血尿がサイン!男性に多い「膀胱がん」とは 症状や原因・検査・治療法

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膀胱がん尿の色がおかしい泌尿器

膀胱がんとは

膀胱は、尿を一時的にためておく袋状の器官です。

尿が排出されるしくみ
尿路上皮がん

腎臓でつくられた尿は、尿管を通って膀胱に送られ、尿道から排出されます。
尿の通り道(尿路)の内側は尿路上皮という粘膜に覆われていて、膀胱がんの90%以上はこの粘膜から発生する「尿路上皮がん」というタイプです。

膀胱がんを発症する人は、日本では年間2万人以上に上ります。男性に多く、発症数は女性の3倍以上です。膀胱がんの最大の危険因子は喫煙で、男性のほうが喫煙者が多いことが関係していると考えられています。たばこに含まれる発がん物質は尿の中にも排出され、尿路上皮に影響を及ぼします。なかでも、尿がたまる膀胱の尿路上皮は、特にがんが発生しやすい部位です。実際に、たばこを吸ったことがない人と比べて、喫煙歴のある人では約2倍、現在も喫煙している人では約3.5倍、膀胱がんを発症しやすいことが報告されています。

加齢も膀胱がん発症の要因とされていて、60歳を超えると膀胱がんを発症する人が急増します。日本では高齢化に伴い、過去15年間のうちに膀胱がんを発症した人の割合は約1.4倍高くなっています。また、現在は製造禁止なっているものですが、特定の種類の染料などの化学物質を扱う職業の人に、職業性の膀胱がんが多く発症することが報告されていました。

膀胱がんの進行

膀胱がん(尿路上皮がん)の進行度は、がんが膀胱の壁のどこまでくい込んでいるかで判断します。

早期がん

がんが最も内側の粘膜や粘膜下層にとどまっている状態が「早期がん」です。患者さんの約3/4は早期がんの段階で診断されており、その場合は治療により根治できる可能性が高くなります。

局所進行がん(筋層浸潤がん)

がんが粘膜下層よりも深い筋層に達していたり、筋層を越えて広がったりしているのが「局所進行がん」です。

転移がん

がんが体のほかの部位に転移しているのが「転移がん」です。膀胱がんでは、リンパ節や肺、骨、肝臓への転移が多く起こります。

早期発見のサインは血尿

膀胱がんを早期発見する重要なサインとなるのが、目で見える血尿です。多くの場合は赤い色の尿が出ますが、血液の色は時間がたつと変化するため、黒っぽかったり、茶色っぽかったりすることもあります。いずれにしても、異変であることがはっきりわかるような色です。通常は痛みを伴いません。

膀胱がんの早期発見のサインは血尿

ただし、早期がんの場合、血尿が数日続くことは少なく、多くの場合は次の日には消えます。そして2~3か月後に再び血尿が出るということがしばしばあります。特に50歳を過ぎたら、排尿時には尿の色を毎回チェックすることがすすめられます。1回でも血尿があれば、必ず泌尿器科を受診するようにしてください。目で見える血尿があった場合、約17%で膀胱がんが見つかっています。しかし、血尿が出て、すぐに受診すれば、多くの場合、早期がんの段階で発見できます。このような、痛みを伴わず目で見える血尿で膀胱がんが見つかる人は、全体の約7割いるといわれています。

しかし、残りの約3割では目で見える血尿は現れません。そのため早期発見には、健康診断などで行われる尿検査を定期的に受けることが大切です。特に、50歳以上で喫煙歴がある人は、年に1回は尿検査を受けることがすすめられます。

尿検査の尿潜血

尿検査で、目に見えない微量の血尿を調べる「尿潜血」という項目が陽性の場合は、必ず泌尿器科を受診するようにしてください。

泌尿器科で行う検査

泌尿器科では、まず主に2つの検査が行われます。

泌尿器科で行う検査

「尿細胞診」は、尿にがん細胞が含まれていないかを調べる検査です。尿の中には膀胱などの尿の通り道から剥がれた細胞が含まれています。悪性度の高いがんほど剥がれやすいという特徴があります。検査の結果が陽性の場合、膀胱などに尿路上皮がんがある可能性が高くなります。
「超音波検査」では、下腹部に超音波を当てて、腎臓から膀胱にかけての画像を撮影します。

膀胱がんの超音波画像

上の図は早期がんの超音波画像で、このように隆起しているタイプであれば超音波検査で発見することができます。

膀胱がんを調べる精密検査

膀胱がんを調べる精密検査

尿細胞診や超音波検査の結果がんが疑われた場合や、高齢者などリスクが高い人には、さらに精密検査が行われます。

膀胱鏡検査とは
膀胱鏡写真

「膀胱鏡検査」では、局所麻酔をして、尿道から直径6mmほどの軟らかい内視鏡(カメラのついた管)を入れて膀胱の中を観察します。処置にかかる時間は5~10分ほどで、通常は外来で行えます。
上の図は早期がんの膀胱鏡写真の例です。がんがいびつな形に盛り上がっている様子がわかります。

局所進行がんのMRI

「MRI検査」では、がんが膀胱の壁にくい込んでいる深さを画像に映し出します。上の図は局所進行がんのMRIです。中央に白く映っているのが膀胱で、その右側に見える、矢印で指した三日月状の黒っぽい箇所が膀胱がんです。反対側(左側)の膀胱の壁が薄いのに対して、黒い箇所は厚みがあります。これは、がんが膀胱の壁に深くくい込んでいることを示しています。

「CT検査」では、腎臓から尿管にかけての尿の通り道を広い範囲で画像に映し出します。がんが膀胱以外に、腎臓や尿管にできていないか調べることができます。また、がんがリンパ節や肺、骨、肝臓などに転移していないかも調べます。

がんだとわかったら

膀胱がんと診断されたら、治療方針を決めるために、がんの深さや悪性度を調べます。

経尿道的切除術(TURBT)

そのための検査を兼ねて行われるのが、「経尿道的切除術(TURBT)」という手術です。TURBTでは、全身麻酔または脊椎麻酔をしたうえで、筒状の内視鏡を尿道から膀胱に挿入し、電気メスで組織を切除します。手術時間は約1時間で、4~6日間ほど入院が必要です。早期がんの場合は、この方法で、がんを根こそぎ切除できて治療が終わることもあります。切除した組織は顕微鏡で観察し、がんの深さや悪性度を調べます。

顕微鏡で見たがんの組織

顕微鏡でがんの組織をみると、組織の形状や密度などが異なり、それによってがんの悪性度がわかります。細胞の核(黒い粒)の大きさが均一で、細胞の形や大きさがそろっているのは、悪性度が比較的低い組織です。核や細胞の形や大きさにばらつきがあると、悪性度が高くなります。

がんの深さによって、膀胱をすべて摘出する必要があるかなどを判断します。また、がんの悪性度は、その後の経過や進行に関わります。悪性度が高い場合、がんが進行したり、再発したりする危険性が高くなるため、がんが浅くても薬などによる治療を追加していきます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年9月 号に掲載されています。

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