新型コロナウイルス感染による嗅覚障害 -私のチョイス-
突然嗅覚を失ったAさん
ある病気をきっかけに、突然、嗅覚障害になった女性Aさん。今もほとんどにおいを感じることができません。
焼き芋を食べても、
「甘いのはわかるけれども、味がしない。これでは、生きている上で楽しみがなくなる、おいしいご飯が味わえないから悲しい。泣けてくる」
いったいAさんの身に何があったのでしょうか?
「完全にコロナだ!」
最初に異変が起きたのは、去年の3月下旬。それは突然の猛烈なだるさでした。
「普通のかぜじゃないようなけん怠感があった。とにかく全身痛くて、これはおかしいと思った。」
3日もすると、けん怠感はなくなりました。ところが食事をしていると、突然違和感が。
「においが完全になくなっていて、あれ?と思った。カレーの濃いにおいも急にわからなくなった。おいしくない。風味がしないから。」
Aさんはこのとき、あるニュースを思い出したのです。
「野球選手が嗅覚障害でワインのにおいがわからないと言っていた。私もにおいがわからないから、これは完全にコロナウイルスに感染したと思った。」
けん怠感から1週間後、PCR検査を受けたAさん。
検査の結果は「陽性」でした。新型コロナウイルスに感染していたのです。
新型コロナ感染による嗅覚障害の特徴
新型コロナウイルス感染による嗅覚障害の診療に携わる医師は、
「新型コロナウイルス感染症による嗅覚障害の最大の特徴は、鼻づまりや鼻水などの症状を伴わなくても嗅覚異常が出現してくること。他に症状がなくても、急に嗅覚がおかしい、あるいは味覚がおかしいと感じるようなら新型コロナウイルス感染を疑わなくてはならない。」
では、なぜ新型コロナウイルスに感染すると、においを感じなくなってしまうのでしょうか?
嗅細胞の周囲には「支持細胞」という細胞があります。
実はこの支持細胞が、新型コロナウイルスに感染しやすいことがわかってきました。支持細胞が感染により炎症を起こし、におい分子が嗅細胞に届かなくなるため、においを感じなくなるのではないかと考えられています。
嗅覚トレーニングで回復を目指す
2週間の自宅待機を余儀なくされたAさん。しかし嗅覚だけは一向に戻りませんでした。
そこで大学病院の耳鼻科を受診したところ、医師は、
「現時点では残念ながら新型コロナウイルス感染症に対する薬物治療は確立されたものがない。ただし嗅覚トレーニングが期待されている。」
そこでAさんは、普段使っていた香水などで嗅覚トレーニングを始めました。嗅覚トレーニングとは、においを意識して思い出しながら数秒間嗅ぐ方法です。
半年以上たった今も、Aさんの嗅覚は戻らないままですが、諦めたわけではありません。
「治療法が今後開発されたらいいと思う。苦しいと思うけど気長に頑張ろうと思っている。」