美容医療 後悔しないために!エステとの違いは?受ける前の注意点

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全身皮膚

高まる美容医療への関心

年間およそ300万件の施術が行われている、美容医療。女性だけでなく男性の間でも関心が高まってきています。

美容医療に興味があるか男女別のアンケート

美容医療に興味があるか、20代から60代までの男女それぞれ100人にアンケートを行った結果、20代の男性では44%。20代女性では63%の人が興味を持っていることがわかりました。そのほかの年代を見ても興味関心が高いことがわかります。

美容医療の施術件数の多かったランキングベスト5がこちらです。

美容医療施術数ランキング

とくによく知られている施術は、脱毛やしわ・たるみの施術です。
施術件数のランキングをみると

1位 脱毛
2位 ボツリヌス毒素(しわの部分に注射するもの)
3位 いぼ・しみ治療
4位 非外科的スキンタイトニング
(超音波などの高周波を当てて、しわ、たるみを改善する)
5位 光若返り(様々な波長の光をあてて、しわやしみ・くすみを改善する)
となっています。(2021年度の調査)

こうした美容医療の人気は、日本に限らず世界的な潮流です。
しわ・たるみを治療する注射やレーザー等の機器が発展したことが背景にあります。
美容医療は、受けた人の気持ちを前向きにしたり人生を豊かにしたりできる可能性があります。一方で、リスクやトラブルも伴います。利用者は正しい情報をもって選択することが大切です。

増える美容医療のトラブル

国民生活センターにはさまざまな相談が寄せられますが、若い世代からの美容医療に関するものが目立ちます。中でも、脱毛に関する相談が男女とも多くなっています。
人気が高まるのに伴い、トラブルも増えているのです。

国民生活センターによせられる相談

脱毛の施術でトラブル

脱毛をめぐっては、2023年6月、大阪市のエステ店で、脱毛の施術を受けた利用客がやけどを負い、「無資格で医療行為にあたる施術が行われた」として店が摘発された、というケースも起きています。

実は、医療機関とエステでは、行われている「脱毛」の施術に違いがあります。

医療での脱毛

医療機関の脱毛

「医療での脱毛」はレーザーなどを照射し毛根にある毛包の細胞を破壊することで毛が生えてこないようにする脱毛方法です。
脱毛効果は半永久的ですが、この施術を行うのは医師または医師の指示を受けた看護師です。エステ店でこのようなレーザーを使った処置をすることは禁止されています。

エステ脱毛

エステ脱毛

「エステ脱毛」は、毛包の細胞を破壊しない程度の光を当て、毛の成長を“一時的に抑制”する方法です。
エステ脱毛と言われていますが、減毛または抑毛です。

脱毛の原理は、毛根にある毛包にやけどを起こすことです。施術の際には毛や皮膚の色などを加味して出力を調整しながら慎重に行う必要があります。調整がうまくいかないと、皮膚をやけどするリスクがあります。

きちんとした医療機関であれば、もしやけどしたとしても、的確に診断と治療ができますが、エステの施術でやけどした場合医学的判断ができないため、適切に対処できないリスクがあります。

では、エステでなく医療機関で受ければ問題ないか、というと、絶対に安全とも言い切れません。
美容医療は自由診療で専門外の医師も多いため、医療機関によって提供する技術もさまざまであり、どの医療機関でも同じレベルでの施術や治療が受けられるとは限らないのです。
利用する際には、その医療機関で安全な医療を受けられるのか、自分でも確認が必要です。

しわ・たるみ改善のHIFU施術でトラブル

最近人気のHIFUという施術でもトラブルが相次いでいます。

最近人気のHIFU

HIFUは、元々は前立腺がんなどの治療に使われている技術で、狙った部分に密度の高い超音波を熱エネルギーに変えて照射し美容医療では顔のたるみ・しわ・ほうれい線の改善を目的としている施術です。しかし、トラブルも起きています。

HIFUでトラブルにあったAさんのケース

(令和5年3月29日 消費者安全調査委員会 調査報告書より)

30代のAさんは、エステサロンではじめてHIFUの施術を受けました。
あごの下の施術中にチクチクと強い痛みを感じました。「痛い」と施術者に伝えましたが、その後も20分間継続して施術が行われ、「一日は痛いものだ」と告げられました。すると翌日、下あごと首の左側にしびれを感じました。神経内科を受診したところ、末梢神経障害と診断されました。

HIFUの原理は超音波による熱凝固です。
簡単にいうと肉を焼くとギュッと縮むようなことを、皮膚の下で行うことでたるんだ皮膚を引き締めるというものです。
Aさんのケースでは、顔に走る神経に超音波があたって神経損傷が起きたと考えられます。損傷の程度によりますが、回復が難しいおそれがあります。

HIFUに使われているのはレーザーのように選択的に細胞を破壊することのできない機器です。施術する人に解剖学的な知識がないと眼球や神経、筋肉などを損傷するリスクがあります。

メモ:HIFUの痛みとは?

HIFUは、個人差もありますが、施術時に輪ゴムで弾かれたような痛みを生じることがあります。痛みを避けるため、施設によっては、麻酔を使って施術することもあります。痛みを感じなくてすみますが、Aさんのように神経に触れてしまったなどのトラブルがあった場合、異常に気づくのが遅れるおそれがあるので注意が必要です。

HIFUによる事故は、2015年に初めて登録されてから増加傾向にあり、とくにエステサロンでの事故はその傾向が顕著です。

HIFUによる事故登録物件数の推移

そのため、国民生活センターからエステサロンでのHIFU機器による施術について勧告や注意喚起が行われています。

国民生活センターの注意喚起
※NHKサイトから離れます

エステティック関連の主要団体もHIFU施術の自主規制に踏み切りました。しかし、この団体に入っていないエステサロンも多く、まだ十分に徹底ができていないのが現状です。

大慈弥医師に聞く!美容医療を受けるときの心構え

美容医療を受けるときに、私たちはどんな心構えで受ければよいのでしょうか。
大切なのは「どこで」、「誰に」、「何を」受けるか、を自分の中でしっかり認識することです。

美容医療を受ける心構え

  • 「どこで」
    美容医療は医療のため、「美容医療機関」で受けましょう。具体的には、美容外科・美容皮膚科・形成外科・皮膚科などです。永久脱毛などの体に障害を起こすリスクのある施術は医師が行う必要があります。
  • 「だれに」
    美容医療に精通する医師は形成外科医や、皮膚科医です。
    形成外科は、体の表面や形を専門に治す診療科で、その一分野が美容外科です。形成外科専門医の資格を持っている医師は、一応の信頼がおけると考えられます。皮膚科専門医も同じです。
    また、美容外科学会・美容皮膚科学会・美容医療協会に所属していることも判断の材料になります。
  • 「何を」受けるか
    どんな施術を受けるのかを担当の医師からしっかりと聞くことが大事です。
    日本美容外科学会の調査によると、美容医療に関して不満足だった人の理由は、「結果が不満足」と同じくらい「医師の説明が不足」だったという人が多くみられました。

施術を行う医師から、納得するまで説明してもらうことが大切になります。
美容医療を受けた人の中には、実際の治療の担当医師に施術当日に初めて会う、というケースもあるので、気をつけてほしいと思います。

また、医師以外のスタッフに治療を強引に勧められる、というケースもあります。

実際にあったケースでは、自分の目もとが気になり、ある美容クリニックを相談に訪れたところ、医師ではなく「カウンセラー」と称する人が登場し、「あなたはまぶたが下がってくる眼瞼下垂(がんけんかすい)だから、すぐ手術を受けるべきだ」と強く勧められたといいます。
同席していた母親が不審に思い、そこでは治療を決めず、別のクリニックを受診したところ、眼瞼下垂ではありませんでした。

医師以外の人が、「すぐに」「今なら」などという言葉をつかって治療を強く勧めてくる場合には要注意です。身体的危害以外にも契約面でのトラブルにつながりかねません。

美容医療では、治療結果と患者さんの希望を一致させることが求められ、一般の保険診療以上に難しい面があります。
経験豊富な専門医がしっかりと診察し、医学的にも正しい方針を決める必要があります。

美容医療を受ける前のチェックポイント

まず医師の診察や説明がしっかりしていることが基本になります。
さらに、消費者庁・厚生労働省から公表されている「美容医療を受ける前にもう一度」のチェックリストを確認しましょう。

「美容医療を受ける前にもう一度」のチェックリストはこちら
※NHKサイトから離れます

「美容医療を受ける前にもう一度」のチェックポイント

  1. 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できますか?
  2. 効果だけでなく、リスクや副作用などについても知り、納得しましたか?
  3. ほかの方法や選択肢の説明も受け、自分で選択しましたか?
  4. その美容医療は今すぐ必要ですか?最後にもう一度確認しましょう。

治療の効果やメリットにばかり気をとられがちですが、どんな医療にも合併症やリスクがあります。また期待どおりの結果が得られないこともある、ということを忘れないでください。
日本の美容医療の現場では、国に承認されていない機器や薬を使用していることが多いので安全性や有効性なども医師に聞き、自分でも説明できるまで理解することが大切です。

美容医療について、「安全か」「正しい情報なのか」を確認したいときには、個人のホームページやSNS情報ではなく、学会のホームページなどできるだけ公的なものを参考にして下さい。
美容医療に関連する学会が合同で「美容医療診療指針」というガイドラインを作成し公開しています。現在行われている美容医療の治療法に対して、効果や安全性について調査し科学的に検証し推奨度を評価しています。
日本美容外科学会のホームページ等で公開していますので参考にしましょう。

もし、美容医療で合併症やトラブルが起こった場合はまずは治療を受けたクリニックの担当医に相談して下さい。施術したクリニックが対応してくれない場合には、治療内容を記載した「診療情報提供書」を担当医に作成してもらい対応可能な医療機関を受診しましょう。

トラブルに関しては相談窓口もあります。
医療に関するトラブルに関しては全国に設置されている「医療安全支援センター」に相談できます。医療安全支援センター総合支援事業のホームページで全国の相談窓口の連絡先を確認できます。

また、美容医療の契約に関するトラブルやそのほかの困りごとは、「消費者ホットライン」に電話で相談できます。電話番号は188“いやや”と覚えてください。一人で抱え込まずに相談しましょう。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ニュース「美容医療 後悔しないために」