【熱が下がらない・あざができる】進行の早い「急性骨髄性白血病」とは

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急性骨髄性白血病やせてきた体がだるい吐き気全身

高齢者に多い白血病

若い世代、特に未成年がかかるがんのうち、一番多いのが白血病です。しかし白血病は若い世代のがんかというと、そうではありません。60代以降で白血病にかかる人が全体の7割以上を占めています。

白血病 年齢別の罹患率

そして白血病自体も年々増加して、30年前に比べて倍増しています。

白血病罹患率の推移

白血病には大きく分けて急性白血病と慢性白血病がありますが、全体の約6割が急性骨髄性白血病といわれるものです。進行が早いため、すぐに治療を始めることが必要です。

急性骨髄性白血病の症状とは?

急性骨髄性白血病の症状とは?

私たちの骨盤などの中にある骨髄には「造血幹細胞」という血液の元になる細胞があり、赤血球や血小板、白血球など、さまざまな血液成分に変わっていきます。この細胞が白血球になる過程で現れる「骨髄芽球」という細胞ががん化するのが「急性骨髄性白血病」です。

急性骨髄性白血病の主な症状

がん化した異常な「白血病細胞」が現れて増殖すると、血液のバランスが崩れ、正常な赤血球や血小板も減ります。免疫を担う白血球が減るため感染症にかかりやすくなり、発熱が続くことがあります。また、赤血球が減り酸素が運ばれにくくなるので、貧血による倦怠感、動悸や息切れを感じる人もいます。血小板が減ると、鼻血や歯肉からの出血が止まらなくなったり、ぶつけた記憶もないのに大きな青あざができていたりする場合もあります。

診断がつけばすぐに入院 治療が始まる

急性骨髄性白血病の場合、進行が早いので、診断がつけばすぐに治療を開始します。そして寛解という状態をめざします。寛解とは血液検査がほぼ正常になり、症状もなくなる状態です。そのために行うのが「寛解導入療法」です。強力な抗がん薬を組み合わせて約7日間、連続して点滴を行います。その後の回復期間を含めて1か月ほど入院が必要です。

この「寛解導入療法」により、7~8割の方が寛解となります。しかし寛解になっても白血病細胞は骨髄の中に残っているので、治療をやめると、ほとんどの人が再発します。そのため、さらに白血病細胞を減らす目的で「地固め療法」という治療を数か月間行います。
この地固め療法がうまくいくと、PCR検査でも白血病細胞が検出されなくなる「分子生物学的寛解」と呼ばれる状態になります。そうなれば退院。あとは外来で経過観察して様子を見ます。その後5年間、再発がなければ治癒といえます。

急性骨髄性白血病の治療法

しかし急性骨髄性白血病では、約半数の人が化学療法で寛解に至らなかったり、あるいは再発したりします。また診断時の遺伝子検査などから、化学療法が効かない、あるいは再発しやすいと予測される患者さんもいます。そういう場合は、移植を検討します。急性骨髄性白血病の場合は、「造血幹細胞移植」といって、血液のもとである造血幹細胞を他人から移植します。

完治の希望もある造血幹細胞移植

移植には、造血幹細胞を提供するドナーが必要ですが、そのためには数万種類あるHLAという白血球の型が一致しなければなりません。まずは4分の1の確率で一致する、きょうだい間など、血縁者からドナーを探します。見つからなければ骨髄バンク。それでも見つからなければ、HLA型が一部一致していなくても使える臍帯血(さいたいけつ)の順番で探します。しかし最近では、型が半分合っていれば移植できる技術が確立されてきました。これなら親子間でも移植が可能です。

造血幹細胞移植

実際の移植は、1週間程度前から大量の抗がん剤を投与し、放射線を全身に照射する「移植前処置」を行います。自分の造血幹細胞をなくして、骨髄内を空っぽにするためです。そして、空になった骨髄に他人の造血幹細胞を移植し、新しい造血幹細胞が安定して血液を作り始める「生着」をめざします。この「移植前処置」は体への負担がとても大きく、副作用も深刻で、命に関わる場合もあります。そのため、全身状態にもよりますが、年齢は55歳までに限られます。

移植自体は点滴で行います。他人の造血幹細胞や血液が入ってくるわけですから、体に大きな影響があります。その最たるものが「移植片対宿主病(GVHD)」です。移植した血液細胞が免疫の力を発揮して、患者の全身を異物として攻撃するのです。皮膚疾患や激しい下痢、黄疸などを引き起こし、重症化した場合は命に関わる場合もあります。

移植片対宿主病(GVHD)について

これまで移植が難しかった高齢者の治療法として、最近では、体の負担の大きな「移植前処置」をできるだけ軽くする「ミニ移植」という技術が確立してきました。初めは自分の造血幹細胞が混じっていても、コントロールしながらドナーの造血幹細胞と入れ替える移植方法です。この場合、今まで移植を諦めていた55歳以上の人でも移植が可能で、元気な人なら70歳くらいまでが移植可能になりました。

ドナーからの造血幹細胞が生着して、安定して血液を作るまで1〜2年と言われます。それまでは、免疫抑制剤でGVHDをコントロールしながら、感染症予防のため外出も控え、食事制限などもある、多少不便な生活を送ります。しかしその結果、移植した造血幹細胞がしっかりと生着できれば完治となります。ただし、新しい血液成分に生まれ変わっているため、おたふく風邪はしかなど、これまで獲得した免疫はなくなっています。新たに予防注射などを打つ必要があります。ちなみに、血液型もドナーのものに変わります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年1月 号に掲載されています。

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    知っておきたい 血液のがん「急性骨髄性白血病」