徐脈とペースメーカー

不整脈の1つに脈が遅くなる徐脈があります。息切れやだるさを感じたり失神して命の危険を伴うこともあります。徐脈の治療で長く使われてきたのがペースメーカーです。

鎖骨の下を4〜5センチ切開してポケットのような場所を作り、ペースメーカーの本体を植え込みます。そこからリードと呼ばれる電線を静脈を通して心臓に到達させます。リードの先には電極が付いています。ペースメーカーは心臓の心拍数を常に監視し、異常が起こるとすぐに電気刺激を心臓に送り、設定された心拍数を保つようにします。
リードのないペースメーカー

まったく新しいタイプのペースメーカーが最近登場しました。長さ2.6センチ、重さ1.75グラムのカプセル式で、リードがありません。

これをカテーテルで血管を介して右心室に送り込み置いておきます。心拍数を予め設定するだけでなく、体の動きも感知してより生理的なペーシング(調節)ができるのも特長です。
リードレスの利点と課題

従来のペースメーカーでは、ポケットの感染症、リードの血管への癒(ゆ)着、ポケットの傷跡が気になるなどの不都合が時々ありました。テニスや筋トレなどの運動でもリードに負荷がかかります。しかしリードレスのペースメーカーならそうしたことはありません。また、乳がんで乳房を全摘した人では皮下組織が少なく従来型の本体は植え込むのが難しかったのですが、リードレスなら大丈夫です。腎臓の透析をしている人は腕の血管を一部つないであるため、従来のリードを入れると不具合が起こりやすかったのですが、それも解消されました。

ただし、従来のペースメーカーがあらゆるタイプの徐脈に使えるのに対し、現在のリードレスペースメーカーは、右心室のペーシングができるだけで、右心房のペーシングはできません。そのため治療できる徐脈の範囲がまだ限られています。
遠隔で医師がチェックできる
従来のペースメーカーにも便利な機能が最近追加されました。「遠隔モニタリング」です。

ペースメーカーを使う患者さんの自宅に専用の中継機器(上)を設置します。この機器が患者さんに不整脈が起こっていないか、またはペースメーカーの電池の状態などの情報をキャッチし、医療機関などにいる医師に送信します。これまで通院してチェックしていたことが在宅にいて確認できるわけです。コロナ禍で通院回数が減っている今、とても有用です。