無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)とは?症状と治療法、なりやすい人

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無症候性脳梗塞とは

無症候性脳梗塞は症状が見られない脳梗塞

無症候性脳梗塞とは

無症候性脳梗塞は、脳の細い血管が詰まって起こる病気で、脳梗塞の一つです。ラクナ梗塞とも呼ばれています。細い血管の中でも、比較的太い部分に動脈硬化が起こって詰まった場合には、脳梗塞の症状が出る場合がありますが、無症候性脳梗塞は、先の細い部分が詰まるため、脳の組織に明らかな影響が起こらず、症状が現れません。ただ、症状がないからといって安心は禁物です。無症候性脳梗塞を起こした人は、命にかかわる本格的な脳梗塞や、脳出血を招く危険が高まるだけでなく、小さな脳梗塞の数が増えることによって、血管性認知症になる場合もあるのです。

無症候性脳梗塞は見つけづらい?

無症候性脳梗塞は自覚症状がなく、見つけることが困難な病気といえます。しかしながら、近年MRIなどの画像診断技術が飛躍的に向上しているほか、脳ドックも盛んに行われるようになったことで、無症候性脳梗塞が見つかるようになってきました。
健康な人でも加齢と共に頻度が高くなるといわれており、老化現象の一つとも捉えられます。無症候性脳梗塞は高齢者に多く、男性に多いという特徴があります。

脳梗塞との違い

脳梗塞の症状

脳梗塞とは、脳の血管が詰まって脳組織の一部が死んでしまう状態のことを言います。脳梗塞を起こすと、体の片側の手足のまひや意識障害、言語障害などの症状が起こることが多いのですが、無症候性脳梗塞の場合は症状が現れません。

脳梗塞と無症候性脳梗塞の検査画像比較

左の画像はMRIの拡散強調画像と呼ばれるもので、脳梗塞を起こして血液が足りなくなった箇所が白く写るのが特徴です。これは右脳に脳梗塞を発症した70歳男性の検査画像で、左の手足にまひが見られるようになり入院することになりました。
右の画像はMRIのFLAIR画像と呼ばれるものです。こちらは69歳女性の検査画像で、小さい白い点々が複数見られますが、この部分が無症候性脳梗塞を起こしている箇所です。

無症候性脳梗塞になりやすい人とは?

無症候性脳梗塞のリスク

無症候性脳梗塞の危険因子には、加齢、高血圧、糖尿病脂質異常症慢性腎臓病、過度の飲酒、運動不足や喫煙、肥満、過労・ストレス、家族歴などがあります。この中でも、最大の危険因子が高血圧です。高血圧が長期にわたり続くことで動脈硬化が進行し、無症候性脳梗塞の原因になると考えられています。

また、2型糖尿病の人の約3~6割に、慢性腎臓病の人の約4割に無症候性脳梗塞を認めたという報告もあるので、糖尿病や慢性腎臓病の人は注意が必要です。

症状が現れない!脳の細い血管が詰まる小さな脳梗塞「ラクナ梗塞」とは

血管性認知症につながることも

血管性認知症とは?

認知症といえばアルツハイマー型認知症が有名であり、発症例も多いのですが、その次に多いのが血管性認知症といわれています。

アルツハイマー型認知症は、特殊なたんぱく質による神経細胞の破壊が原因で起こります。血管性認知症は、脳の血管が詰まったり出血したりすることで、脳の細胞に必要な酸素や栄養が運ばれなくなるために起こります。
血管性認知症は、太い血管が詰まる脳梗塞を経験した患者が、回復期に発症するケースのほか、無症候性脳梗塞の方が発症するケースが見られます。

血管性認知症の症状

血管性認知症の症状

血管性認知症の症状として、記憶障害や歩行障害・転倒、頻尿・尿意切迫、まひ、感情が抑えられなくなる感情失禁などがあげられます。
認知症の症状に一様ではないまだら状態がみられるというのも特徴です。例として、自分の興味があることであれば明瞭に覚えられるのに、興味がない事柄についてはほとんど記憶できない場合や、朝と夜で別人のように認知機能に差が出るといった状態がみられます。

無症候性脳梗塞の治療

無症候性脳梗塞の治療では、まず、高血圧や糖尿病、脂質異常症などのいわゆる危険因子の管理を厳格に行います。
そのなかで特に大切なのが高血圧のコントロールで、塩分を控えるなど食生活に配慮し、必要であれば血圧を下げる「降圧薬」をしっかり服用します。

また自分でできることとして、過度な飲酒や喫煙、運動不足を改善することがあげられるでしょう。

症状の改善ではなく病態を悪化させないようにする目的で、脳血管の詰まり具合や狭窄の具合に応じて「抗血小板薬」という血栓の予防に使われる薬を投与することもあります。ただし、これを使用する場合は、厳重な血圧管理が必要不可欠です。

無症候性脳梗塞のQ&A

『Q&A 無症候性脳梗塞』はこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    あなたにも潜在!?脳血管の病気「無症候性脳梗塞」