アレルギー性鼻炎 治療の選択肢
花粉症を含めたアレルギー性鼻炎の主な治療法は、のみ薬と点鼻薬、そして、体質を改善する舌下免疫療法です。スギ花粉症には新たな選択肢として生物学的製剤という薬も登場しています。アレルギー性鼻炎が薬で改善しない場合は、手術を行うこともあります。

アレルギー性鼻炎で最初に行うのは、薬による治療です。
まずは抗ヒスタミン薬ののみ薬を使います。そして鼻づまりが強い場合には、抗ロイコトリエン薬ののみ薬を足すこともあります。のみ薬以外にも、ステロイド点鼻薬を併用する場合もあります。
こうした治療を行っても症状が改善しないなど、日常生活に支障がある場合に選択できるのが舌下免疫療法です。
- 抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬には、第一世代、第二世代があり、第一世代のものは眠気が出るタイプが多かったのですが、抗ヒスタミン薬でも第二世代の後期に出た薬は、眠気が出にくくなりました。
さらに薬の効果も持続するようになり、1日1回の服用ですむ薬も多くあります。市販薬にも同じタイプの薬が登場しています。 - 抗ロイコトリエン薬
ロイコトリエンというのは、ヒスタミンと同じようにアレルギー症状を起こす原因物質で、粘膜を腫れさせて鼻をつまらせる特徴があります。抗ロイコトリエン薬は、ロイコトリエンの働きを抑えることによって鼻づまりを改善します。 - ステロイド点鼻薬
最近のものはステロイドが吸収されにくく、すぐに分解されるようにできているので、安全性が非常に高くなっています。1年以上使い続けてもよいと言われています。
点鼻薬というと、すぐ効くイメージが強いかもしれませんが、ステロイドの点鼻薬は、効果が現れるのに1日〜2日かかります。継続していくことで効果が上がるという特徴があります。
アレルギー体質を変える「舌下免疫療法」
舌下免疫療法は、アレルギー反応を起こしにくい体質に改善する治療法です。

対象となるのは、スギ花粉によるアレルギー性鼻炎、および、ダニによるアレルギー性鼻炎です。
使うのは錠剤の薬で、この中にはアレルギー性鼻炎の原因物質が入っています。錠剤を舌の下に入れるとすぐに溶けますが、1分間は飲み込まず保持します。1日1錠を毎日服用し3〜5年継続します。対象年齢は5歳以上です。
注意点としては、服用後5分間はうがいや飲食はしないこと、服用前後2時間程度は入浴や飲酒、激しい運動を避けることです。
- なぜ舌下で溶かすのか?
スギ花粉の原因物質が鼻や目の粘膜につくと、アレルギー反応が起きて、くしゃみや鼻水、涙などが出たりしますが、口の中の舌下はもともとアレルギー反応が起きにくい場所です。さらに、舌下の粘膜には、免疫を抑える働きをする細胞が作られやすい特徴があります。そのため舌下が選ばれているのです。 - 舌下免疫療法は3〜5年の継続が推奨されています
人によっては、1年目からも効果が出てきますが2年目より3年目と効果が上がってきますし、3年以上続けると、やめたあとも効果が持続すると言われています。3年以上の継続で、7〜8割の人が効果を感じています。 - スギ花粉のシーズンには抗ヒスタミン薬との併用を
舌下免疫療法の効果が出るまでは、花粉症の時期は抗ヒスタミン薬を併用した方がよいでしょう。抗ヒスタミン薬を併用しても問題はありません。 - 舌下免疫療法の副反応
口やのどのかゆみが一時的に出ることがあります。ただ、この症状は多くの場合、数時間で自然に治っていきます。舌下免疫療法は全身の副反応が少なく、比較的安全な治療法と言われています。 - 治療を始めるタイミング
スギ花粉の舌下免疫療法は、スギ花粉が飛んでいない時期に始めることが大切です。
スギ花粉が飛んでる時期に治療を開始すると、アナフィラキシーショックなどの副反応が強く出てしまう可能性があるためです。スギ花粉のシーズンが終わったあとの6月ぐらいから開始するのが望ましいといわれています。
舌下免疫療法は保険適用になっているので、スギ花粉症やダニのアレルギー性鼻炎でお困りの方は耳鼻咽喉科へご相談ください。
スギ花粉症の新たな選択肢 オマリズマブという注射薬
もともとはぜんそくやじんましんの治療で使われていた生物学的製剤という薬です。スギ花粉症にも有効ということがわかり、2019年から保険適用になっています。
オマリズマブの対象は、スギ花粉症の中でも重症な方。抗ヒスタミン薬などの基本的な薬物療法を行っても改善しない方で、年齢は12歳以上です。
この薬はほかの薬と同様に症状を緩和する対症療法のため、注射を打ったシーズンのみ有効になります。
アレルギー性鼻炎の治療 手術を考えるとき
アレルギー性鼻炎で手術を考えるときは
- 基本的な薬の治療を行っても症状が改善せず、鼻の粘膜が腫れたままの場合
- 鼻中隔が曲がっている場合
鼻中隔とは、鼻の右と左を隔てる壁のことです。その鼻中隔が曲がっている場合にも手術を検討するケースがあります。
実は鼻中隔は程度の差はあれど、8〜9割の人が曲がっていると言われています。
鼻づまりなどの症状がない場合には手術をする必要はありませんが、アレルギー性鼻炎があると、より鼻づまりを悪化させる要因にもなるため、手術を検討します。
アレルギー性鼻炎の手術
アレルギー反応で腫れてしまった粘膜を、小さくする手術を行います。腫れた粘膜はアレルギー反応を起こしやすい状態になっています。その一部を取り除くことで粘膜の性質が変わり、アレルギー反応が改善すると言われています。もし、鼻中隔も曲がっている場合には、合わせて鼻中隔をまっすぐにする手術も行います。
アレルギー性鼻炎の手術は、アレルギー体質を根本的に治す治療ではないため、期間に個人差はありますが、徐々にアレルギーの症状が戻ってきます。しかし、鼻中隔をまっすぐにする手術は、一度行えば、再び曲がることはありませんので、アレルギー性鼻炎による鼻づまりの症状が軽減される可能性は十分にあります。