会話や歩き方から認知症を早期発見する研究

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認知症物忘れをする言葉が出ない脳・神経

認知症発見に役立つ可能性があるAI技術

認知症の進行には段階があります。
健康な状態と認知症の間には、軽度認知障害(MCI)という状態が5~10年間あります。この段階で発見し適切に対処すれば、健康な状態に回復する可能性があります。
そのため、認知症は早期発見が重要なのです。

認知症を早期発見するAI技術に関しては、さまざまな研究が進んでいます。例えば、会話で認知症の疑いを検知する研究や、歩き方で認知症の兆候を捉える研究、顔写真から認知機能の低下を見分ける研究、音声で認知症の可能性を捉える研究などです。

会話から認知症を見つける研究

慶應義塾大学とAI開発企業で研究が進められています。会話データをAIに解析させ認知症を早期発見する方法です。5~10分程度の自由な会話を録音して文字データにし、品詞(名詞・動詞など)の並び方などをAIが解析することで認知症の可能性を判断します。

通常は質問形式の「認知機能検査」を行って認知症があるかどうかを判定しますが、認知機能検査は繰り返し行うと慣れにより回答を覚えてしまうなどにより、判定が難しくなる場合があります。しかし、このAI技術を使うと自由な会話をもとに行うため、慣れてしまうことはないため繰り返し検査を行えます。
さらに多くの患者さんは認知症の専門医療機関の受診を嫌がる傾向にあります。このAI技術がかかりつけ医(家庭医)などで普及すれば、患者さんもかかりつけ医などであれば受診しやすく、家族が受診するよう説得する負担が軽減されることが期待されます。

認知症に見られる会話の特徴

認知症に見られる会話の特徴

AIでなくとも私たちも意識することで認知症の会話の特徴を捉えることができます。
例えば、

  • 同じ話を繰り返す
  • あれ・これ・それ が増える
    →ボールペンが言えずに「あれ」や「書くもの」などと言う。
  • 時間や場所があいまいになる
  • 内容が飛ぶ
    →話の話題を唐突に変えるなど

実は認知症の診断に至るまでに2〜3年が経過しているケースも少なくありません。医療機関に行くのをためらってしまうと、その間にも認知症が進行してしまいます。早めに適切な対処を受けるためにも、会話の中で違和感があるときには早めに医療機関に相談しましょう。

認知症の兆候を「歩き方」から検知する研究

一関工業高等専門学校では、歩き方から認知症の兆候を捉えるAI技術の研究をしています。専用のアプリを起動したスマートフォンを腰に装着し、普通に1分ほど歩くというものです。体のゆれや腰の回転の仕方などを測定し、認知機能低下の兆候を数値化しようという取り組みです。

認知症と歩行には関係が

認知症や認知症の前段階のMCIを発症するより前から、その予兆として歩行に変化が見られることがあります。

認知症に見られる歩き方の特徴
  • 歩幅がバラバラになる
  • ふらつき・不安定になる
  • 速度が遅くなる

これらが徐々に進行していくと考えられています。

また、歩くことは予防にもつながると考えられています。
歩くことで認知症が治るとは言えませんが、認知機能の低下を抑える、ゆるやかにする可能性はあります。
認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の状態では、歩くなどの運動を行うことで健康な状態に戻せる可能性があります。

歩き方のポイント

ウォーキングなどの有酸素運動が有効です。有酸素運動を行うと脳への血流もよくなり、認知症の予防効果が期待できます。

目標は週に3回程度、30分間ほど行うのがおすすめです。ウォーキングに慣れてきたら、少し早歩きにも挑戦してみましょう。特におすすめは、運動をしながら頭も同時に使うデュアルタスクです。

例えば、ウォーキングをしながら、しりとりを行うことや、家の中でも足踏みをしながら3の倍数のときに手をたたく、慣れてきたら6の倍数のときに手を上げるなどです。
※上記の運動は転倒に注意して行いましょう。

成功した、失敗したではなく、家族や仲間と一緒に楽しく継続することが大切です。

【特集】動画でわかる認知症(2) 認知症予防運動プログラムはこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年1月 号に掲載されています。

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