大腸がんとは?腰痛・腹痛・下痢などの症状や検査・治療法、増加の原因について

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セルフケア・対処大腸がんやせてきた下腹部痛がある体がだるい胃・腸・食道

大腸がんとは

大腸がんとは

がんの中で日本人が最も多くかかっている「大腸がん」。新たに大腸がんと診断される人は、1年間で15万3千人もいます(2017年データ)。

大腸がんは、進行が遅い、性質が比較的おとなしい、ほかの臓器に転移しても切除可能といった特徴があり、治る可能性の高いがんと言われています。そのため、早期に発見して適切な治療を受けることが大切です。外科手術で根治可能な大腸がんは、大腸がん検診を正しく受診すれば、約9割の確率で見つけることができます。

大腸がんになると、便秘や下痢、血便や腹痛、便が細くなるなどの自覚症状が現れる場合があります。ただ、これらは大腸がんが進行してからの症状なので、早期発見のためには、定期的な検診を受けることが何よりも重要です。ところが、日本人の大腸がん検診の受診率は欧米などと比べて低いことが指摘されています。

大腸がん増加の原因とは

大腸がん増加の原因とは

大腸がんが増えているのは、食生活の欧米化が原因と考えられています。また、近年の研究により、肥満とアルコールのとり過ぎが、大腸がんを引き起こしやすい原因であることが明らかになってきました。ほかにも、運動不足や喫煙なども大腸がんの発症に関わっている可能性が高いとされています。また、高齢になると発症しやすく、遺伝性の場合もあります。

大腸がんにつながりやすい病気「リンチ症候群」「家族性大腸腺腫症」など

主な検査 便潜血検査と大腸内視鏡検査

自治体や職場で行われている大腸がん検診で、40歳以上の人に推奨されているのが便潜血検査です。

便潜血検査では、採取した2日分の便を提出し、便に血液が混じっていないかどうかを調べます。2回のうち1回でも陽性になれば「要精密検査」となり、大腸内視鏡検査を受診します。
大腸内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入し、大腸の粘膜の様子を調べます。病変が見つかったときは、組織を採取して調べたり、その場でポリープや早期がんを切除したりすることもあります。

AIが大腸がんの発見をサポート

大腸内視鏡を使わない「大腸がんの新しい検査」

新しい検査

その他にも、新しい検査が登場しました。それは、「CTコロノグラフィー」と「カプセル内視鏡」です。

「CTコロノグラフィー」は、CT検査のデジタルデータを用いて画像処理を行い、三次元画像でがんを診断することができる検査です。内視鏡を使用せずに、体の外から調べることができるので、痛みを感じることはありません。「CTコロノグラフィー」は保険適用されています。内視鏡検査に抵抗感のある人が受けるケースが多いようです。

「カプセル内視鏡」は、カメラと無線装置が内蔵された、長さ約3cm、直径約1cmのカプセルです。「カプセル内視鏡」を口からのみ込み、大腸を通過するときに撮影して、腫瘍などを発見します。朝カプセルをのむと、夕方までには大腸内をすべて撮影できます。撮影された画像データは、カプセル内から体外に送信され、体に装着した「データ受信機」が記録します。「カプセル内視鏡」は、大腸の癒着があるなど大腸内視鏡検査が難しい人に限り、保険適用で受けることができます。

「CTコロノグラフィー」と「カプセル内視鏡」は、どちらも、内視鏡よりは精度が低いと考えられていますが、どちらも、6mm以上のがんやポリープを9割以上発見できます。

検査で早期発見したい大腸がんのもと「大腸ポリープ」とは

大腸ポリープ
大腸がんのもと「大腸ポリープ」とは

大腸がんのもととなる大腸ポリープには、腫瘍になるものとならないものがあります。
腫瘍にならないものに「過形成性ポリープ」と呼ばれる、一種の老化現象のようなものがあり、歳をとると誰にでも見られます。

一方、腫瘍には良性と悪性の2タイプがあります。大腸ポリープの約8割は良性の腫瘍で「腺腫」と呼ばれ、このうち悪性のタイプががんです。ただ、良性でも大きさが1cmを超えるとがんを含んでいる可能性が高まり、いわゆる前がん病変とされます。大腸では前がん病変の段階で腫瘍を内視鏡的に発見・切除することで大腸がんの罹患率ひいては死亡率まで減少できることがほぼ確実となっています。

大腸がんは、大腸表面の粘膜から発生し、進行するにつれ深く侵入して粘膜下層へたどりつきます。粘膜下層には、リンパ管や血管が通っているため、がんが深く侵入するとリンパ節などへ転移する恐れがあります。

早期がんで行われる内視鏡による治療

代表的な内視鏡治療

内視鏡による治療は、粘膜下層に侵入する前の、がんが表面の粘膜にとどまっている場合に行われ、ポリープの形により、主に3つの治療法があります。

きのこ型の茎をもったポリープの場合に行われるのが、「ポリペクトミー」という内視鏡治療です。ポリープの茎に金属の輪をかけ高周波電流を流して焼き切ります。

腫瘍が茎ではなく平たい場合に行われるのが「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」です。粘膜下層に生理用食塩水などを注射することで腫瘍を持ち上げてから、ポリペクトミーと同様に金属の輪をかけて焼き切ります2cm程度までの病変であれば診断と同時に日帰りでの治療も可能です(施設による)。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、粘膜下層に液体を注射して腫瘍を持ち上げてから、電気メスを使って粘膜下層をはがして切り取る治療法です。ESD は技術的に難易度が高いため、専門施設で入院による治療が必要となります。

前述のように、大腸では、早期がんや前がん病変の段階で腫瘍を内視鏡的に発見・切除することで大腸がんの罹患率ひいては死亡率まで減少できることがほぼ確実となっているため、これらの内視鏡治療を適切な段階で受けることが重要となってきます。

検査の目安は?

検査の目安は?

検査は、「40歳以上の人は便潜血検査を年に1回は受ける」ことをおすすめします。自治体や職場の大腸がん検診で受けることができます。便潜血が1回でも陽性になった場合は、精密検査の大腸内視鏡検査を受診することになりますが、この精密検査では筋層より深く浸潤した大腸がんを発見することが主な目的となっています。内視鏡で完治可能な段階の病変や早期がんを発見するためには、人間ドックなどの内視鏡検診を受診することが重要です。「50歳になったら一度は大腸内視鏡検査を受ける」ことが検査の目安としてすすめられます。

大腸ポリープが見つかったときは、数や大きさによって検査の頻度が異なるものの、ポリープ切除後、3年に1回のペースによる大腸内視鏡検査がすすめられています。
また、家族に大腸がんを発症した人がいる場合は、家族が発症したときの年齢よりも10年早く内視鏡検査を受けることをおすすめします。

「運動」と「食物繊維」で大腸がんを予防しよう

大腸がんの予防

大腸がんを予防するには「運動」と「食事」が大切になってきます。
「運動」は大腸がんのリスクを下げることが分かっています。米国国立がん研究所によると、運動は大腸がん(特に結腸がん)の危険度を平均40~50%、減らすとされています。 運動量が多いほど効果が高い傾向ですが、日常生活の中での歩行や自転車走行等の軽い運動でも効果が認められているので、できる範囲で継続して体を動かすことが大事です。

「食事」では「食物繊維」をとることが予防となります。食物繊維の摂取が極端に少ない人では、大腸がんのリスクが高くなる可能性があるという報告があります。食物繊維は、「野菜類」や「イモ類」、「豆類」、「果物」などに多く含まれています。

逆に、「大腸がんのリスクを上げる食品」もあります。ハム・ソーセージなどの加工肉と牛・豚肉などの赤肉です。これらを大量に食べるとリスクが上がる可能性があります。特に、男性において最も摂取量の多い群で、結腸にできる大腸がんのリスクが上昇したという報告があります。しかし、日本人の一般的なレベルの摂取であれば、大腸がんのリスクとはならないのでご安心ください。

また、飲酒でも大腸がんのリスクが高くなることが明らかになっています。男性では、1日に23以上46g未満(※)の飲酒で1.4倍、女性では、1日に23g以上の飲酒で1.6倍リスクが高くなったという報告があります。お酒は1日23g未満に抑えるのが肝要でしょう。(※23g:日本酒→1合、ビール大瓶→1本、ワイン→グラス2杯)

大腸がんのQ&A

『Q&A大腸がん』はこちら

この記事は以下の番組から作成しています

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    大腸がん 徹底解説「予防する生活」
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