私たちの体の中にはたくさんの「臓器」があり、1つ1つの臓器は、さまざまな種類の「細胞」から構成されています。たとえば「胃」という臓器1つとっても、胃酸を出す細胞、胃壁を保護する粘液を出す細胞、胃を動かす筋肉の細胞、血管の細胞・・・などなど、多くの細胞がいます。こうした多彩な細胞たちがいるからこそ、臓器は役割を果たすことができ、私たちの体は成り立っているのです。全身にいる細胞は200種類以上といわれています。

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私たちの体の中にはたくさんの「臓器」があり、1つ1つの臓器は、さまざまな種類の「細胞」から構成されています。たとえば「胃」という臓器1つとっても、胃酸を出す細胞、胃壁を保護する粘液を出す細胞、胃を動かす筋肉の細胞、血管の細胞・・・などなど、多くの細胞がいます。こうした多彩な細胞たちがいるからこそ、臓器は役割を果たすことができ、私たちの体は成り立っているのです。全身にいる細胞は200種類以上といわれています。
生命誕生の過程では、たった1つの細胞(=受精卵)が分裂を繰り返していくうちに、いつの間にか数多くの種類に分かれ(分化)、ひとりでに臓器を形作っていきます。いったいどうやったら、そんなことができるのか?生命誕生の最も神秘的な部分ともいえます。
その謎を解くカギが、細胞同士が情報をやりとりする"メッセージ物質"の働きにあることが最新の研究でわかってきました。NHKスペシャル「人体」第6集には、心臓を作るメッセージ物質として「WNT(ウイント)」、肝臓を作るメッセージ物質として「FGF(エフジーエフ)」が登場しました。
しかし、これらの"メッセージ物質"が1つだけで心臓や肝臓が作れるわけではありません。臓器を完成させるまでには、数多くの"メッセージ物質"が関係します。しかも、物質の組み合わせが少し違ったり、タイミングがちょっとズレたりするだけでも、細胞がまったく別の種類に変化してしまい、臓器を作れなくなることもわかってきました。細胞同士のメッセージのやりとりは非常に精密なものなのです。
こうした仕組みがわかってきたのは、ヒトのiPS細胞やES細胞を使った研究のおかげです。これらの細胞は受精卵に近い性質を持っており、さまざまな細胞に分かれていく(分化していく)ようすをシャーレの上で実験して調べることができるからです。いま世界中の科学者たちが、iPS細胞やES細胞に"メッセージ物質"を人工的に与えて、さまざまな臓器に導く方法を探っています。臓器を作る仕組みは非常に複雑で、まだまだわからない部分も多く残っていますが、"メッセージ物質"に注目することで謎がどんどん解き明かされはじめているのです。