心筋炎とは
心筋炎は、心臓の筋肉である心筋に炎症が起こる病気です。年齢や性別を問わず、健康な人であっても、突然発症する可能性があります。軽症の場合は、発症しても気付かないうちに自然に治ることもあると考えられますが、炎症の範囲が広がって重症化すると、突然死につながるなど命に関わります。
また、心筋炎の約30%が3年以内に慢性化するというデータもあります*。心筋炎がいったん治っても、心筋へのダメージが残り、慢性心不全が起こることがあるため、治療後の経過観察が重要です。
*van den Hoogen P, et al. Curr Genomics. 2015
心筋炎の症状

心筋炎の多くは、「悪寒」「発熱」「頭痛」「筋肉痛」「けん怠感」「吐き気」「おう吐」「下痢」などのかぜのような症状をきっかけに起こります。その後、数時間から数日たって、心不全の症状が現れるのが特徴です。また、すべての症状が必ず起こるわけではありませんが、重症になると、「強いけん怠感」「冷や汗が出る」「意識障害」などを伴うことがあります。
受診するタイミング

熱が高くなくてもいつものかぜとは違う、ひどいだるさ、めまい、立ちくらみ、息切れがあった場合は、早めに受診しましょう。
心筋炎の原因
心筋炎はさまざまな原因で起こりますが、一般的なかぜの原因にもなるエンテロウイルスなどに感染することで起こることが多いとされています。ただし、原因が特定できない場合も少なくありません。

【心筋炎の主な原因】
- ウイルス
・インフルエンザウイルス
・コクサッキーB群ウイルス(手足口病やヘルパンギーナの原因になるウイルス。エンテロウイルスの一種)
・アデノウイルス(プール熱の原因になるウイルス)
コクサッキーB群ウイルスとアデノウイルスは、子どもが感染することが多い。
・C型肝炎ウイルス
・新型コロナウイルス - 細菌
- 薬
- 関節リウマチなどのこう原病
- 免疫異常
新型コロナウイルスとワクチンの関係は?
新型コロナウイルスの感染が原因で心筋炎が起こりうることがわかっています。感染しないようにすることが重要です。
さらに、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種後に心筋炎が起こったという報告があります**。アメリカの調査では、12~29歳の男性で100万人のうち40.6人、同年齢の女性で100万人のうち4.2人の頻度で起こったと報告されています。
ただし、ほとんどのケースは軽症で早期に改善しています。日本循環器学会も2021年7月21日付で、心筋炎の危険性とワクチンの利益を考えると接種の利益が上回るという声明を出しています***。
**米国CDC「Morbidity and Mortality Weekly Report」(2021年7月9日の報告)
***日本循環器学会「新型コロナウイルスワクチン接種後の急性心筋炎と急性心膜炎に関する日本循環器学会の声明」
心筋炎の診断方法
まずは、心臓の音を聴診して異常があるかどうかを確認します。次に、胸部エックス線検査や心電図をとるなどして、心不全や不整脈が疑われるようであれば、心臓超音波検査で心臓の動きをみます。
また、血液検査を行い、ウイルスへの抗体が増えているか、細菌がいるかどうかなどを調べることもありますが、検出が困難であることが多く、それで最終的な診断を下すことは難しい場合があります。病院では、心筋から筋肉を取り顕微鏡で炎症を診る「心筋生検」という方法をとることもあります。
心筋炎の治療法
心筋炎が起こると、多くの場合、入院して治療を受けます。軽症であれば比較的短い入院で済みますが、炎症がある程度以上に強い場合は、数か月の入院が必要なこともあります。現在のところ、心筋炎の原因がウイルスの場合、それに対して効果のある薬がないため、心不全や不整脈に対する治療を行い、回復するのを待つことになります。