小さなサインを見逃さず 自覚症状を見落としやすい膀胱がんに気づく
2016年68歳の時、小倉さんは情報番組の司会者として忙しく仕事をしていた最中、血尿に気づきました。

小倉さんは30代のときから糖尿病を抱えていて体調には人一倍気をつけ、排尿のときも注意深く見ていました。そのため、血尿にいち早く気づくことができたのです。
がん告知にもジタバタしなかった
小倉さんは、血尿のことをホームドクターに相談すると、尿にがん細胞が含まれているか調べる「尿細胞診」という検査を受けました。検査結果から『おそらく、がんだと思います』と、医師からがんの可能性を告げられたのです。小倉さんはそのとき『ジタバタしなかった』と当時の心境を振り返りました。小倉さんが大きく動揺しなかった背景には、情報番組で病気に関する予備知識を十分得ていたことも要因の一つでした。心の準備が十分に出来ていたのかも知れません。
記事『血尿がサイン!男性に多い「膀胱がん」とは 症状や原因・検査・治療法』
膀胱摘出 最初は戸惑いも
小倉さんの膀胱(ぼうこう)に出来たがんは、筋層まで入り込んでいました。転移する可能性も高いので医師からは『膀胱を全摘出してください』と言われました。ところが、小倉さんは当初、膀胱を摘出することには抵抗があったようです。膀胱がんの摘出手術を受けると、性機能に障害が起きることがあるからです。小倉さんはそのことに抵抗を感じ、一時は手術をちゅうちょしたのです。

しかし2018年、膀胱の摘出手術を決意します。そのきっかけになったのは、朝の生放送前に大量の血尿が出たことでした。小倉さんは医師と改めて相談し、手術することにしました。
代用膀胱 知られざる不便さ


小倉さんは、膀胱を摘出する手術を行った後、体の中に膀胱の代わりをつくる「自排尿型新膀胱造設術」という手術を行いました。小腸の一部を切り取って袋状に縫い、それを尿管と尿道につないで、膀胱があった場所に設置する方法です。
小腸を膀胱代わりにするのですが、膀胱のように尿意が分かりません。時間を決めて定期的に排尿しますが、力んだ瞬間に漏れてしまうこともあります。手術の後は、尿漏れパッドを身につけてあふれて困った場合は、トイレに入って交換します。しかし、尿漏れパッドの処理に困ってしまうこともあります。
『男性用トイレにもサニタリーボックスを』と小倉さんは番組に出演するたびに訴えました。すると、少しずつ変化が現れたのです。公共施設などで男性用トイレにもサニタリーボックスが置かれるようになりました。

入院中の小倉さん。
手術2日後には2000メートルも歩いたという、驚異の回復力を発揮しました。
“常に自分の体調を知る”小倉流 健康法
そんな小倉さんの一言は、“常に自分の体調を知る”です。
小倉さんは30代に糖尿病を患ってから、30年以上欠かさず自己管理ノートを付けています。
『何をどこで食べたか、血圧、脈拍、血糖値はどうか…この手帳を付けるようになり、自分の体調を自分で管理出来るようになった』と語っていました。
