腎臓病療養指導士とはこんな人

慢性腎臓病では、毎日の食事に気をつけたり薬を確実にのんだりと、さまざまな治療を根気よく続けなければなりません。そうした患者さんにとって身近で頼りになる人がいます。腎臓病療養指導士です。

腎臓病療養指導士は、看護師・管理栄養士・薬剤師いずれかの資格を持ち腎臓病の実務経験のある人が試験を受けて認定されます。慢性腎臓病に関する幅広い知識や経験を生かし患者さんのケアの中心になります。2017年に開始された新しい制度です。
食事の改善 ポイントとコツは?

慢性腎臓病の治療では、多くの場合、自分の食事について見直すことが大切です。まず塩分をとり過ぎないよう1日6グラム未満を目標にします。肥満の人はエネルギー量にも注意して食べ過ぎないようにします。慢性腎臓病がかなり進行したら、たんぱく質のとり過ぎ、野菜や果物に含まれるカリウムのとり過ぎにも注意します。
腎臓病療養指導士の一人、中山真由美さん(日立総合病院)は、患者さんの食事について次のようにアドバイスしています。
減塩のコツ
「漬物にまでしょうゆをかけてしまう、みそ汁も毎食飲んで、おかわりまでしてしまうという方がいます。そういう方には、まず漬物にしょうゆをかけずに食べてみましょうかと勧めます。みそ汁については、朝だけにできませんか、それが難しいなら、みそ汁のおわんを少し小さいものに変えませんか、あるいは、みそ汁の量を半分くらいにしてもらってはどうですか、といった提案をします」
「外食せざるをえなくて塩分が多くなってしまう方もいます。そういう場合は、外食するなと言うのではなく、食事の全体から引き算をして、この食品を控えると塩分がこれぐらい減るから、やってみませんかとアドバイスします。メニューが選べるなら、ごはんに味をつけるどんぶりなどより、白いごはんとおかずが別になった定食を選ぶほうがいいですよと、コツを伝えます」
カリウム増の理由は?
「カリウムをとり過ぎる原因の1つに、特定の食べ物だけを続けて食べてしまうということがあります。みかんの時期なら、箱買いをして1日に何個も何個もみかんを食べてしまったとか。春になって旬のたけのこが回ってきて、たけのこごはん、たけのこの天ぷらと、たけのこづくしで食べてしまってカリウムが多くなったとか。そこで、最近こういうものを続けて食べていませんかと、確認してみることもよくあります」
栄養不足への注意も
肥満の方は食べ過ぎないことが大切ですが、高齢の方は、逆に食事の量が少な過ぎて栄養不足になることがよくあります。むしろやせすぎないように注意しましょう。特に、たんぱく質を減らし過ぎてはいけません。高齢の方は筋肉の量が大きく低下するサルコペニアという状態になりやすいからです。そうなると転倒しやすくそのまま寝たきりにもなりやすいため、サルコペニアはぜひとも避けなければなりません。
腎臓病療養指導士の中山さんは、次のようにアドバイスしています。
「糖尿病のある方などは、すでに脂質を控え糖質も控えており、さらにたんぱく質も控えるとなると、どうしても全体的なエネルギー不足が生じます。そこで、たんぱく質を減らしたなら、減らした分のエネルギー確保は必要なんですよと、特に高齢の方には理解してもらうようにします。この点は慢性腎臓病のステージによっても変わります。したがって、オーダーメードの食事支援が私の役割になってきます」
薬や受診の継続をサポート
慢性腎臓病では血圧と血糖値を厳しく管理します。高血圧と糖尿病は慢性腎臓病の原因であり悪化要因でもあるからです。必要に応じて高血圧や糖尿病の薬が処方されます。必ず続けてください。
腎臓病療養指導士の一人、片山満代さん(杏林大学医学部付属病院)は、患者さんの薬などについて次のようにアドバイスしています。
薬を勝手にやめないで
「患者さんに聞くと、忙しくて薬をのみ忘れたり、薬が多すぎてのむのが苦痛だったりするようです。しかし大切なお薬なので、勝手にやめないでしっかりのんでくださいと伝えます。また、自分の体を自分で管理するという意識で、その薬にどんな作用があるのかを理解してもらうようにしています」
のみ忘れを防ぐには
「のみ忘れないためには、のむ時刻にタイマーをかける、薬を朝昼夕に分けてボックスに入れておく、などの方法を伝えます。また、のむのが苦痛だったら、のみやすい薬に変えるなどもできるので、医師に相談してくださいと説明しています」
受診を中断しないで
「体調がよかったり仕事が忙しかったりすると、途中で受診を中断する方もいます。その方には、腎臓病は静かに進行する病気なので、自己判断しないで必ず定期的に受診してくださいとお話します」
透析の前には安心情報を
慢性腎臓病がかなり進行すると透析などの治療も必要になります。腎臓病療養指導士は、この時期の患者さんもサポートします。
腎臓病療養指導士の片山さんは、患者さんが不安にならないよう早めに情報を伝えています。
「何も知らないで急に透析と言われたら、ショックを受けますよね。そして混乱しているなかで透析が始まってしまうと、心も体も安定するのに時間がかかります。ですから、早めに情報を提供し、透析を受ける場合どんな生活になるのかがイメージできるようにお話します。そうすると少しずつ不安は解消されていくようです」