手術前にも抗がん剤治療
これまで抗がん剤は手術後の再発予防に使われてきました。それが今、手術前にも使うことで治療の成績が上がってきています。

手術前に抗がん剤を使うことで、微小ながんをたたくことができ、より綺麗にがんを切除することができるようになります。画像診断や肉眼で確認できるがんの大きさは5mm程度ですが、目に見えない小さながん細胞を抗がん剤でたたき、あらかじめ取り除くことで治療成績が上がるのです。手術前に抗がん剤治療を行うことを「術前化学療法」と言います。
手術前の抗がん剤治療は病態にもよりますが、2〜4か月ほど行います。その間、患者さんには手術に向けた体力作りなども同時に行ってもらいます。
一方で、抗がん剤治療中にがんが悪化してしまうのではないか、早く手術をして欲しいと心配になる患者さんも多くいますが、東北大学などが発表したデータでは、術前化学療法を行った方が2年生存率が約10%上昇するなど治療成績が良くなることが分かっています。
そのため現在では、術前化学療法は主流の治療法になっています。また、抗がん剤治療の間にがんが進行して手術ができなくなるというケースはほとんどありません。
コンバージョン手術
これまで切除できなかったがんが手術可能になるケースが出てきています。すい臓がんは手術できるケースは約2割、手術できるかどうかの境目、グレーゾーンのケースが約1割、残りの約7割は切除できないとされてきました。
ところが、手術不能のがんに抗がん剤が効いて手術可能になるケースが出てきました。それを「コンバージョン手術」と言います。この治療ができるのは、手術不能の患者さんのうち、1割程度と言われています。抗がん剤でがんがうまく小さくならない、また副作用が強く途中で中断せざるを得ないなど、うまく進まないケースも多くあります。
コンバージョン手術が可能になる条件

抗がん剤によって、
- がんの大きさが十分小さくなる。
- がんの状態を表す腫瘍マーカーが正常値ぐらいまで低下する。
- 別の臓器への転移がない、もしくは消えた。
- 抗がん剤治療後も体力が十分に残っている。
などがあげられます。
ロボット支援手術
すい臓の手術はとても複雑です。すい臓のほか、胆のうや十二指腸などを取り除き、小腸とつなぎ合わせます。


とても繊細かつ、精密な動きが必要になります。その動きを支援してくれるのがロボット支援手術です。

ロボット支援手術と言っても、ロボットが自動で手術をしてくれるわけではありません。
おなかに開けた小さな穴から手術器具や腹くう鏡と呼ばれるカメラを入れて、中の様子を確認しながら行います。
執刀医は、患者さんのいるベッドから少し離れた場所でロボットを操作し、腹くう鏡がとらえた鮮明な画像を見ながら遠隔操作をして手術を行います。
1mmのものを5cmぐらいに拡大して見ることもでき、手の震えを自動的に取り除く機能もあるため、繊細かつ正確な手術を行うことができます。
患者さんのメリットは、従来の開腹手術に比べ痛みが少なく、回復も早いことです。
ロボット支援手術を受けられるケースは、現時点ではすい臓がんのステージⅡまでで、血管や他の臓器の合併切除を要さない場合のみです。手術内容によってはできない場合もあります。
2020年から保険適用になり、ロボット支援手術を用いたすい臓がんの手術件数は年々増えてきていますが、この手術が受けられる医療機関は、大学病院やがんセンターなどに限られています。