アトピー性皮膚炎のAさんの例

漢方では、さまざまな病的状態を「証」として捉え、生体反応である「陰陽(いんよう)」や体を巡る要素である「気・血・水(き・けつ・すい)」を診ていきます。皮膚のトラブルの場合には、なかでも「血(血液とその働き)」の異常と「水(リンパ液など)」の異常が関わっていることが多いといえます。特に血の巡りの悪い「瘀血(おけつ)」、血の働きが弱い「血虚(けっきょ)」、水の巡りが悪い「水滞(すいたい)」が原因となりやすい特徴があります。

例えば、アトピー性皮膚炎で漢方を希望したAさんの場合は、皮膚症状以外に「イライラしやすい」「暑がり」などがみられ、さらにおへその下辺りにしこりが認められたため「陽証で瘀血」と診断され、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を開始しました。瘀血で陽証の場合の治療には桂枝茯苓丸が最も多く使われますが、ほかにも血を巡らせながら暑い熱を覚ます黄連解毒湯(おうれ んげどくとう)などが使われます。皮膚の乾燥が強い場合には、血虚を治す四物湯(しもつとう)などを併用します。