中年以降に発症しやすい「胃がん」とは?原因と3つの検査について

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胃がん腹痛吐き気食欲がない胃・腸・食道

胃がんとは

胃がんは、中高年以上に発症することが多く、特に50歳代から急増します。
胃がんは胃壁の粘膜に発生して、進行するにつれて胃の深部へと進行していきます。胃がんの進行度は、がん浸潤の深さや大きさ、転移の有無などで判定されますが、がんが粘膜や粘膜下層にとどまっていると早期がん、それを越えて深く達している場合は進行がんとなります。
早期の胃がんの場合、自覚症状はほとんどありません。一方、進行すると胃の入口付近にがんができた場合などは食事がのどを通らなくなってしまうことがあります。また、胃の出口付近にがんができると、胃の中に食べたものがたまり、わずかな量の食事でも、おなかが張ってくる感じがすることがあります。

胃がんとは

胃がんは、がん細胞の増殖の仕方の違いから、大きく「分化型」と「未分化型」の2つのタイプに分けられます。分化型は、粘膜から発生したがんが、発生した場所から広がり、集団を形成して増殖します。通常は胃全体に広がることが少なく、比較的進行が緩やかとされています。未分化型は、発生したがん細胞がばらばらになって胃の粘膜の下に散らばって浸潤していき、進行が早く、早期で見つけにくいといわれています。このようなタイプの胃がんで、さらに繊維成分が多いとスキルス胃がんと呼ばれています

「スキルス胃がん」については、Q&Aでもお答えしています

胃がんの一番の原因がピロリ菌

ピロリ菌画像

日本では胃がんの患者さんの約99%以上に、ピロリ菌感染が関わっています。ピロリ菌に感染すると必ず胃がんを発生するわけではありませんが、胃がんになるかどうかは、ピロリ菌の感染に早く気づくかどうか、そして、感染している場合は除菌のタイミングが鍵となります。

ピロリ菌は、不衛生な水や食べ物の中に存在しています。これらを口にすると感染しやすいことがわかっています。ピロリ菌の感染率は、上下水道が十分に整備されていなかった1950年以前に生まれた人では40%以上ですが、80年代生まれの人では約12%と、若年者では少なくなっています*
* H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版より
注意!ピロリ菌は唾液などからも感染します。ピロリ菌に感染している人が食べ物を乳幼児に口移ししたりすると、感染させる可能性があります。

ピロリ菌感染と胃がん

ピロリ菌が体内に侵入し、胃に長く住み着くと、胃の粘膜が壊され、炎症が起こります。これが「ピロリ感染胃炎」です。ピロリ菌に感染すると、数週間~数か月後に、ピロリ感染胃炎がほぼ100%の確率で起こります。

ピロリ感染胃炎を放置していると、その一部で胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症します。また、一部で10~20年を経て胃の粘膜が萎縮し、胃液が十分に分泌されなくなる「萎縮性胃炎」に進行します。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、直接胃がんの原因にはなりませんが、萎縮性胃炎が進行すると胃がんを発症しやすくなります。まれに、内視鏡検査で萎縮性胃炎と診断されていない場合でも、ピロリ感染胃炎から胃がんを発症することもあります。

萎縮性胃炎は、症状が現れないことも多いのですが、人によっては「胃のもたれや痛み」が現れたり、「少量の食事でもおなかが張ってくる」ことがあります。
萎縮性胃炎のある人が、塩分を多く含む食事を続けていると、胃がんが起こる危険性が高くなることがわかっています。
また、胃がんは、ピロリ菌感染以外に、喫煙によっても起こりやすくなるとされています。

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ピロリ菌に感染すると

正常な人とピロリ感染胃炎の胃の画像

健康な胃の粘膜では、しわが細くまっすぐですが、ピロリ感染胃炎のある胃では、粘膜全体が赤く腫れ上がり、粘膜のしわが太くなっています。

胃がん検査の2タイプ

胃がん検査の2つのタイプ

胃がんは、早く見つかれば切除して治せる可能性が高いがんです。そのためには、「胃がんを早く見つけるための検査」と、「進行度を詳しく調べて治療方針を決めるための検査」の2つを適切に行うことが大切です。自治体の胃がん検診は、従来は40歳以上を対象とした、バリウムをのんで行うX線検査が基本でしたが、2016年から50歳以上の人は内視鏡検査も行えるようになりました。これは、時代とともに若い世代のピロリ菌感染率が低下し、がんの好発年齢が高齢者側に変化してきた結果、50歳以上から胃がんの患者数が増えてきためです。効率よく胃がん検診を進めるため50歳以上とされていますが、かなりの胃がんが40~50歳にも発生しますので、気になることがあれば医療機関を受診することをお勧めします。

胃がんを早く見つけるための検査

胃がんをはやく見つけるための検査

胃がんを見つけるために行う検査には、X線検査と内視鏡検査があります。
X線検査は、胃全体の形や胃の壁の硬さなどを調べることが可能で、内視鏡検査では見つけにくいスキルス胃がんなど、特殊なタイプの胃がんの検査に適しています。
内視鏡検査は、胃カメラをのんで直接胃の中を観察する検査で、小さな病変を見つけることができるため、早期がんの発見が得意です。

胃がんのリスクを知る検査

胃がんのリスクを知る検査

現在、一部の自治体などで胃がんのリスクを知る検査が取り入れられています。血液を採取し、ピロリ菌の抗体の数値と2種類のペプシノーゲンの比から、胃がんになる危険性がどれくらいなのかを、ABCDの4段階で評価する検査です。
この検査でA群と診断された場合は、胃がんの危険性がほとんどないとされていますが、これまでA群と診断された人の中にもピロリ菌に感染している人がいることが分かってきたため、A群の人であっても、より正確なピロリ菌検査や内視鏡検査を行ったほうが良い場合があります。

B,C,D群の人の場合、定期的に内視鏡検査を行うことや、胃がんの早期発見・ピロリ菌の除菌が重要とされています。なお、この検査法はこれまでにピロリ菌の除菌をした方は利用できません。

胃がんの進行度を調べ治療方針を決めるための検査

胃がんの進行度を調べる検査

X線検査や内視鏡検査で胃がんが見つかった場合は、胃がんがどんな状態なのかを詳しく調べる検査が必要です。その検査結果によって治療法を考えることになります。

主な検査としては、病変部を拡大して観察できる精密な内視鏡検査や、腹部超音波検査、CT検査などがあります。それらの検査を行うことで、周囲のリンパ節への転移や他の臓器への転移、腹水の有無、腹膜播種性の転移などが分かります。ほかにも、必要に応じて大腸への転移があるかどうかを調べる大腸エックス線検査や大腸内視鏡検査を行います。

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年1月 号に掲載されています。

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