メディカルジャーナル 「病気を治して子どもを産みたい」

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がん治療の妊娠・出産への影響

がん治療の妊娠・出産への影響

一般的に、卵巣の機能は年齢を増すごとに低下し、卵子の数も減っていきます。そして平均的には、50歳すぎに閉経を迎えます。しかし、がん治療を行うと、一部の抗がん剤や放射線治療の影響によって、若い女性でも閉経と同じ状態となってしまう場合があります。このように、治療の副作用によって卵巣の機能が著しく低下し、閉経状態になることを、早発閉経(早期卵巣機能不全)といいます。特に、乳がんや白血病、悪性リンパ腫などの治療で使われる「アルキル化剤」という抗がん剤が、卵巣への影響が最も強いといわれています。しかし、がん治療では、抗がん剤を使ったり放射線治療を行うことが必要不可欠な場合があります。がんの治療と妊娠・出産を両立させる可能性がある最新医療として、卵子などの凍結保存が注目されています。日本生殖医学会は、2013年に「ガイドライン」を、日本産科婦人科学会は、2014年に「見解」を発表して、ともに医学的な理由による卵子の凍結保存を認めています。

卵子の凍結保存

卵子の凍結保存

凍結保存の方法には、「未受精卵子」「受精卵」「卵巣組織」の3つがあります。
「未授精卵子」を凍結保存する場合は、細長い針を卵巣にさして卵子を採取し、凍結保存します。治療が終わり病気を克服したのちに体外受精させ、体内に戻します。「受精卵」の場合は、体外受精させた受精卵を凍結保存し、治療後に溶かして体内に移植します。「卵巣組織」の場合は、がんの治療の前に腹腔鏡手術によって原則、片側の卵巣を摘出し、一定の大きさの組織に切り組織片を凍結保存します。治療後に卵巣組織をとかして体内のもう一つの卵巣に移植すると、卵巣の機能が回復して再び排卵が起こるようになり、自然妊娠したり、人工授精できるようになります。
どの方法を選ぶかは、患者さんの状態や、それぞれのメリット、デメリットを考慮して決められます。卵子の場合は、保存できる数が少なく、凍らせるときにダメージがあるため、妊娠して子どもが産まれる確率は高くありません。受精卵の場合も、数は多くありませんが、凍らせる時のダメージが卵子より少ないので、妊娠・出産の確率は比較的高くなると言われています。しかし、この2つの方法は、排卵を待たなければならないため時間がかかる場合があり、治療をすぐに開始しなければならない場合には勧められません。卵巣組織の場合は凍結までの日数が数日で済み、組織の中に卵子も多く入っているため、妊娠・出産につながる確率が高いのではないかと期待されています。しかし、まだ研究の歴史が浅いため、実例が少ないというのが現状です。また、進行したがんや白血病、卵巣がんの場合は、卵巣へ転移している可能性があるため、卵巣組織の凍結は勧められません。どの方法が適しているかは、主治医とよく相談することが大切です。
医学的な適応による卵子や卵巣組織の凍結保存を実施している施設は、日本では、2015年3月現在20か所あります。実施している医療機関は、「日本産科婦人科学会のホームページ」の「登録施設一覧」で調べることができます。

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子宮・卵巣