そのめまい危険かも?メニエール病の症状チェック、原因や治療法は

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メニエール病突発性難聴耳がおかしいめまいがする脳・神経

メニエール病とは

メニエール病の特徴

メニエール病の特徴

メニエール病は回転性のめまいが10分間〜数時間続き、何度も繰り返すのが特徴です。数年にわたってめまいが続く人もいます。また、多くの人は難聴・耳鳴り・耳閉感(耳が詰まった感じ)を伴います。難聴は低音から聞きづらくなり、初期には聴力の低下に気づかないこともあります。

19世紀にフランス人医師であるメニエールが報告したことから、メニエール病と名付けられました。

メニエール病にかかりやすい人

メニエール病にかかりやすい人

メニエール病は、40〜60代が発症しやすく、女性に多いとされています。また、責任感が強く、きちょうめんな性格の人がなりやすいと言われています。

メニエール病の原因とメカニズム

メニエール病の原因とメカニズム

メニエール病の原因は、内耳にある三半規管と蝸牛(かぎゅう)を満たす内リンパ液が増えすぎることが関係していると考えられています。

内耳には、体のバランスをとる三半規管や耳石器、音を感じ取る蝸牛などがあり、これらは内リンパ液という液体で満たされています。この内リンパ液が増えすぎると、三半規管の働きが障害されてめまいが起きます。また蝸牛にも影響して難聴や耳鳴りが起こります。

メニエール病と突発性難聴

メニエール病と突発性難聴の違い

メニエール病は突発性難聴と症状が似ており、その見極めが難しい病気です。メニエール病の場合、10分〜数時間ほどのめまいがありますが、突発性難聴の場合はめまいがある場合と全くない場合に分けられます。

また、メニエール病はめまいと難聴の発作が繰り返し発生するのに対し、突発性難聴は繰り返しません。メニエール病は低音から聞こえづらくなりますが、突発性難聴は突然の強い難聴に見舞われるのが特徴です。
きっかけは共通しており、ストレスや疲労などによって発症します。

メニエール病の検査

メニエール病の検査

メニエール病が疑われる場合には、「難聴の程度」「目の動き」「体のバランス」「内耳の水ぶくれの状態」などを確認します。

難聴の程度

ヘッドホンから流れるさまざまな周波数の音を聞いて、難聴の程度を調べます。メニエール病では、低い音が聞こえにくいのが特徴です。

目の動き

フレンツェルめがね

内耳に障害があると、眼振という眼球の異常な動きが起こります。フレンツェルめがねという特殊なめがねをかけた患者さんの頭を医師が動かして、眼振が生じるかどうかを確認します。

体のバランス

目を閉じた状態で、両手を前に伸ばし、その場で50〜100歩足踏みをします。内耳に異常があるとその場に留まるのが難しくなります。どれくらい動いたかで、バランス感覚(平衡感覚)の状態を確認します。ただし、めまいがひどい場合に行うと危険なので自己判断で行わないでください。

内耳の水ぶくれの状態

MRI検査画像

MRIなどの画像検査で内耳の画像を撮影し、リンパ液(内リンパ)がどこに、どの程度たまっているかを調べます。蝸牛の水ぶくれが大きいと聞こえに関係する症状が生じやすく、めまいは起こりにくくなります。三半規管の水ぶくれが大きいと、めまいが起こりやすく、聞こえに関係する症状は生じにくくなります。

メニエール病の治療

メニエール病対策4か条

治療の基本は生活習慣の改善です。多くの場合、それだけで症状が和らぎ、めまいを予防することができます。メニエール病対策4か条で症状をコントロールします。

  • ストレスコントロール
    ストレスの原因を突き止めて、それを取り除くことが大切です。また、十分な睡眠をとって疲れをためないことや、積極的に気分転換をしてストレスを解消するのが効果的です。
  • 塩分をとりすぎない
    塩分の摂取量が多いと、体内の塩分濃度を調整しようとして体内に水がたまりやすくなります。減塩を心がけましょう。
  • 適度な水分補給
    内耳が水ぶくれのような状態になるのが原因なので、水分の補給を控えたほうがよいと思われがちですが、体内の水分が減ると、体が体内の水分を保とうとして、かえって水分が排出されにくくなります。水分は適度に補給するようにしましょう。カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶は控え、塩分を含まない水や麦茶がお勧めです。
  • 適度な運動
    適度な運動は、ストレスの解消だけでなく、耳の血液の流れを改善して症状を和らげることにつながります。特にウォーキングなどの有酸素運動が効果的とされ、好きなスポーツに打ち込むことで症状が改善したケースもあります。

メニエール病 薬による治療

メニエール病 主な薬

いずれものみ薬です。

  • 利尿薬・・・尿の量を増やして水分の排出を促します。
  • 循環改善薬・・・耳の血液の流れを改善して症状を和らげます。
  • ステロイド薬・・・めまいの症状が強い場合や聴力が急激に低下した場合は、内耳の水ぶくれを軽減したり、耳の機能を改善させるために使います。
  • 漢方薬・・・体内の水分の代謝のバランスを調整し、めまいの症状を和らげる効果が期待できる、五苓散(ごれいさん)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、柴苓湯(さいれいとう)を使うこともあります。

薬で改善しない場合

生活習慣の改善や薬による治療を行っても改善しない場合、次のような治療も検討されます。

中耳加圧療法

耳の中にチューブを挿入し、チューブの先端から空気の振動を送り、中耳に圧力を加える治療法です。中耳に圧力を加えることで、内リンパの循環が促されると考えられています。医師の指導の下、1日2回、自分で行います。6〜7割の人に効果があるとされています。2019年に健康保険が適用になりました。

耳の中にチューブを挿入する。

耳の中にチューブを挿入する。

空気の振動を送って圧力を加える

空気の振動を送って圧力を加える。

リンパ液の循環を促す

リンパ液の循環を促す。

鼓室内(こしつない)薬液注入法

鼓室内(こしつない)薬液注入法

中耳にある鼓室という空間にゲンタマイシンという抗菌薬を注入する治療法です。三半規管の過剰な働きを抑えて、めまいが起こるのを防ぎます。耳の聞こえが悪くなることがあるため、すでに難聴が進行した人に検討されることが多い治療法です。このほかステロイド薬を注入する方法もあります。

内リンパ嚢(のう)開放術

内リンパ嚢(のう)開放術

内耳にある内リンパ嚢という袋状の器官を切開し、余分な内リンパを排出する手術です。手術は2時間ほどで終わりますが、全身麻酔をして行うので手術後に1週間ほど入院が必要です。

突発性難聴の治療は早く!

突発性難聴の場合は早い時期に治療することが原則です。少なくとも2週間以内には治療を開始する必要があります。1か月以上経過した場合、難聴の治りが悪くなったり、難聴が続いてしまう可能性があります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年5月 号に掲載されています。

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