ぜんそく治療の基本(吸入薬、発作の自己管理) ぜんそく日記のつけ方や重症化した場合の治療

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ぜんそくとは?

ぜんそくとは?

ぜんそくは、空気の通り道である気道が刺激されることで、せきや呼吸困難などの発作が起こる症状です。発作以外にも、気道がゼーゼー、ヒューヒューと笛のように鳴る「ぜん鳴」も起こります。
ぜんそくの症状がある人は、小児(15歳未満)で11~14%、成人(15歳以上)で6~10%という報告があります。日本人の10人に一人が発症していることになります。

ぜんそく発作とリモディング

以前、ぜんそくは、気道がなんらかの刺激で収縮して狭くなり、また元に戻るという単純な仕組みで起こると考えられていました。ところがその後、気道に起こる慢性の炎症が原因であるとわかってきました。しかも、ぜんそくが進行していくと、気道の平滑筋が肥大することで気道がどんどん固くなっていく、リモデリングという状態になります。こうなると、気道は元の状態に戻らなくなってしまいます。
発作の頻度は、週1回未満、週1回以上、毎日など、個人差が大きいですが、頻度はぜんそくがコントロールされているかどうかの目安になります。

治療の基本① 吸入薬による予防

ぜんそくを防ぐ薬、吸入ステロイド薬

ぜんそく治療の基本の一つが、吸入ステロイド薬による予防の徹底です。
吸入ステロイド薬は、気道の慢性の炎症を抑える作用があります。ぜんそくの予防薬のため、発作があってもなくても毎日吸入します。使用をためらう人もいますが、のみ薬とは異なり、副作用はほとんどありません。
薬の量は、症状の重さや呼気に含まれる一酸化窒素の濃度を測定することで決めます。一酸化窒素の濃度が高い場合は、気道の炎症が強いと考えられます。

吸入ステロイド薬の容器には、さまざまな形があり、エアゾールやパウダーの状態の薬を自分で吸い込みます。今は多くの場合、長時間作用性β2刺激薬という、気管支を拡張させる薬との合剤がよく使われています。
吸入ステロイド薬を使っても予防できない場合は、のみ薬の抗アレルギー薬や気管支を拡張させるテオフィリンという薬などを追加します。また、吸入薬の長時間作用性抗コリン薬(LAMA[ラマ])もあります。

吸入ステロイド薬を使うときの注意点

高齢者のぜんそくが治らない最大の理由は、正しく吸入できていないことだと考えられているので、吸入時には、家族など周りの人がサポートすることをおすすめします。
発作が減ってきたからといって、自己判断で吸入ステロイド薬の使用をやめてしまうと、発作がぶり返すこともあるため、勝手にやめてはいけません。

発作が起きたときの治療法

ぜんそく発作を抑える薬

ぜんそくの発作が起きたときは、即効性のある短時間作用性β2刺激薬という吸入薬を使います。この薬は、発作後すぐに使うと効果があります。
ただ、ぜんそくの治療は、吸入ステロイド薬による予防が基本です。発作を抑える薬を使いすぎると、ぜんそくの重症化や死亡の恐れがあるので、必ず医師の指示を守って使用します。
ぜんそくの発作が、短時間作用性β2刺激薬だけで治まらないときは、ステロイドののみ薬や点滴を行う場合があります。

治療の基本② 発作の自己管理

ぜんそく治療の基本の二つめが、発作の自己管理です。まずは、どんなものがぜんそくを引き起こすのかを把握します。

【アレルギー】
ペットの毛やふけ/ダニ/ほこり/カビ/花粉/食物/薬(鎮痛薬)
【アレルギー以外】
かぜ/たばこ/アルコール/運動/気圧の変化/大気汚染

インフルエンザや新型コロナウイルスなどにも注意が必要です。また、肥満やうつ、ストレスなどもぜんそくの“引き金”になります。
このように、ぜんそくはさまざまな要因で起こるため、これらを見逃しているとなかなか治りません。そこで、発作の自己管理として「ぜんそく日記」をつけることが重要になります。

ぜんそく日記

日記には、発作の起こった日や、どういった症状だったかなどを毎日記録するだけでなく、日常生活や睡眠に支障がなかったかどうかや、薬の使用状況なども記録します。
患者さんは、自分の発作について、実際よりも軽い症状だと思いがちです。そこで、日記に発作の回数や程度などを記録することで、自分の症状を客観的に把握することができるのです。

ぜんそく日記の記入例

「ぜんそく日記」は、日本アレルギー協会と環境再生保全機構の共同製作で、無料で配布されています。

進化する重症ぜんそくの治療

進化する重症ぜんそくの治療

吸入ステロイドなどの薬を使っても不十分な場合は、生物学的製剤という新しいタイプの薬が使えるようになりました。
生物学的製剤は現在4種類あり、いずれも注射薬で、2週~8週に1回注射します。
生物学的製剤は、ぜんそくを招く伝達物質や抗体の働きを抑えることで、ぜんそくが起こらないようにします。その効果はかなり大きく、注目されています。

薬以外の治療 サーモプラスティとは?

薬以外の治療 サーモプラスティとは?

ぜんそくが、薬だけではうまくコントロールできない場合の治療法として「サーモプラスティ」があります。
サーモプラスティは、気管支に熱を加える新しい治療法です。気管支に高周波電流を流すことで気道の収縮を抑え、ぜんそくの発作を緩和させます。
サーモプラスティは、重症のぜんそくで18歳以上の人が対象です。特にアレルギーの関与が少ないぜんそくは、生物学的製剤の効果が十分期待できないため、すすめられるケースが多いです。ただし、実施している医療機関は限られています。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年10月 号に掲載されています。

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