危険なヒートショック お風呂の事故を防ぐための入浴法

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ヒートショックと入浴時の事故

入浴と血圧の変化をあらわすグラフ

入浴中の死亡事故に注意

急激な温度変化によって、血圧が急に上昇したり下降したりして体が不調になることをヒートショックといいます。ヒートショックを起こすと心臓や血管に異常が発生して突然死する場合もあります。2015年の厚労省研究班の調査では、入浴中に亡くなった人は年間で1万9000人以上と推計され、その多くにヒートショックが関係していると考えられています。特に冬の寒い時期には注意が必要です。

急激な血圧の変化が事故につながる

脱衣所と浴室の室温10℃、お湯の温度41℃の条件で血圧の変化を調べたところ、脱衣所で裸になると収縮期血圧は約100mmHgから115mmHgに上がり、その後も上がり続けました。そして、お湯につかった直後に約140mmHgと最も高くなりました。その後、血管が温められて拡張することや、お湯の中では心臓の収縮・拡張が制限されることなどから、血圧は急激に低下します。浴室から出るために立ち上がると血圧はさらに下がり、お湯から出ると急激に上がります。
こうした、入浴時の温度変化などに伴う急激な血圧の変化が、脳や心臓に異常を起こし、事故につながります。

ヒートショックを防ぐには

ヒートショックを防ぐには?

浴室・脱衣所を暖める

入浴による事故を防ぐには、入浴前とお湯につかった直後の血圧の急上昇、入浴中の急下降の防止が重要です。入浴する前には、浴室・脱衣所を暖めておくようにしましょう。脱衣所や浴室を暖めておけば、「脱衣後」「お湯につかった直後」「お湯から出た直後」それぞれの血圧の急上昇を防ぐことができ、ヒートショックによる事故を予防できます。例えば、浴室の扉を開けて高い位置からシャワーでお湯張りをすると、浴室や脱衣所を暖めておくことができます。

浴槽に入る前にかけ湯をする

お湯に入る前には、かけ湯をしてから入りましょう。いきなりお湯に入ると急激な血圧上昇を招きます。

かけ湯の回数と血圧の変化

かけ湯を複数行うことで、血圧の上昇幅が小さくなっていることがわかります。
また、かけ湯をする際にも、急に心臓にお湯をかけてしまうと血圧に影響を与えてしまう可能性があります。手足など心臓から遠い部分から順に5回程度かけ湯をしてから入ると、血圧の変化が緩やかになり、心臓の負担も少なくなります。

熱いお湯は避ける

熱いお湯は急激に血圧を上げるだけでなく、急激に下げるといった影響をもたらすため2つの意味で危険です。

お湯の温度と血圧の変化

浴槽のお湯の温度は、体温に近いほど血圧の変化が小さくなります。
高齢者や高血圧、糖尿病を患っている方は動脈硬化が進んでいる可能性がありますので、血圧の変動も激しくなりやすいと考えられます。
熱いお湯は避け、夏は38℃程度、冬は40℃程度までの温度で入るようにしましょう。

ヒートショックを防ぐ安全な入浴法

心臓の負担が小さい半身浴

お湯をためる高さは、入浴した際みぞおちにあたるくらいがよいとされています。つまり、半身浴の高さがおすすめです。半身浴は心臓への負担が小さい安全な入浴方法です。

肩まで入浴の場合と半身浴の場合での血圧の下がり方の違い

肩まで浸かる入浴の場合、血圧の下がり方は20〜30mmHg程度であるのに対し、半身浴の場合は5〜20mmHgと変化が緩やかです。

より温まりたいときは追いだき・たし湯で温度を上げる

しばらく半身浴をした後に、より温まりたい場合は追いだきをしたり、たし湯をしたりしてお好みの温度に調節すると良いでしょう。
お湯につかる時間は合計10〜15分程度がよいとされます。長時間お湯につかっていると血圧が下がってしまいます。また、発汗によって血液が濃くなり、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなります。

居眠りや失神は危険

居眠りや失神によって溺れてしまう事故も発生しています。浴槽が広い場合には、体がすべり込まないように足元にストッパーを用意するとよいでしょう。
失神の危険な兆候として、めまいや動悸が現れることがありますので、その場合はためらわずにお湯の栓を抜いて、ご家族に助けを求めてください。
また、高齢者のご家族の方は、入浴時には10分おきに声をかけるとよいでしょう。

熱いお湯に入ると血栓ができやすくなる仕組みはこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    危ない!お風呂のヒートショック