高血圧ゼロへ。自治体の取り組みを紹介(全市民の血圧測定・減塩しょうゆ)

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「高血圧ゼロのまち」プロジェクト

高血圧ゼロのまちプロジェクトに参加している12の自治体

日本高血圧学会のプロジェクト「高血圧ゼロのまち」が2019年にスタートしました。参加する自治体は年々増えており、2023年4月時点で17それぞれ市や町の特色を生かし総力をあげて高血圧の対策を進めています。期間は3年間です。ここでは鹿児島県枕崎市と北海道増毛町の取り組みを紹介しましょう。

全市民の血圧測定を目指す(鹿児島県枕崎市)

鹿児島県枕崎市

枕崎市は、脳卒中で死亡する人の割合が全国平均の1.6倍。しかも脳卒中の人の男性8割・女性7割が高血圧です。これをなんとかしたいと「高血圧ゼロのまち」に応募しました。

市内約100か所に血圧計を設置

目標は「全市民の血圧測定」。市内およそ100か所に家庭血圧計を設置し、住民に血圧測定と血圧への意識向上を促しました。場所はスーパー、コンビニ、飲食店、携帯ショップ、銭湯、パチンコ店、郵便局、市の公共施設などです。
(現在は新型コロナのため中断)

野村和弘さん

この取り組みで血圧を久しぶりに測定した野村和弘さんは、上146・下92(mmHg)とわかり驚きました。かかりつけの医師に「それは危ない」と言われ、家でも血圧を測るようになりました。歩数計をつけてウォーキングも開始。「意識を持つと歩くようになるんです」と話しています。

東政孝さん

東政孝さんはもともと血圧管理に熱心でしたが、今回を機にまわりの人にも「自分の血圧がいくらなのか知ってるの?」と忠告するようになりました。宴会で高血圧を気にせず多量に飲酒する人には「それじゃだめだよ。そのうち心筋梗塞を起こすよ」と声をかけるそうです。

岸田達也さん

岸田達也さんは自分の高血圧をまったく気にしていませんでした。ところが市内のあちこちに血圧計が置かれるのを見て「これはただごとではない」と考えが変わりました。そして高血圧の治療を開始。食事でも塩分に注意し「枕崎はカツオが有名で塩辛がおいしいんですけど、なるだけその量を減らしている」そうです。

血圧への関心が当たり前になる

枕崎市のように、みんなが血圧を測るようになれば、自分の血圧がよくわかるのは当然ですが、普段の何気ない会話にも血圧のことが出てくるようになり、みんな一緒に血圧への関心が高まることでしょう。日本人にはまわりの人に合わせる国民性があります。血圧への関心や対策も、比較的スムーズに当たり前のものになっていくのではないでしょうか。

全市民が血圧を測定するという発想そのものが、大変すばらしいことです。通常の健診は希望した人が受けるだけですが、1つの自治体の全員の血圧データが収集できたなら、これまでにないことで、高血圧の専門家にとっても興味深いことです。

減塩しょうゆを独自に開発(北海道増毛町)

北海道増毛町

北海道増毛町は重い高血圧の人の割合が一時北海道でワースト1。塩分の多い食事が大きく影響していることもわかりました。そこで町では、栄養士たちが専門家の指導を受け、減塩しょうゆを独自に作り出しました。

増毛町が独自に作った減塩しょうゆ

一般のしょうゆは大さじ1杯あたり食塩2.6g程度ですが、増毛町のしょうゆは1.6g。食塩35%カットを達成しています。しかも、ポリグルタミン酸という成分で味を整えているため、「減塩なのに薄く感じない」と評判です。

減塩しょうゆを町の全戸に配布
減塩しょうゆを使って料理をする様子

製品化した減塩しょうゆは町の全戸に配布。また、減塩しょうゆで多くの料理を実際に作り、町民に試食してもらいながら減塩の大切さを伝えています。料理は肉じゃが・ほっけのつみれ汁・かれいの煮つけ・焼き肉のたれなど。増毛町で有名なえびなどの刺し身にも合うそうです。

「高血圧ゼロのまち」で、それぞれの市や町が血圧の対策に総力を結集したとき、いったいどんなことが起こるのか、期待は大きく膨らみます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年2月 号に掲載されています。

きょうの健康テキスト
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