不可能に挑む!心臓の次世代再生医療

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日本人の死因2位となっている心臓病。年間20万人が亡くなっています。現在の医療では治療が難しいとされているこの心臓病の治療に大きな効果を上げるのではないかと期待されている、ある"メッセージ物質"があります。

日本人の死因第一位が がん 第二位が心臓病。心臓病だけで、年間20万人の方が亡くなる。

心臓のやっかいな特徴

心臓病のなかで代表的なのが、心筋梗塞です。肥満や高血圧などの生活習慣の乱れから、血液がうまく流れなくなることで発症します。ある日突然私たちを襲うこともある恐ろしい病気です。血管が詰まってしまうと、心臓を支える心筋細胞に栄養や酸素が送られなくなり、またたく間に死滅していきます。

運よく一命をとりとめても、心臓を元通りまで治すのは困難です。それは実は心臓には他の臓器とは異なる、やっかいな特徴があるからです。皮膚や骨など、私たちの体の中の臓器の多くは古い細胞が新しい細胞に入れ替わり、新陳代謝しながら活動しています。しかし、心臓はそのペースが極めて遅く、50年かけても3割ほどしか細胞が入れ替わらないとされています。そのため、傷ついた心臓はなかなか元通りにはならないのです。

心筋梗塞をおこした心臓は、元通りになることはほぼない。それは心臓が半世紀をかけてもわずか3割ほどしか細胞の新陳代謝をおこさないという性質をもっているからだ。他の多くの臓器はもっと短い周期で細胞が分裂し、新しい細胞に入れ替わる。
CG 心筋梗塞をおこした心臓は、元通りになることはほぼない。他の多くの臓器はもっと短い周期で細胞が分裂し、新しい細胞に入れ替わる。

心臓治療の不可能への挑戦

どうにかして心臓の細胞を新しく作り出すことができないか。この難題に"メッセージ物質"の力で立ち向かおうとしているのが、アメリカ・ロサンゼルスにあるシーダーズ・サイナイ病院心臓血管研究所所長のエデュアルド・マラバンさんです。マラバンさんは研究を続けた結果、心臓の中にごくわずかですが、細胞を再生させる"メッセージ物質"が潜んでいることを突き止めました。それが、様々な"メッセージ物質"が詰まったカプセル「エクソソーム」。この中に、心臓の細胞を再生させたり、既存の心筋細胞を太くしたり、炎症を抑えたりする効果があることがわかったのです。

しかし、従来はこのエクソソームの数が少ないため、心臓はゆっくりとしたペースでしか再生する力がありません。そこで、マラバンさんはエクソソームを人工的に増やして病気になった心臓へ投与すれば、失われた細胞を急速に蘇らせることができると考えました。

実際にマウスを使った実験によると、大きな成果が確認されています。心筋梗塞を起こしたマウスは心筋細胞が死に、壁が薄くなっています。しかし、エクソソームを投入したマウスでは増えるはずのなかった細胞が増殖し、みるみる壁が厚くなったのです。マラバンさんは今、1年以内のヒトでの臨床試験の開始を目指して、急ピッチで研究を進めています。

"メッセージ物質"を使った再生医療の可能性

心臓の再生医療は現在、様々な研究が続いています。日本では山中伸弥さんのiPS細胞を使って心筋細胞をシート状に作り、患者の心臓に貼って再生を促す「心筋シート」と呼ばれる治療法も注目されています。一方マラバンさんのエクソソームを使った治療は、こうした方法とは大きく異なります。それは"メッセージ物質"だけを使うことにより、手術や移植といったことをせずに心臓の再生を目指していることです。

シーダーズ・サイナイ病院心臓血管研究所所長のエデュアルド・マラバンさんは、心臓の細胞を培養してエクソソームを取りだし、治療に応用する研究を行っている。

この記事は以下の番組から作成しています

  • NHKスペシャル 放送
    NHKスペシャル「人体」第7集 “健康長寿”究極の挑戦

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