心不全やエコノミークラス症候群の可能性 危険なむくみを見極めるためのポイント

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むくんだときのチェックポイント

むくみとは、毛細血管から水分がしみ出し、周りの細胞層に水分が過剰に溜まった状態のことです。むくみがあっても、特に心配のない場合も多いですが、危険な病気のサインの場合もあります。たとえば、全身の血管に血液を送るポンプとしての心臓、血液から尿を作り水分の量を調節する腎臓、あるいは血管やリンパ管など、さまざまな臓器の病気でむくみが起こることがあります。もし、むくんでしまったら、チェックポイントを参考に自分の体の状態を確認し、心配な場合は医療機関を受診しましょう。

危険なむくみを見極めるチェックポイント

この数時間でむくんできたのか、あるいは数日、何週間も前からのものなのかで対処法が違ってきます。また、全身あるいは一部に皮膚の色や性状の変化、痛みがあったり熱をもったりしていないか、いつもと違ったところはないか注意してみてください。全身症状も重要です。発熱があれば感染症の可能性もあります。また、現在治療中の病気やのんでいる薬、サプリメント、アルコールとタバコの情報も大切です。女性は月経との関係やピルの使用も参考になります。医師に伝えるようにしましょう。

危険なむくみを見極める

タクシーの運転手をしているAさんの場合

タクシーの運転手をしているAさんの場合
ふくらはぎのむくみ、痛みだけでなく息切れ、動悸などの症状

2日前から右のふくらはぎが急にむくみ始めました。ふくらはぎ全体が赤くなって痛みがあり、熱をもっているようです。けがをした覚えはありません。また、今朝からは咳が出て、動悸(き)、息切れ、息苦しさを感じ、息を吸うと胸が痛みます。

このケースは、急いで救急車を呼んで病院に行ってください。脚の静脈に血液の塊・血栓がつまる「深部静脈血栓症」の可能性があります。そして、息苦しさなどの症状は、脚にできた血栓が静脈を通って肺の血管を塞いでしまう「肺塞栓症」の可能性があります。いわゆる、エコノミークラス症候群です。同じ姿勢が長い間続く職業の人などに多い病気です。肺塞栓症は、診断と治療が遅れると命にかかわる危険な病気です。悪化する前に急いで救急車を呼び、病院に行きましょう。失神を起こすこともあるので、自分で車を運転してはいけません。

【患者体験談】突然の脚のむくみと激痛 エコノミークラス症候群の危険

Bさんの場合

左腕にかゆみを感じている
悪寒の症状

2週間ほど前から左腕にかゆみを感じていました。2、3日前から徐々に左腕の肩から肘の部分、いわゆる二の腕が腫れてきました。触ると痛みがあり、熱をもっているように感じます。昨夜から悪寒がして体がほてっています。体温を測ると38.5℃でした。

このケースは、その日のうちに医療機関を受診してください。蜂窩織炎(ほうかしきえん)という疾患の可能性があります。皮膚と皮下組織に細菌が感染し炎症が広がった状態です。
かき過ぎて皮膚が傷つき、細菌が侵入したと考えられます。

蜂窩織炎は、放っておくと炎症が広がって危険な状態になる可能性がありますが、抗菌薬などで早めに治療すると、10日ほどで治るケースがほとんどです。その日のうちに受診して治療を開始しましょう。特に糖尿病の人の場合、治療が遅れると病状の進み方が速くなり、最悪の場合、敗血症などに移行して生命にかかわることも考えられます。糖尿病でいつも受診している医師にすぐに相談することをお勧めします。

Cさんの場合

全身がむくみ体重が増えた
息苦しく眠れないので上半身を起こして寝る

最近、階段の上り下りがきつく感じ、倦怠感を覚えることも多いCさん。全身がむくみ、体重も増えました。また、夜横になると息苦しくて眠れないので上半身を起こしたまま寝るようになりました。

このケースは、その日のうちではないにしても、数日中に受診されることをお勧めします。
心臓の疾患、特に心不全の症状の可能性が高いです。心臓のポンプとしての機能が低下すると、血液の流れが悪くなるので血管に血液が溜まり、むくみを起こしやすくなります。
また疲れやすい、ちょっとしたことで息切れする、横になると息苦しい、なども典型的な心不全の症状です。

急増する心不全の症状とは?むくみ・息切れ・肺水種など

他にも症状の緊急度に応じて適切に対処してください。

救急車を呼ぶべきむくみ

その日のうちに受診すべきむくみ

数日中に受診すべきむくみ

むくまないための生活改善

危険なサインがなければすぐに受診する必要はありませんが、むくんでいるという状態は健康的とは言えないので、放置せずに日々の生活を見直して改善していくことが大切です。たとえば、立ち仕事が続く場合は立っているだけでなく、なるべく歩いたり運動をしたりする、あるいは弾性ストッキングを履く、むくんだ脚などを高く上げるなどです。
2、3日セルフケアをしても効果がない、または悪化するような場合は医療機関を受診して相談して下さい。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年7月 号に掲載されています。

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