要注意な「あざ」とは?特発性血小板減少性紫斑病の治療法

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心配なあざとは?

私たちが暮らしの中で、手や足などを何かにぶつけたとします。ぶつかった部分では、その衝撃で血管が破れて出血します。あざとは体の中で起こる出血、つまり内出血のことです。多くの場合、内出血は血が固まって止まり、放っておいても治るので心配する必要はありません。でも、注意が必要なあざや内出血もあります。

心配なあざ
点状出血は血液の病気に特有の出血

ぶつけた記憶もないのに、あざがたくさん出来ていたり、特に体の中心部にあって濃く広がり続けているあざは要注意です。また写真のような点状出血は血液の病気に特有の出血です。ある日突然できていた、というような場合には注意が必要です。
あざができる血液の病気には、白血病などの血液のがんや、血友病、再生不良性貧血、そして特発性血小板減少性紫斑病などがあります。

特発性血小板減少性紫斑病

特発性血小板減少性紫斑病とは、国の難病にも指定されている血液の病気です。
健康な人の場合、内出血すると、血管の破れた箇所に血小板が集まってきて固まり、止血します。
しかし特発性血小板減少性紫斑病の場合、その名の通り、止血に必要な血小板が何らかの理由で破壊され、不足しているため、通常ならすぐに止まるような小さな出血でも止まらずに大きく広がってしまうことがあります。

出血している状態
血小板が不足して小さな出血でも止まらない

この病気は血友病と違い、遺伝とは関係がない後天的な病気です。何らかの原因で、自分の免疫が血小板を攻撃するようになり、血小板が少なくなってしまう病気です。
通常は1マイクロリットル、つまり1ccの千分の一の体積に、15万から35万ほどの血小板があるのですが、これが10万未満だと「特発性血小板減少性紫斑病」が疑われます。

血小板の数と出血症状

そして、この血小板の数によって現れる症状も変わってきます。5万以上あれば、出血の症状はほとんどありません。3〜5万だと強く打った時に紫斑が出る程度。これもそれほど問題ではありません。しかし、3万以下になってくると困った症状が出始めます。ぶつけた覚えがないのに紫斑や点状出血などが見られたり、女性の場合は月経過多や、出血が止まらなくなったりします。さらに1万以下になると、鼻血が出たり、歯肉などの粘膜からの出血がみられます。こうなると消化器や脳内出血の恐れもあるので危険です。

特発性血小板減少性紫斑病の治療法

治療法は、まずピロリ菌の有無を調べて、陽性であれば除菌を行います。因果関係は不明ですが、除菌すると6割の方で血小板の数が増え始めます。そうなれば治療も終わりです。ピロリ菌がいなかったり、除菌で効果がなかった人のうち、血小板の数で言えば2万以下、そして紫斑や点状出血が多数あったり、粘膜、歯肉や鼻血などの出血症状が見られる人は、副腎皮質ステロイドの投与を行います。2週間から4週間入院してかなりの量を投与します。効果もあるのですが、副作用も大きい治療法です。もともと基礎疾患で高血圧や糖尿病の持病を持っている方は十分な注意が必要です。

ステロイド両方の副作用

それでも効果が得られなければ、3つの治療法から選択することとなります。

TPO受容体作動薬、リツキシマブ、脾臓の摘出

血小板を十分な量、体内に保つためには、お金に例えると、お金(血小板)の消費を減らすか、あるいは儲け(産生)を大きくすることが必要です。TPO受容体作動薬は血小板を作る力を高めるための薬です。浪費家だけど儲けを大きくして対処しようという治療法です。のみ薬や皮下注射のため、体への負担はほとんどありません。高い効果(8割)が見込まれ、副作用も多くの場合、軽度です。ですが、一生服用し続ける必要があります。また、新しい薬のため、10年以上服用したデータがなく、妊婦への安全性も確立されていません。3つの中では一番頻度が多い治療法です。

リツキシマブは血小板を攻撃する免疫細胞・Bリンパ球を攻撃します。血小板の生産は今まで通りですが、破壊される血小板の数を抑えようという治療法です。こちらは点滴治療で、4週間の入院で治療は終了します。5〜6割の患者さんに効果がありますが、長期的には効果が薄れます。点滴直後にはアレルギーが起こらないよう注意する必要がありますし、B型肝炎の既往歴がある人の場合は、再びBリンパ球が活性化する恐れがあります。

最後は、脾臓の摘出です。血小板は、最後には脾臓の中で寿命を終えます。その脾臓を摘出することによって、血小板が減少するスピードを遅くしようというものです。脾臓は肺炎球菌などの細菌に対する抗体を作る働きもしているので、脾臓を摘出してしまうと感染症にかかりやすくなることがありますが、他の臓器がその働きを補ってくれるので、大きな心配はありません。

ただし、摘出手術では、体に大きな負担がかかり、相当量の出血もあります。ただでさえ血小板数が少ない状態なので、そのままの状態では手術はできません。血小板の数を一時的に上げるグロブリンという薬を使うか血小板を輸血してから手術に臨みます。
脾臓摘出は8割の人に効果があり、即効性があります。一方、手術の際の合併症の危険性や、生涯にわたって免疫力が低下したり、血栓症が増加するというデメリットもあります。そのため、現在この方法は、他の治療法がうまくいかない場合に行うという位置づけになっています。

3つの治療法の長所と短所をよく考えた上で、慎重に選択していきます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年11月号に詳しく掲載されています。

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    シリーズ 難病に負けない!血液の病気「特発性血小板減少性紫斑病」