処方薬「セマグルチド」

セマグルチドは肥満症の治療薬として2023年3月に承認されました。週に1回、注射で投与する薬で、脳に働いて食欲を抑える効果と、胃の動きを抑える効果(食べてすぐにおなかいっぱいだと感じる効果)があります。日本人を対象とした治験では、生活習慣の改善とともに使うことで約10%以上の体重減少効果が報告されています。ただ、吐き気や嘔吐、下痢や便秘などの副作用があり、胃のムカつきを感じたり、食事がおいしくなくなると感じる人もいるので、その点を理解する必要があります。
GLP-1受容体作動薬の適応外使用には注意を
もともとセマグルチドは、2型糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬としてあったものを、用量を増やして新たに肥満症に応用したものです。
現在、厚生労働省や関係学会が危惧している問題点は、2型糖尿病の薬であるGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬を、美容やダイエットが目的の「やせ薬」として使う人がいることです。
本来、2型糖尿病の患者さんにしか処方できないはずが、自費診療という形などで2型糖尿病ではない人に処方している医療機関があったり、また医者を通さず個人で海外から輸入して使ったりしている人もいます。栄養不足や臓器障害をおこすほどの病的な食欲不振がおきたり、低血糖による意識消失で、転倒や外傷、事故を招くこともあり得ます。
未承認薬には注意
近年、美容のためにやせようとする人たちに向け、ネット販売や自由診療を通じて、日本では承認されていない薬が「ダイエット薬」や「やせ薬」として取り引きされるケースが少なくありません。
たとえ海外で承認されていても、日本人と外国人では体格や体質が違うので、効果や副作用の程度も異なってきます。またそもそも処方薬は、医師がその人の健康状態を総合的に判断して分量や使い方を決めているものなので、自己判断で使うのはとても危険です。
適正体重を大きく下回るような過度な「やせ過ぎ」は、免疫力の低下を招き、感染症へかかりやすくなったり、女性の場合は月経不順や不妊、将来の骨粗しょう症につながったりと、さまざまな健康障害が懸念されます。その他、使う薬によっては、脱水、不整脈、血圧上昇、血管系の障害などいろいろなリスクが知られています。