過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の原因
鳥由来のたんぱく質

羽毛に付着している微細なたんぱく質「ブルーム」や鳥のふんが原因です。羽毛製品を使う冬に症状が現れやすいです。
加湿器やエアコンのカビや細菌

フィルターや水のタンクで繁殖するカビや細菌が原因です。コロナ禍で在宅時間が増え、加湿器やエアコンの使用頻度が高まったため、これが原因の肺炎が増加していると考えられます。
トリコスポロン 白いカビ

画像:東京医科歯科大学 教授 宮崎泰成
「トリコスポロン」は、高温多湿な浴室や脱衣所、結露ができる窓際などで木材に発生する白いカビです。
トリコスポロンが原因の肺炎は、カビの胞子が飛ぶ夏に発症しやすいのが特徴です。
トリコスポロンは古い木造家屋にできやすく、キッチンの流しの周辺、洗面所や洗濯機置き場、北側の押入れや畳なども要注意です。また最近のマンションは気密性が高いため、室内の湿度が下がりにくく、カビが繁殖しやすい環境になっているので注意が必要です。

そのほかにも牧草につく細菌、塗料に含まれる化学物質、きのこの胞子など、およそ100〜200種類の原因物質が関係すると言われています。

呼吸するとき、吸い込んだ空気は気管と気管支を通り、さらに枝分かれして最も細い細気管支に入ります。その先に小さな袋状の「肺胞」があり、そこで酸素と二酸化炭素のガス交換が行われています。
ブルームやカビを吸い込むと、非常に小さいので、細気管支や肺胞まで入りこみます。それが繰り返されると、アレルギー反応が起こることがあります。つまり、ブルームやカビを異物とみなしたためにリンパ球が増加し、その結果、自分の細気管支や肺胞を攻撃してしまい、肺に炎症が起こるのです。これが過敏性肺炎です。
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の症状

肺胞に炎症が起こるとガス交換が十分に行えないため、息切れが起こるようになります。また、全身のアレルギー反応として、せきや発熱といった症状も現れます。
過敏性肺炎には、痰(たん)がほとんど出ないという特徴もあります。細菌などの感染で起こる一般的な肺炎は、それらの増殖に反応して白血球が集まり、その結果として細菌などをからめとろうとして痰ができます。しかし、過敏性肺炎は、感染ではなく、少量の異物に対するアレルギーで起こるため、白血球が反応せず痰ができないのです。
原因物質の吸引を長期間繰り返していると、肺胞の線維化が起こりやすくなります。炎症が続いた結果、肺胞がしなやかさを失い、硬くなってしまうのです。そうなると、線維化した部分ではガス交換ができなくなるため、呼吸困難を起こしやすくなります。また、肺の組織は一度壊れると元には戻らないため、回復させることが難しくなります。
肺炎が6か月以上続くと、「慢性過敏性肺炎」とされ、危険性が高くなります。中には急激に悪化して呼吸ができなくなることがあり、その場合は半数近くの人が亡くなると考えられています。また、さまざまな研究により、慢性過敏性肺炎の患者さんの10%程度に肺がんが発症すると考えられています。
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の原因物質はさまざま
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)を起こす原因物質はさまざまです。鳥のフンや羽毛についているブルームで起こるものを「鳥関連過敏性肺炎」と言います。浴室の木の部分など、室内の湿気多い場所に夏に生えやすい白カビ「トリコスポロン」で起こるものを「夏型過敏性肺炎」と言います。

ただし、原因物質に接している人が、すべて過敏性肺炎になるわけではないため、過剰に心配する必要はありません。吸い込みやすい極めて小さな原因物質と接していて、その物質に対して過敏な体質があり、そしてその物質を吸い込む頻度が高い場合に、過敏性肺炎を発症すると考えられています。
よく、アトピーやぜんそく、花粉症などを起こす人をアレルギー体質と言いますが、過敏性肺炎はそうした病気とはまったく別のアレルギーのため、アレルギー体質の人が起こしやすいわけではありません。
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)セルフチェック
2週間以上せきが続き、加えてほかの項目に当てはまるものが多いほど、過敏性肺炎の可能性が高くなります。

- 毎年同じ季節に 2週間以上せきが出る
+(加えて)
- 羽毛布団やダウンジャケットなどの羽毛製品を使う
- 浴室など 水回りに白カビが生えている
- 家の掃除をあまりしていない
- 旅行や出張などで家や職場を数日間離れると症状が軽減、もしくは出ない
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)主な検査

過敏性肺炎が疑われる場合に行われる検査が、画像検査と血液での抗体検査です。
- 画像検査
胸部エックス線検査やCT検査による画像で、肺炎の炎症による特有な影の広がりの有無を調べます。影は肺全体にすりガラスのように現れます。 - 抗体検査
羽毛に付着している「ブルーム」や浴室や窓際などの木材に生える「トリコスポロン」などのアレルギーの原因となる物質(抗原)に対する抗体の有無を調べます。 - 抗原回避試験
さらに、原因物質が生活環境のなかにあるか確認するため「抗原回避試験」を行うこともあります。2週間程度入院して環境を変えることで、肺活量や血液検査の数値が改善すれば、過敏性肺炎と診断できます。
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の自分でできる対策


過敏性肺炎の対策の基本は、アレルギーの原因物質を吸い込まないことです。
鳥関連過敏性肺炎であれば、羽毛製品の使用や鳥の飼育をやめ、駅や公園などの野鳥や鳥のフンもできるだけ避けます。また、冬の満員電車などはダウンジャケットを着ている人が多いので、注意が必要です。そうした状況を避けられない場合は、N95という規格の防塵(ぼうじん)マスクを使うことがすすめられます。
夏型過敏性肺炎の場合は、風呂場など湿気の多い場所の排水や換気を改善したり、カビが生えやすい腐った木材を除去したりします。自宅のリフォームがすすめられる場合や、それが無理な場合は引っ越しが必要になることケースもあります。加湿器やエアコンが原因であれば、清潔に保つようにします。加湿器は細菌やカビが繁殖しにくい加熱式を選び、まめに水の交換と掃除を行うようにします。
牧草の細菌、塗料、きのこの胞子などに日ごろ接する頻度が高ければ、接する際に防塵マスクを使用します。
過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の治療
軽度
治療の基本は、原因物質を避けることです。軽度でも入院することになります。症状に合わせて、炎症を抑えるステロイド薬による治療を行います。
中等度

ステロイド薬ののみ薬を短期間服用して炎症を抑えます。呼吸困難がある場合、3日間集中的に多量のステロイド薬を点滴で投与します(ステロイドパルス療法)。そのあと、のみ薬のステロイド薬の服用を続けます。
慢性・重症

ステロイド薬や免疫抑制薬、抗線維化薬を使って治療します。呼吸困難が続く場合、退院後も機器を使って酸素を吸入する在宅酸素療法を行うこともあります。
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