療法を行います。
器質性月経困難症の場合は、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気が原因で症状が起こっているため、治療しないでいると、原因となっている病気が進行してしまいます。そのため、原因となっている病気に合った治療を行うことが必要です。
まず、背景の病気の種類に関係なく、鎮痛薬や漢方薬などで、痛みなどの症状をやわらげます。症状が十分に改善されない場合は、低用量経口避妊薬(EP配合剤)や黄体ホルモン製剤を使います。より重症でこれらの薬が効かない場合は、生理を止める働きがあるGnRHアゴニストを使うことを検討する場合もあります。これらの薬自体が、原因となっている病気の進行を抑える治療にもなります。
進行具合によっては、それぞれの病気に合った手術を検討することもあります。手術を検討する場合は、将来の妊娠や出産を考慮し、慎重に選択する必要があります。
機能性月経困難症と診断された患者さんの約70%が子宮内膜症を発症していることが、海外の調査でわかりました。子宮内膜症は20代後半から発症することが多いと言われていますが、10代後半から20代前半に初期の子宮内膜症を発症している場合もあることがこの調査で報告されています。
初期の子宮内膜症は、超音波検査やMRI検査などの画像検査で発見することはできません。そのため、日本でも、実際には子宮内膜症による器質性月経困難症なのに、機能性月経困難症と診断されている人が多いと考えられます。
出産経験がなく、20代後半まで、生理中の痛みを鎮痛薬だけで対処していると、気づかないうちに子宮内膜症が進行し、将来不妊につながる可能性も指摘されています。
強い生理痛などの症状が、年々重くなるなど、若い女性で子宮内膜症が疑われる場合は、低用量経口避妊薬(EP配合剤)を中心としたホルモン療法を行います。低用量経口避妊薬を使うことで、子宮内膜症の進行を抑え、将来妊娠しやすい体を保つことができます。思春期の女性が低用量経口避妊薬を使用しても、体への影響は心配ありません。
また、連続して服用することで、生理を3~4か月に1度にコントロールすることが可能な薬も登場しています。重い副作用は報告されていません。妊娠を希望することになった場合は、薬を中止すれば妊娠可能です。
月経困難症は将来の妊娠する力が落ちしてしまう可能性がありますので、早めに適切な対応することが必要です。最近では出産する年齢が高くなってきていて、30歳代になるまでに妊娠をしない方も多いです。妊娠を望んだ時に妊娠できる力をキープするということを考えて、症状がある場合はすみやかに治療を開始することが大切です。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年4月 号に掲載されています。