感染が急激に広がったオミクロン株 その感染力・ワクチンの効果・感染対策について

更新日

熱があるせきがでるショック症状呼吸器

オミクロン株の感染力は?

石井誠先生

オミクロン株は、ウイルスに30を超える変異があり、その大半がウイルスの表面にあるスパイクタンパク質にあります。スパイクタンパク質はウイルスと人間の細胞とが結びつく「鍵」となる部分で、ここに変異があると人の細胞と結合しやすくなり、感染力が高くなると考えられています。感染力のひとつの目安として、実効再生産数がありますが、オミクロン株の実効再生産数はデルタ株の2.77倍になるとされています。(厚生労働省 感染対策アドバイザリーボード 令和4年1月13日)

また、オミクロン株は免疫から逃れる性質がありワクチンが効きにくいこと、また、潜伏期間が短いことがわかっています。米国疾病対策センター(CDC)の分析によると、感染から発症までの潜伏期間はオミクロン株で約3日間でした。通常の新型コロナが5日ほどなので、2日ほど短いと考えられています。潜伏期間が短いと、感染源になるウイルスを吐き出すまでの時間が短くなり、より早く他人にうつしてしまうようになります。

オミクロン株に対するワクチンの効果は?

オミクロン株に対する入院を防ぐ効果
接種後の副反応(ファイザーワクチン)

オミクロン株については、ワクチンが標的としているスパイクタンパク質が変異していることから、ワクチンの感染を防ぐ効果が落ちてしまう可能性が指摘されています。さらに、重症化を予防する効果も、やや低下することがわかってきました。オミクロン株が優勢となった最近のイギリスの保健安全保障庁の臨床データでは、アストラゼネカ製ワクチンを含めた全ワクチンによるオミクロン株に対する入院を防ぐ効果が、6か月までは72%であったのが、6か月以降は52%まで低下した。一方、この報告で、さらに3回目の追加接種を受ければ、2週間後には入院を防ぐ効果は88%にまで上昇しています。重症化予防の観点からも追加接種を積極的に進めた方がいいと考えられます。
アメリカで行われたファイザー製ワクチンの副反応の報告ではどれも2回目・3回目と大きな差はなく、ほぼ同様でした。また、こうした副反応のほとんどが接種翌日か翌々日がピークで、すぐに改善するので、大きな心配はいらないと考えられています。

オミクロン株の治療薬

オミクロン株の治療薬

これまでの新型コロナウイルス感染症では軽症・中等症だけではなく、濃厚接触・無症状の人にも使えた中和抗体薬「カシリビマブ/イムデビマブ」ですが、ウイルスのスパイクタンパク質を標的としているため、オミクロン株に対して効果が落ちてしまうと考えられています。厚生労働省はオミクロン株については、カシリビマブ/イムデビマブの使用を推奨しないと通達を出したので、実際には使えなくなりました。一方、同じ中和抗体薬の「ソトロビマブ」は変異しにくいスパイクたんぱく質を標的にしているので、効果が落ちることはないと考えられており、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインでもオミクロン株に対しても投与が推奨されています。また、のみ薬としてはじめて認可を受けた「モルヌピラビル」は、理論上は変異した部分の影響は受けないため、オミクロン株にも有効だと考えられています。しかし、妊婦や18歳未満の人は 安全性が確立されていないため、服用はできません。また、特別な事情がない限り5日間しっかり服用することが重要です。そして、新しい抗ウイルス薬「ニルマトレルビル/リトナビル」が令和4年1月14日に承認申請されました。臨床試験の最終報告で、入院や死亡のリスクを約9割低下させたと発表がありました。(「ソトロビマブ」「モルヌピラビル」「ニルマトレルビル/リトナビル」の投与については重症化リスクがあるなどの一定の条件があります。)

さらに、中等症~重症患者に使われていた「レムデシビル」が軽症にも適応が拡大する可能性があります。海外の報告では重症化リスクある外来患者への3日間の短期投与で入院・死亡が87%減少しており、NIHガイドラインでも重症化リスクある軽症のオミクロン株感染者の治療に推奨されています。

重症化した場合には、レムデシビルに加えて炎症を抑えるステロイドと免疫調整薬バリシチニブ、血栓治療・予防のため、ヘパリンも使われます。さらに、令和4年1月20日には免疫調整薬のトシリズマブが適応追加承認されました。WHOでは酸素吸入が必要な患者さんにステロイドとの併用を条件として、トシリズマブあるいはバリシチニブの投与を強く推奨し、オミクロン株にも有効であろうとコメントしています。

感染拡大を止めるには、感染対策の徹底を

オミクロン株に対する感染対策について

オミクロン株は潜伏期間が短く、感染力が高いことがわかっています。感染拡大を止めるには、一人一人の感染対策にかかっています。できていると思い込んでいることが適切にできてないこともあります。例えばマスクは隙間なくしっかり着用しましょう。できれば、ウレタンなどの素材ではなく飛沫防止効果の高い不織布のマスク使用をおすすめします。こまめな手洗い・手指の消毒、密を避けて、換気をするなど基本的な感染対策を徹底します。また、体調が少しでも悪ければ、かぜのような症状でもオミクロン株感染の可能性を考えて無理をせずに早めに保健所などに相談するとよいでしょう。そして、ワクチンの追加接種も積極的に受けることが重要です。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ここが聞きたい!最新ニュース 「新型コロナ 感染拡大!オミクロン株」