自然気胸とは

自然気胸とは、何らかの原因で突然肺に穴があいて空気が漏れ、その空気の圧力で肺が縮んでしまう状態のことをいいます。いくら息を吸っても肺が十分には機能しないため、酸素が足りなくなり、息苦しさを感じます。いったん起きると、再発の可能性が非常に高い病気です。
肺に穴があく原因とは
肺に穴があいてしまう気胸。その原因はさまざまです。事故などで、肋骨が折れて肺にささって穴があく場合もあります。自然気胸の場合は、肺の胸膜のすぐ内側にできたのう胞の破裂によって、肺に穴があくと考えられています。
のう胞とは
肺の中には、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う肺胞という袋のようなものがたくさんあります。この肺胞の壁が壊れて隣の肺胞とくっつき、風船状に膨らんだものがのう胞です。この状態では、通常の肺胞と同じように働くことはできないため、のう胞が増えると肺の機能低下につながります。
のう胞は、大気汚染や喫煙など、様々な要因によって肺にできると考えられています。
のう胞が肺の内側にできた場合は、破裂の危険はあまりありませんが、肺の表面近くにできた場合は、破裂すれば肺に穴を開けてしまう危険があります。
どのような時にのう胞が破れてしまうのか
のう胞は、どのようなタイミングで破れてしまうのか、実際のところ詳しくわかっていません。激しい運動をしている時などに限らず、テレビを見てくつろいでいるときや、机に向かって仕事している時など、普通に日常生活を送っている時に突如破れて気胸が起こり、息苦しさをもたらすこともあります。夜寝ている時にのう胞が破れ、息苦しさで目を覚ますということもあるのです。
肺にのう胞があるかどうかの検査について
のう胞が1cmくらいの大きさになると、胸部のX線写真で確認することができます。さらに詳しく調べるには、胸部のCT写真をとると、どこにどういう形ののう胞がいくつあるか、どのように分布しているかなどが細かくわかります。
自然気胸になりやすい人
自然気胸になりやすいのは、以下のような人です。
- 喫煙者
- 中高年
- 長身で痩せ型の若い男性
- 子宮内膜症がある女性
たばこを長期間吸い続けると、肺胞に炎症が起こり、気管が細くなるため肺に穴があきやすくなります。
また、肺は年齢とともに徐々に衰えて脆くなっていくので、中高年の人はより注意しなければなりません。
さらに、自然気胸は15歳から25歳の若い男性でも多く見られることがあります。身長が伸びていく成長期で、肺の成長が体格の成長に追いつかず、肺に穴が開いてしまうのではないかと考えられます。
子宮内膜症の人も気胸になりやすいという特徴があります。一見関係がないようにも見える子宮内膜症と気胸ですが、子宮内膜の細胞が肺に運ばれて定着し、生理の時に出血して肺に穴があくというケースが見られます。
自然気胸の治療方法
胸腔ドレナージ術
軽度の自然気胸(肺の縮み方が小さい)の場合、1週間程度安静にしていると、肺にあいた穴が自然とふさがることが多いといわれています。
一方、肺の縮み方が大きい場合は、脇から管を入れて肺の周りに溢れた空気を吸い出す、胸腔ドレナージ術と呼ばれる治療が行われます。
カバーリング術
のう胞が多く、再発の危険性が高い場合は、特殊な繊維でできた網を、内視鏡を使って、のう胞が多い場所に被せる治療を行うことがあります。のう胞の発生は防げませんが、のう胞が破れにくくなるので再発防止になります。再発率を10%以下に抑えることができるといわれています。