およそ400年前、中国・清の時代に生まれたという「太極拳」。健康長寿をもたらすとして世界中で大人気です。免疫機能アップの効果が期待できる、太極拳ならではの「呼吸」のチカラに迫ります。お家で手軽にできる動きもご紹介。

太極拳と免疫の知られざる関係
なぜ太極拳が健康長寿に役立つのか。その手掛かりになる研究が進められています。アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のマイケル・アーウィン博士は、太極拳のもつ驚きの効果を発見しました。
「太極拳は、特定のウイルスに対する免疫反応を高める可能性があります」(アーウィンさん)
アーウィンさんが調べたのは、帯状ほう疹を引き起こすウイルスに対抗する、免疫細胞の反応です。年を取るにつれ、この免疫細胞の機能が衰え、帯状ほう疹を発症しやすくなることが知られています。
実験では、60代以上の参加者を2つのグループにわけ、片方に太極拳を行ってもらいました。すると16週間後、太極拳を行ったグループでは、免疫反応を示した細胞が24%増加したのです。

これまでも、運動を行うと免疫機能が改善することは一般に知られていました。しかし、太極拳では、さらに別の要素が免疫機能の改善に役立っている可能性があるといいます。
「太極拳をしている時は、呼吸がゆっくりになります。すると、ウイルスへの免疫反応を高める重要な神経の活動が活発になるのです」(アーウィンさん)
太極拳の健康効果の秘訣は「呼吸」
日本健康太極拳協会 師範の楊玲奈(よう・れいな)さんの呼吸を、胸が動く様子を計測する専用の装置で調べました。
すると、一般の人では1分間に15~20回の呼吸となるところが、楊さんの場合は、わずか7回。

さらに、太極拳をした後では、体を動かしたのにもかかわらず、呼吸が1分間に4回まで減っていたのです。
呼吸の専門家である、東京有明医療大学 学長の本間生夫さんによると、「呼吸は体の動きと連動している。太極拳のゆっくりした動きをすると、自然と深く効率的な呼吸になる」といいます。
太極拳を続けていくと、普段の生活でも「深くゆっくりとした呼吸」ができるようになる可能性があるのだそうです。
太極拳で「深くゆっくりとした呼吸」を身につけよう!
免疫アップも期待される、太極拳ならではの「呼吸」は、自宅でもカンタンにトライすることができます。
太極拳にはいくつかの流派がありますが、それらを中国政府が24の動きにまとめた、「簡化二十四式太極拳」と呼ばれるものがあります。
日本健康太極拳協会の楊玲奈さん監修のもと、「深くゆっくりとした呼吸」を体得しやすい2つの動きをご紹介します!
単鞭(ダンビエン)
片手でムチを放つような動きです。体の軸を意識するのがポイントです。

- 右手はスカーフをつまんだような手の形に、左手はふんわりと羽根布団を抱えたように体の前においてください。
- 視線は右手首から、ゆっくりと左に向けていきます。
- 左足はかかとから一歩、だんだんと体重を左足に移していきます。
- 左手を向こうにむけていきます。
左右穿梭(ズオヨウチュアンスオ)
機織りをするような動きです。背中や胸の周りを広く使うことができる動き。

- 左手を上、右手を下にしてボールを抱えたような形にします。
- 右足、かかとから一歩出します。
- 左手を右手の下を通して右前に押し出していきます。右手は額の前で、防御するような形に。
- 右手を上、左手を下にしてボールを抱えたような形に。息を吐きながら左足を身体に寄せていきます。
- 左足、かかとから一歩出します。
- 右手を前方に押し出します。
少しずつでも、毎日続けると効果的です。
この記事は以下の番組から作成しています。

東洋医学ホントのチカラ「今こそ元気に!健康長寿SP」
2021年2月27日(土)午後7:30~[総合]