脚のむくみの正体は?
脚は体の下のほうにあるため、重力の関係で水分が貯まりやすくなります。そのため、脚はもともとむくみやすいのですが、運動不足や脚を下げている時間が長くなると、その傾向が一層強くなります。

心臓から送り出された血液は足の先まで巡り、静脈とリンパ管を通って心臓へと戻ります。このとき、下から上へと重力に逆らって血液を押し上げなければなりません。
そこで重要な役目を果たすのが筋肉です。ふくらはぎの筋肉がぎゅっと収縮すると、ポンプのように血管を押し縮めて血液を下から上に運びます。この筋肉が運動不足で衰えてうまく働かないと、血液が滞って脚がむくんでしまうことがあります。

命の危険も?危険な脚のむくみ
むくみの多くは、それほど心配する必要はありません。生活習慣の見直しや運動などで改善することができます。しかし、注意が必要なケースもあります。ひとつは深部静脈血栓症です。これは脚の深い所にある静脈に血液の塊・血栓ができる病気です。

さらに、脚の静脈に詰まった血栓が剥がれ、心臓を通って肺の血管に詰まると「肺塞栓(そくせん)症」、いわゆるエコノミークラス症候群になります。突然の胸の痛みや呼吸困難、ときに心停止を引き起こすこともあります。

血栓ができた脚(写真の左脚)だけが急激にむくみ、赤紫色になります。脚が張って苦しく、鈍い痛みを訴える場合が多いようです。
治療は血液がサラサラになるのみ薬や点滴の抗凝固薬を投与します。その後も、少なくとも3か月ほど投薬治療を行います。特に初期は、血栓が飛んで肺塞栓症を起こさないように注意深く観察する必要があります。
下肢静脈瘤 手術のタイミングは?

足の先まで巡った血液は、下から上へと重力に逆らって心臓まで押し上げられます。このとき、血液が逆流しないように静脈には「弁」がついています。ところが何らかの原因でこの弁が壊れると、血液が上に運ばれず、逆流したり溜まったりして血管がコブのように膨らんでしまいます。これが「下肢静脈瘤」です。
40歳以上の女性に多く、年齢とともに増加します。女性に多いのはホルモンの影響が大きいからだと考えられていて、特に出産時の変化が大きく影響すると言われています。まず、血管がボコボコと脚に出てきて、そのうち脚が痛くなったり、だるくなったり、夜中にこむら返りを起こしたりします。さらには皮膚炎ができてかゆみがでて、皮膚がこわれて潰瘍ができることもあります。
しかし、この下肢静脈瘤は、全部が急いで治療をしなければならないというわけではありません。症状がなければ経過を見たり、また減量や運動、脚を下げる時間を短くする生活改善や、弾性ストッキングを履くことで症状を軽くすることが出来ます。悪化して痛みや皮膚症状が出てきた場合には、治療として手術を検討します。

以前は弁が壊れた血管を抜き取るストリッピング手術が盛んに行われていましたが、現在主流となっているのは、血管を焼く管内焼灼(しょうしゃく)術や、接着剤で血管を閉じる血管内塞栓術です。いずれも日帰りで行われることが多い、体への負担が少ない治療法です。
血管を焼いたりして大丈夫かと心配する人もいますが、血管は他にも何本もありますし、既にうまく働かなくなっている血管なので、焼いたり閉じたりすることでかえって血管の機能はよくなり、症状は改善されます。処置をした血管は、最終的には体に吸収されていきます。
ただ、軽症で手術の必要がないときにも、手術をすすめる医療機関もあるようです。信頼の置ける医師からよく説明を聞いて、納得した上で治療法を選択してください。