内皮細胞の機能を保つことで動脈硬化を予防する
動脈の構造

動脈は外膜、中膜、内膜の3つの層で構成されています。外膜は血管の外側を保護する層で、中膜は平滑筋という筋肉と2種類の線維からなる主に血管の伸び縮みを担当する層です。内膜は内皮細胞と内皮下組織からなっており、内膜の一番内側に内皮細胞があります。
動脈硬化は内皮細胞が障害されることによって起こる
血管は年とともに誰でも老化していきますが、その老化以上に動脈硬化を進行することを予防していく必要があります。動脈硬化は血管の内側にある内皮細胞が障害されて、動脈硬化を起こすと言われています。そのため、内皮細胞の機能を保つことが動脈硬化の予防につながります。
内皮細胞の機能低下によって動脈硬化が引き起こされるメカニズム
血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の働き

動脈硬化は、血管の一番内側にある内皮細胞の機能低下によって始まります。内皮細胞は、血流が速くなると、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を産生して放出します。すると、一酸化窒素は中膜にある平滑筋に作用して、その結果、平滑筋の緊張がゆるんで血管が広がります。
血管を広げる働きは、放出される一酸化窒素の量に左右され、一酸化窒素が不足すると血管は硬くなり、逆に十分に出ていると血管をやわらかい状態に保つことができます。
喫煙や高血糖は内皮機能を障害する
内皮細胞が一酸化窒素を十分に出せるかどうかが、動脈硬化を防ぐ上で重要です。しかし、喫煙や高血糖の場合は、内皮細胞の障害を起こし、血管が広がりにくくなってしまうと言われているので、注意が必要です。
内皮細胞の機能を調べる「FMD検査」とは
動脈硬化を予防するために、内皮細胞の機能が正常かどうか調べる必要があります。その動脈の機能を調べる方法として「FMD検査」があります。FMD検査は、血管の広がり具合を見て、内皮細胞の機能が低下していないか確認する方法です。動脈硬化の早期の段階を知る極めて有効な検査法です。
※FMD検査について詳しくはこちらの「動脈硬化の検査法「ABI」「PWV」「FMD」それぞれの特徴や相違点」記事で解説しています。
その他の動脈硬化の検査法
動脈硬化の進行度を調べることができる検査方法は他にも種類があります。それぞれの検査内容と検査を受けると良い人の特徴をまとめて、こちらの記事で紹介しています。
「動脈硬化の進行度をチェックできる7つの検査・診断方法」についてはこちら血管拡張物質 一酸化窒素を増やす方法
一酸化窒素を出すことができる薬
コレステロールを下げることができる「スタチン」や血圧を下げる「ACE阻害薬」・「ARB」と呼ばれる薬は、内皮細胞から一酸化窒素が出るのをよくする作用があると言われています。
薬をのまないでも運動で一酸化窒素を出すことができる

一酸化窒素は運動によって比較的簡単に出すことができます。
上のグラフは、運動を行う前と運動を3か月行った後に検査を行って内皮機能を調べたものです。アセチルコリンと呼ばれる薬を注射して一酸化窒素が出るようにして、前腕の血流量がどれくらい増えるかを見ます。運動を行う前に比べ、運動を3か月行った後は、血流量が増えることがわかりました。運動によって内皮細胞の機能が高まり、一酸化窒素がよく出るようになったのです。