神経の難病 パーキンソン病の遺伝子治療とは?

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パーキンソン病

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パーキンソン病の遺伝子治療

手が震える、動作がゆっくりになる、歩行が困難になるといった症状が現れる神経の難病、パーキンソン病。脳内のドパミンという物質が関係していることが分かっています。ドパミンには体の動きをスムーズにする働きがありますが、脳の神経細胞がこわれて、作られるドパミンが減ることによって発症します。標準的な治療では多くの薬が使われますが、長年使っていると効かなくなるという課題があります。

パーキンソン病の既存の薬パーキンソン病の既存の薬

自治医科大学の村松慎一さんは、遺伝子の運び屋(ウイルスベクター)を使ってパーキンソン病を治療する研究を行っています。これまでに実際の患者さんで行った臨床試験では、手の震えや歩行困難が改善する可能性が示されたといいます。2022年の秋には、パーキンソン病の遺伝子治療の実用化に向け、新たな治験が始まる予定です。

パーキンソン病を治療する研究を行っている様子

パーキンソン病の遺伝子治療に関するQ&A

パーキンソン病の遺伝子治療について、自治医科大学教授の村松慎一さんに詳しくうかがいました。

◎パーキンソン病の遺伝子治療に使われるウイルスとは?

村松:ウイルスというと新型コロナウイルスの影響でイメージが悪いのですけが、役に立つウイルスもあります。パーキンソン病の遺伝子治療には「アデノ随伴ウイルス」というウイルスが使われます。これまでは、脳のなかで直接、遺伝子を発現させるということが難しく、なかなかよい方法がなかったのですが、研究が進み、アデノ随伴ウイルスを使うと非常に効率よく神経細胞のなかでいろんな治療用の遺伝子を発現させることができるようになりました。

アデノ随伴ウイルス

◎遺伝子治療はどこまで期待が持てるのですか?

村松:パーキンソン病は進行すると既存のレボドパ製剤という薬がなかなか効かなくなってしまいますが、遺伝子治療を行うと、脳のなかでドパミンをつくることができるようになります。そうすると運動症状が改善することが期待できます。神経難病の原因は分かっていないこともたくさんあるのですが、一方でいくつかの遺伝子を使えば治療ができるということも分かってきました。ウイルスを使った医療によって今後、パーキンソン病だけでなく、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など多くの難病が大きく改善するようになると思います。

遺伝子治療の研究

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この記事は以下の番組から作成しています。

クローズアップ現代

【クローズアップ現代】

2022年7月25日(月)放送
『ウイルスの力を病気を治す力へ~がん・難病治療の新戦略~』

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