慢性痛とは?
腰や肩、膝などの痛みが3か月以上続く、または3か月以上繰り返すものを慢性痛といいます。国内で2000万人以上の人が慢性痛で悩んでいるといわれ、痛みのストレスによって仕事や生活をうまく送れなくなってしまう人もいます。
痛みを長引かせてしまう要因には、けがや病気などの肉体的なものだけではなく、社会的・心理的なストレスも関係しています。自分の痛みにはどんなことが関連しているのか理解したうえで治療を行っていくことが大切です。
「痛い」ってどういうこと?
痛みについての国際的な学会・国際疼痛(とうつう)学会で「痛み」についての定義が41年ぶりに改定されました。痛みとは、「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」です。痛みというと、けがをしたときや原因となる明らかな病気があるときに起こるものだと思われています。ですが、痛みには脳が深く関わっているため、原因となる病気やけががなくても、脳で痛みを感じてしまうことがあるのです。これが痛みを長引かせる原因のひとつになっています。このような痛みを「痛覚変調性の痛み」といいます。
痛みの悪循環から抜け出そう

痛みが続くことによって、痛みの悪循環に陥ってしまうことがあります。これも、痛みを長引かせる原因です。痛みがストレスになって、不安や恐怖が引き起こされます。すると引きこもりや不眠になり、体を動かさないことによって筋肉や体力が衰え、さらに気分が暗くなりうつ状態になってしまうことがあります。すると痛みが悪化して、痛みをより強く感じる悪循環に陥ってしまいます。

このような悪循環から抜け出すためには、まずは慢性痛を正しく理解して、痛みへの不安や恐怖を取り除くことです。そうすることで少しずつ動けるようになり、体や筋肉の状態が改善し、痛みがだんだんと気にならなくなっていきます。
痛み「ゼロ」ではなく「コントロール」を目指す

2021年に発行された「慢性疼痛診療ガイドライン」では、慢性痛を改善するためのさまざまな治療法が検討されました。このような治療を行う際には、痛み「ゼロ」ではなく痛みを「コントロール」することを目標にします。なぜなら、痛みを完全に取り除くことは非常に難しいことだからです。痛みゼロだけを目指していると、それがうまくいかなかったときに失望や恐怖だけが残ってしまいます。痛みそのものにとらわれ過ぎずに、痛みをコントロールして日常生活の質を良くすることを目標にすることが大切です。
自宅で簡単にできる呼吸法
≪監修≫
春山 祐樹(星総合病院 慢性疼痛センター 理学療法士)
痛みを和らげる方法のひとつに、マインドフルネス(めい想)の呼吸法があります。これだけで痛みがなくなるわけではありませんが、呼吸法を意識することは、「痛み」ではなく「体全体」に意識を向けることに繋がり、痛みをコントロールするための第一歩になります。
ポイントは、呼吸だけに意識を向けて痛みや他のことは考えないようにすることです。

【呼吸法のやり方】
静かな環境を整え、呼吸は普段の呼吸とおなじくらいの深さで行います。
時間は、はじめは1~2分ほど、空き時間に少しやってみる程度で十分効果があります。
- 安定した楽な姿勢で座る
手足はブラつかないように太ももの上に置く - 呼吸に合わせて胸やおなかが動くことを感じる
- 息を吸ったときに、空気が手の指先や足先まで全身を満たすイメージ
息を吐いたときに、満たされた空気が外に出ていくイメージ
めい想の方法・効果と「呼吸のめい想」のやり方はこちら(動画付き)
マインドフルネスめい想「音に耳を澄ますめい想」とは(動画付き)