胃がんの原因となるピロリ菌の検査法と薬で99%除菌できる治療法

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ピロリ菌の検査

胃がんにならないためには、ピロリ菌検査を受けてピロリ菌に感染しているかどうかを調べることが重要です。胃炎や胃潰瘍などがある人がピロリ菌検査を受ける場合は、健康保険が適用されます。胃の異常を指摘されていない人が、自主的に検査を受ける場合は、ピロリ菌の検査の費用は全額自己負担になります。検査を希望する場合は、消化器内科、内科などの医療機関や人間ドックなどで受けることができるので、事前に問い合わせてください。

胃潰瘍と診断された人

これまでに胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断された人は、症状がなくてもピロリ菌に感染していることが多いので、検査を受けるようにするとよいでしょう。遅くとも、胃がん検診が勧められている40歳頃には受けたほうがよく、さらに、血縁者のなかに胃がんが起こったことがある人がいる場合も、検査を受けることが勧められます。
また、胃の痛み、特にみぞおちの痛みなどの症状がある人は、すぐにピロリ菌の感染を調べる検査を受けることが勧められます。

検査方法

検査では、まず内視鏡検査で胃の粘膜の状態を観察し、ピロリ感染胃炎の有無を調べます。ピロリ菌の感染が疑われる場合は、次のような検査を組み合わせて診断します。

抗体検査

ピロリ菌に感染していると、ピロリ菌から体を守るために抗体がつくられます。血液や尿を採取して、抗体があるかどうかを調べます。

尿素呼気試験

  1. 呼気採取バッグに息を吐く。
    呼気採取バッグに息を吐く
  2. 尿素の錠剤をのむ。
    尿素の錠剤をのむ
  3. 別の呼気採取バッグに息を吐く。
    別の呼気採取バッグに息を吐く

ピロリ菌が尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する性質を利用して、特殊な炭素入りの尿素剤をのみ、吐き出した息の中の二酸化炭素に、特殊な炭素が入っているかを調べます。

特殊な炭素が入っているかを調べる

便中抗原検査

便を採取してピロリ菌に由来する抗原が存在しているかどうかを調べます。

迅速ウレアーゼ試験、鏡検(きょうけん)法、培養法

内視鏡で胃の組織を採取してピロリ菌に感染しているかどうか調べます。

薬によるピロリ菌の除菌治療

ピロリ菌検査で感染が認められた場合は、のみ薬による除菌治療を2回目までは保険診療で受けることが可能です。3回目以降は全額自己負担になります。
ピロリ菌に感染している場合は、ピロリ菌の除菌治療を行うことで、胃がんの発生リスクを低下させることができます。

ピロリ菌を除菌するには、まず2種類の抗菌薬(アモキシシリンとクラリスロマイシン)と、胃酸によって抗菌薬が効かなくなるのを防ぐためのプロトンポンプ阻害薬など胃酸の分泌を抑える薬、合計3種類の薬を、1日2回、7日間のみ続けます。治療が終わってから4週間以上おいて尿素呼気試験などピロリ菌の検査を行い、感染していなければ治療終了となります。

1回目の除菌後の検査でピロリ菌が残っていたら、2回目の除菌を行います。クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えて、再び3種類の薬を7日間のみ続けます。1回目の除菌治療の成功率は70~90%程度、2回目の除菌治療の成功率は80~90%程度です。

抗菌薬の主な副作用

除菌治療の主な副作用

  • アモキシシリン
    下痢や軟便が現れやすいです。ごくまれに薬に対するアレルギー反応によって発疹が出たり、腸炎が起こったりします。
  • クラリスロマイシン
    口の中が苦く感じる場合があります。
  • メトロニダゾール
    吐き気や胃腸の不調が現れることがあります。服用中に飲酒をすると悪酔いが起こりやすいため、服用中は禁酒が必要です。

抗菌薬による副作用が現れた場合、軽い下痢などであれば、薬の服用期間7日間と長くはないので、除菌治療を優先して継続します。ただし、強いアレルギー症状などが出た場合は、除菌治療を中止します。

薬ののみ合わせに注意

薬ののみ合わせに注意

アモキシシリンとメトロニダゾールは、抗凝固薬のワルファリンの作用を強めるなど、ほかの薬とののみ合わせに注意が必要です。除菌治療を受ける際には、使っているすべての薬を必ず医師に伝えましょう。

ピロリ菌除菌前後の内視鏡検査も重要

ピロリ菌の除菌は、多くの場合、胃がんになる可能性を大きく下げますが、ゼロにするわけではありません。なぜかというと、胃がんになるかどうかは、ピロリ菌がどれだけ長い間、胃にダメージを与え続けていたかが問題だからです。そこで、内視鏡検査で胃粘膜の萎縮の程度を確認します。

内視鏡検査が重要

内視鏡検査は、ピロリ菌の除菌治療前に受けますが、胃粘膜の萎縮があると診断された人は、除菌後も胃がんが発生していないかチェックするため、年に1回など、定期的に内視鏡検査を受けることをおすすめします。
中には、検査でピロリ菌が見つからなかったのに、胃がんになってしまうケースもあるので、50歳を過ぎたら、ピロリ菌感染の有無に関わらず、一度、胃の内視鏡検査を受けたほうがよいでしょう。

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年1月 号に掲載されています。

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